fedge
2025-06-15 01:25:44
4690文字
Public カピオロ
 

250614ワンドロお題別パターン

https://privatter.me/page/684da1cad2985
↑をワンライで書いたのですが、プロットが途中で別なお話になるパターンができちゃったのでそっちも書きました
※こっちは2h

オシカ・ナタでの動乱を経て一度夜神と融合したはずの隊長の魂は再度分離して個となり、再び俗世へと降り立つこととなった。
(略)
というわけで女皇陛下との連絡が取れるまでの暫くの間、隊長はオロルンの家に厄介になることとなった。

玉座に座している間は殆ど眠っているのと変わらない状態だったが、いかんせん座りっぱなしでは身体の疲れは取れていなかったようだ。久方ぶりの寝台での睡眠は、思った以上に隊長を眠りに引き留めた。とはいえ日が高く上がり切る前ではある。横ですよすよと寝息を立てるオロルンを起こさないように、そっと寝室を後にした。
特に何をやるということもないため、鈍った身体を少しでも動かそうと畑の隅で素振りを始める。こうやってまっとうに基礎を行うのはいつぶりだろうかと懐かしさに浸りながら、故国の騎士時代に身体が覚え込んだ型を繰り出す。暫くそうやって身体を動かしていると、じぃとこちらを見る視線を感じた。視線の主を視界に捉えて剣を降ろす。

「起きたのか」
「ああ。いつもよりちょっと早起きだ」
……もう、昼間も過ぎたが」
「僕は夜型なんだ。君も知っているだろう?」

ふぁ、と欠伸をしながら、オロルンが隊長のもとへと歩み寄る。ごしごしと目を擦っており、まだだいぶ眠たいようだ。

「オロルン、目を擦るんじゃない。傷が付くぞ」
「あ、すまない。つい癖で。しかし君は早起きだな。今まで寝てなかった分、もっとぐっすり寝ていたって誰も怒りはしないのに」
「覚めてしまったものは仕方ないだろう」
「それもそうか。ところで、起きたんだったら手伝って欲しいことがある」

オロルンは隊長におもむろに大きな背負い籠を渡した。一般的なものよりも一回り程大きい。

……これは?」
「野菜を入れる籠だ」

見ればわかるだろう?と言わんばかりにオロルンは隊長を見つめる。つまり、そういうことだ。

……分かった。手伝おう」
「君なら解ってくれると思った。こっちだ」

オロルンは口角を上げながら隊長の手を掴み、まずは人参だ、と、畑の一角へと進んでいった。

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食べ頃の野菜たちを収穫し終えた二人は、根菜類の泥を落とすために野菜籠を担いで近くの川へと赴いた。テイワット広しとも言えど、ファデュイ執行官、それも第一位の人間に野菜籠を背負わせることのできる人間は、彼の他にはどこを探しても居ないだろう。丁度いい石のある河原に腰を下ろし、泥だらけの根菜たちを二人して洗っていく。オロルンの背負っていた籠の中身をすべて一度隊長の籠へ移し、そこから洗い終わったものをオロルンの籠へと戻していく。
ナタの英雄とファデュイ執行官が河原で野菜を洗うというなんとも異質な光景がそこにあったが、絵の中の二人はそれを歯牙にもかけず、たまに二言三言交わしながら、ただただ野菜を洗って籠に入れていく。

「なぁ隊長、この人参、足を組んでいるように見えないか。とてもセクシーだ」
……ああ、そうだな」

そんな他愛ない会話をしながら野菜を洗っていると、何やら対岸が酷く騒がしい。ふと見上げて騒ぎの方向を見ると――そこには沢山の見慣れた顔があった。

「『隊長』様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「お戻りになられたと聞いて!我々、馳せ参じました!!」

うぉぉぉああああと野太い声が響く。彼等は、隊長の直属の部隊であったファデュイの面々だ。鍛え上げられた歴戦の兵士たちだと聞き及んではいたが、敬愛する隊長の復活をその眼に見て感情が抑えきれなくなっている様子だった。

