呪里
2025-01-10 19:47:34
1920文字
Public Code_Abyss 本編
 

episode:1 第二幕 〈兎と事件とパーカーと〉


 時刻は14:00を回る頃。一人の男は人が多く集まる大通りに向かって路地裏で走っていた。男は数時間前に事件を起こした通り魔で、次の獲物を探している最中だった。

(畜生!アイツまだ追いかけてきやがる!)

振り向いた視線の先には灰色の髪をした兎耳の少女が向かって来ていた。制服を纏った少女は息切れをおこすことなく少しずつ男との距離を縮めていった。

(こんな所で捕まってたまるかよ!!)

男は曲がり角を曲がると目の前にあった水溜まりに体を沈めていった。

少女が追いついた時には既に姿が見えなくなってしまっていた。

(確かにここまで足音はしてた。もしかして、この水溜まりの中に?)

昨日の雨で作られた水溜まりをじっと見つめて考えてみる。

(だとするとこの事件の犯人は魚人?それとも水関連の魔法が使える術者か………。とにかく、ここにいないなら動かなきゃ)

 少女は高く飛び上がり、あっという間に路地裏を囲っていた建物の屋根まで行ってしまった。
今回の事件、なんとしてでも自分が解決し手柄を立てたいと息巻いていた。




 理由は今から1ヶ月程前の事。少女は肉食獣人達に襲われる寸前にとある人物に助けられた。
助けてくれたのは薄紫の髪のツギハギコートをまとった女性。じっとこちらを見る赤い瞳から少女は目が離せなかった。

そして

「あの!私に自分の身を守る術を教えて頂けませんか?!」

無意識にそう言ってしまっていた。

コートの女性は少し驚いた表情をみせた後、目を細めて答えた。

なら、うちに来る?」








 このようなやり取りから、少女はある組織に入る事が決まった。今日は以前助けてくれた女性と、その部下の方々との顔合わせの日。

 顔合わせは夕方。せっかくなら手柄を立てて、褒められてスタートという最高の始まりを迎えたかった。

「くそっどこ行った?」

 男は見つからず、ただただ時間がながれていく。少女は焦る気持ちを抑えながら耳をピンと立て、手がかりを探す。

すると

『キャー!!!』

 誰かの叫び声が聞こえた。性別は女性、距離はここからさほど遠くない。

 『うるせぇ騒ぐな!殺されてぇのか!』

 続いて、探していた男の声が聞こえる。どうやら地上に上がり、誰かを襲っているようだ。

……!急がなきゃ!」

少女は猛スピードで現場に向かった。