20XX年、5月3日。世間が長期休暇に浮かれる頃、オレたちは疑念と絶望の最中にあった。オレ、タイショウ カンジにとって最大の憧れである幼馴染の家で死体が見つかったのだ。
第一発見者は友人であり、当日待ち合わせの約束をしていたアサヒ。家の扉を開けたまま放置していることに違和感を持ち、声をかけて覗き込んだと言う。そして玄関のすぐそこに、血に沈む首無しの死体。検視の結果、その死体は発見場所の家主……サクタ ヒロであると断定された。
【英雄を救世主がれ】
5月14日。ヒロの葬儀や遺品整理などが一段落し、深く考える時間ができた日。オレは布団に包まりながら、台所に向かっているソウゲツの背を眺めていた。
ヒロの葬式にて。友人であるアサヒは無言のまま、それでも動揺を隠しきれずに震えていた。ソウゲツもいつもより哀しげな顔を浮かべ、沈むオレの背を擦る。他にも多くの縁で、ヒロの葬儀は進んでいった。嫌なほど順調に進むものだから、何かのドッキリではないかと願った。そんな訳なかったのだが。
「起きれるか、カンジ」
ふと気付けば、ソウゲツが握り飯の乗った皿を手にオレを覗き込んでいた。心配そうに眉を下げ、こちらを優しく気遣う。笑顔を浮かべる気分にはなれず、かと言ってその想いを無下にもしたくない。オレはゆっくり身を起こしながら、感謝の意を告げ頷いた。
「無理はするな」
「ううん、ホンマに大丈夫」
「……そうか。
なら、飯より先に顔を洗ってこい」
「そんな酷い顔しとる?」
「してる」
「ん、わかった」
言われるがまま、洗面所へ向かう。ボンヤリ廊下を歩いていると、玄関からカタンという音がした。何かがポストに投げられた気配。洗顔ついでに回収してしまおうと、ポストの中を覗く。茶封筒が一通と、ソウゲツのいつも読んでいる新聞。配置から見るに、先程の音は茶封筒が入れられた音だろう。
「……?」
新聞と共に持ち上げた茶封筒は、そんなに大きな物ではない。テープで雑に止められた口、送り主や住所は書いていなかった。不思議な封筒を、なんとなしに開く。丁寧に折りたたまれたメモ用紙と、見覚えのない写真が一枚。
写真に目を奪われ、唖然とする。メモ用紙には文字が刻まれているらしいが、今オレはそれどころではない。薄っぺらい写真には、先日亡くなったヒロの姿。否、ヒロの頭部が乗せられた皿。周囲は薄暗いものの、同じテーブルにカトラリーが添えられているのが見える。中央の首は目を閉じており、正しく死人の顔をしていた。
「カンジ?」
背後から、ソウゲツの声がかけられる。答えられないオレを不審に思い、手元を見た。驚愕する気配、そして写真を奪われる。その拍子に、メモ用紙がひらりと床に落ちた。視線がゆらりと動き、自然とメモ用紙の文字を認識する。何処かの住所であろう文字列と、残酷なまでに丁寧な筆跡。
『莞爾、蒼月、旭。救けたいのなら、周りに内緒で此処においで』
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