「お前たち……国に帰るようにと命じていた筈だが」
「女皇様にお許しを頂いて、一部の人員はナタへ引き続き駐在できることとなったのです。『隊長』様の直属でない者達はナド・クライやドーンマンポートへと向かいました」
……そうか」

おいおいと男泣きをする隊員さえいる。それほどまでに隊長は慕われている存在なのだと改めて感じたオロルンは、彼らの邪魔をしないようにとそっと距離をとって見守っていたが、一人の隊員に気づかれて手を引かれた。

「オロルンも久しいじゃないか、逢う機会が無くなってしまったのを惜しんでいたんだ」
「ああ。君たちが元気そうでなによりだ」

手を引いたのは隊長の部隊の中でもかなり若い隊員で、オロルンと歳が近いためか時折雑談を交わしたことのある者だった。二言三言会話していると、のそり、と黒い影が割って入った。

「隊長?」
「オロルンに何か用か?」
「いえ!そういうわけでは……彼と会うのも久々でしたので、少々世間話を」
……そうか」

ほんの、ほんの僅かであったが隊長から殺気めいたものが発せられた気がした隊員は、ぶるりと身を震わせて数歩後退った。その時だった。

――ぐぅぅぅぅ

音は複数個所から鳴った。どうやら、音の出所はファデュイの面々のようだ。

……お前たち、食事は」
「ええと、実はまだ再配備に伴っての物資が届いておらず……携帯軍用食でまかなっている状態であります」
「それはいけない!」

オロルンが普段の何割か増しの大きな声を上げ、隊長を含め周りにいた皆が驚きに目を見張る。

「ご飯はちゃんと食べるべきだ。……炊き出し用の鍋はあるか?」
「いや、そのあたりの物資も再手配中なんだ。なんせ一度完全に引き上げたからな……

申し訳なさそうに言う隊員の言葉を聞き、オロルンはふむ、と口元に手を当てて考える。しばし考えたのち答えが出たのか、小さく頷く。

「僕にいい考えがある。着いてきてくれ」

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オロルンが案内したのは、流泉の衆にほど近い位置にある砂浜だった。かといって集落に近いというわけでもなく、雑木林が目隠しになるようなひっそりとした浜辺だった。

「『隊長』の功績があるぶん皆ファデュイに寛容とはいえ、さすがに観光客も多くなったナタで目立つ位置には居られないからな」

オロルンはそう言いながら、借りてきたバーベキュー用のコンロを設置する。

「よく思いついたな」
「以前、ここで宴会があったときにキィニチがバーベキューコンロを借りていたのを見たんだ。だから、借りれる店を知っていた」
「なるほど。恩に着る」
「お、俺達にも、何かできることは」

へろへろになっているファデュイの兵士が給仕を買って出ようとするが、隊長はそれをやんわりと諫めた。

「俺がやる。座って休んでいろ、その様子では立っているのも限界だろう」
「しかし、『隊長』様のお手を煩わせるわけには……
「くどい」
「はっ」

言葉の圧に屈した兵士は、後ろ髪を引かれているような顔をしながらも木陰の方へと戻っていった。戻って直ぐ座り込んで力を抜いているところを見ると、本当に限界が近かったようだ。

……焼き野菜だけで足りるだろうか、皆相当お腹がすいていそうだ」
「この近くならアレが居る。俺が追加の食材を取ってこよう。暫く待っていろ」
「え?アレって何だ?」

オロルンの問いに答える間もなく、隊長は颯爽とその場を去っていった。暫くすると南方の浜辺に上空から霜の柱が降っていくのが見えた。雷撃が時折奔っているようだったが、それもすぐに止んだ。

「待たせたな」
「いや、それほど待っていない……それは?」

十分しないうちに隊長が戻ってきた。彼の手には、今しがた倒したであろう大きな亀が携えられている。

「隊長、それ、地方伝説って呼ばれている亀じゃないか?」
「ああ。近くに居た者から、こいつはコシーホとかいう名がついている個体だと聞いた。これだけあれば足りるだろう」

