万丈
2025-06-20 16:12:26
1549文字
Public 小説
 

夜更けの厨房にて

【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
幕間、餌付けされるアカラナータの話。
インドラ様の家事スキルはなかなかのものだと思っています。
コメ欄に後書きアリ。

前の話→女官たちの井戸端会議
次の話→媚酒に溺れる獣

夜も更け、天空殿が深い静寂に包まれる頃。
アカラナータは自室の寝台で寝返りを打ったが、どうにも寝付けなかった。理由は一つ、酒を飲んでいたら、無性に腹が減ってきたのだ。

(チッ、何か腹に入れるものでもねぇか……

アカラナータ達獣牙三人衆の存在は、まだ一部の者を除いて秘匿されている。インドラからは
「決まった場所以外を無闇に出歩くな」と釘を刺されていた。女官や他の神将に見つかれば、面倒なことになるからだ。

だが、空腹と酒精には勝てない。彼は音を立てぬよう、獣のようなしなやかさで廊下を抜け、厨房へと忍び込んだ。

しかし、広大な厨房に満ちていたのは、期待外れの沈黙だけだった。
戸棚を漁っても、出てくるのは乾いた豆や芋などの保存食か、用途のわからない香辛料の瓶ばかり。

「使えねえな、デーヴァの厨房は……!」
小声で悪態をついた、その時だった。

――そこで何をしている」

背後から響いた氷のように冷たい声に、アカラナータの肩がびくりと跳ねる。振り向くと、そこには案の定、腕を組んだインドラが立っていた。

「げっ、インドラ……! いや、その、酒の肴でもねえかと思ってよ」

「出歩くなと言ったはずだが」

「腹が減っちゃ仕方ねえだろ」

悪びれもせずに言い返すアカラナータに、インドラは深いため息を一つ落とした。そして、「そこで待っていろ」とだけ告げると、手慣れた様子で棚からいくつかの香辛料と野菜を取り出し、火を起こし始めた。

しばらくして、盆に乗せられて出てきたのは、湯気の立つ小さな器と、香ばしく炒められた木の実や豆の皿だった。

「ほら、食え」

……おまえが作ったのかよ」

訝しみながらも、アカラナータは差し出されたスープを一口すする。様々なスパイスが複雑に絡み合った、身体の芯から温まるような深い味わい。
つまみも、塩加減が絶妙で酒によく合う。

……まあ、不味くはねえな」

ぶっきらぼうに言いながらも、その食べる勢いは正直だった。あっという間にスープを飲み干し、つまみを平らげていく。
インドラはそんなアカラナータの向かいに座り、自分も酒を注いで静かに杯を傾けていた。

「しかし、意外だな」

ようやく空腹が満たされたアカラナータが、口を開いた。

「アンタが料理なんてできるとは。誰かに習ったのか?」

何気ない質問だった。

だが、インドラの動きが一瞬止まる。彼の灰色の瞳が、遠い過去を見つめるように、ふと揺らいだ。

……昔、よく作っていた」

「昔?」

「ああ。……仕えていた方が、気まぐれな方でな。夜中に突然、食事がしたいと仰せになることも、珍しくなかった」

その言葉に、アカラナータの中で点と点が繋がった。
シヴァの「お世話」――それは、自分が想像していたような夜伽だけではなく、本当に身の回りの世話全般を指していたのだ。食事の用意から、掃除、洗濯まで。

十二羅帝最強と呼ばれた男が、甲斐甲斐しく破壊神の世話を焼く姿を想像し、アカラナータは何とも言えない、間の抜けた気持ちになった。

(なんだよ、本当に世話係だったのかよ……

そのアカラナータの内心を正確に読んだわけではないだろうが、インドラは目の前の獣が、自分に対して何かとてつもなく失礼な想像を繰り広げているであろうことを、その雰囲気から無意識に感じ取っていた。インドラは、アカラナータには気づかれぬよう、眉間に微かな皺を寄せた。

「食べ終わったのなら、さっさと自分の部屋に戻れ」

「へいへい」

インドラに促され、アカラナータは満足げに席を立つ。
雷帝の意外な一面と、彼の過去の一端に触れた夜。
それは、アカラナータにとって、酒の肴としては極上の味わいであった。