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万丈
2025-06-20 13:47:32
1096文字
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小説
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残響と熱
【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
三話直後。
消えない跡と困惑するインドラ様の話。
第三話→
虚ろな瞳、独占の楔
次の話→
調子に乗る獣とお仕置き
一人きりの寝室は、しんと静まり返っていた。
燭台の光は落とされ、窓から差し込む月光だけが、豪奢な調度品の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせている。
インドラは寝台の端に腰掛け、静かに目を閉じていた。
昨夜の出来事が、記憶に焼き付いて離れない。
”
天女の媚酒
アプサラス・マディラ
”によって暴かれた、心の奥底。
シヴァへの恐怖と忠誠、ヴィシュヌへの恩義と罪悪感。誰にも見せたことのない、見せるはずのなかった柔い部分を、あの獣に、アカラナータに、すべて晒してしまった。
その屈辱に、インドラは唇を強く噛み締めた。だが、それ以上に彼の心を掻き乱すのは、アカラナータが残していった、あまりに鮮烈な痕跡だった。
ふと、鼻腔をくすぐる香りに気づく。それは、自分のものではない、他者の匂い。汗と、わずかな酒精、そしてアカラナータという存在そのものが放つ、若く猛々しい男の香りだった。
それはシーツに深く染み込み、この神聖であるべき寝室の空気を満たしている。
インドラは忌々しげに立ち上がると、そのシーツを掴み、床へと払い落とした。
これで消えるはずだった。
なのに、香りはまだ、自身の肌に残っているような錯覚に陥る。
「
……
何を考えている、私は」
自らを戒めるように呟き、インドラは寝台の上で蓮華座を組んだ。瞑想をすれば、この乱れた心も鎮まるはずだ。いつものように、思考を無に還し、感情の波を凪へと導く。
だが、静寂の中に身を置くと、かえってあの声が鮮明に蘇ってきた。
『オレだけを見ろ、インドラ』
脳裏で、不意にその言葉が繰り返される。シヴァの冷たく、絶対的な支配の言葉とは違う。ただひたすらに熱く、暴力的で、有無を言わさぬ独占欲に満ちた声。
その残響に触れた瞬間、インドラの心臓が、トクン、と大きく音を立てた。長く凍てついていたはずの何かが、その音を合図に、わずかに脈打ったような気がした。
「
……
っ」
インドラは瞑想を中断し、目を見開いた。集中できない。精神の海は荒れ狂い、凪ぐ気配すらない。アカラナータという存在が、確実に、そして急速に、自分の内側を侵食し始めている。
あの男の単純な欲望、暴力的なまでの執着が、自分が万年かけて築き上げてきた鉄壁の理性を、いともたやすく揺さぶっていく。
それは恐怖であり、戸惑いであり、そして、インドラ自身にもまだ名付けることのできない、未知の感情だった。
インドラは、自らの胸にそっと手を当てる。そこには、確かに、忘れていたはずの熱が宿っていた。
月明かりの下、一人きりの部屋で、雷帝は深い困惑の闇に、静かに沈んでいくしかなかった。
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