どさ、と大きな得物を降ろし、ナイフで手際よく肉を切り出していく。あれよあれよと亀だった物体は大量の肉塊へと変えられていった。

「これだけあれば皆に行き渡るだろう。焼くぞ」
「あ、ああ」

隊長は焼き台の前に陣取り、ここは譲らんとトングを握った。意図を察したオロルンは頷くと、肉を盛った器を隊長へと差し出す。野菜も焼き野菜用にオロルンが全てカット済みだ。それを隊長が順々に鉄板に広げ、よい焼き加減で引き上げていく。

「動ける者は各自皿を持って並べ、動けない者の分は動ける者が持っていけ」
「はっ!」
「フルーツソースと玉ねぎのソースがある、食べたい方を選んでくれ」

ファデュイの兵士たちが一列に並んで隊長から肉と野菜を皿に盛られている。その隣でオロルンがソースの入った瓶を持って待っているので、肉と野菜を受け取った兵士たちはそのままオロルンの方へ進み、希望のソースをかけてもらってもとの位置に戻っていく。
ひたすらに肉を焼き、野菜を焼き、ソースをかけていた二人がひと段落したころには、隊員の面々は幸せそうな顔で浜辺に寝転んでいた。

「休み終えたら野営の準備をするんだぞ」
「はい、隊長、勿論です……ほんとうに、ありがとうございます……!」
「礼ならオロルンに言え」
「もちろん、オロルン、ありがとう……!」
「どういたしまして。野菜たちも、君たちに食べてもらえて喜んでいる」

皆に配り終え、隊長とオロルンは最後に残っていた分を自分たちのために焼いた。だが皿はもう1つしか残っておらず、ちょっと量の多い一人前かな、程度の量が皿に盛られた。

「隊長、どっちのソースがいい?」
「お前の好きな方で構わん」
「いや、君が食べるべきだ。その身体は起きたばかりだろう?」
「育ち盛りなのだからお前が食うべきだ」
「僕はもうとっくに成人している」
……そうだったな」
「とにかく、二人で食べよう。君が決めないなら玉ねぎのソースにするぞ」

オロルンは飴色のソースをべちょ、と皿に出し、ずいと隊長に向けて押し付けた。

「はい。僕の分は少しとっといてくれたら大丈夫だから」
……

かたくなに食べようとしない隊長にしびれを切らし、オロルンは皿を自らの方へ寄せた。肉と野菜を一つに纏めて掴むと、隊長の口元へと寄せる。

……なんぁ」

何だ、と言いたかったが、隊長が少し口を開けたその瞬間をオロルンは見逃さなかった。口に肉と野菜をねじ込み、してやったりという顔をしている。仕方なしに咀嚼していると、肉と野菜に玉ねぎのやさしい甘味のソースが絡まり、口中に旨味が広がった。

……美味いな」
「そうだろ、自信作なんだ」

ソースを褒められたオロルンは耳をぴこぴこと揺らしながら嬉しそうに微笑んでいる。手にしている皿から同じように肉と野菜を摘まんでやり、こんどは隊長がオロルンの口に放り込む。

「ふぇぁ……んぐ」

オロルンは一瞬それに驚いたものの、もきゅもきゅと咀嚼して飲みこみ、満足気に頷く。

「うん。美味しい。亀の肉は初めて食べたけれど、こんな味がするんだな」
「いや……こいつは魔物に近いのか、普通の獣肉と変わらん気がする。亀の肉はもっと淡白で鶏のような感触だ」
「そうなのか。知らないことがいっぱいだ……
……まあ、少しずつ経験していけばいいだろう」
「そうだな。いろいろ教えてくれ」
「俺がか?」
「君意外に誰がいるんだ?」

青と紫の澄んだ瞳に見つめられ、喉まで出かかった拒否の言葉は飲みこまれた。期待に満ちた目の奥底に、もう離さないでくれと縋るような哀しい灯がちらつく。

……そうだな。俺に教えられることであれば、だが」

その言葉に満足気に微笑んだオロルンと共に、朱く染まる水平線を眺めた。