たくさんの種類の布が入った紙袋を持ち、類は上機嫌で家に帰ろうとしていた。今日は手芸屋に質の良い布が入ったという情報を得て、朝一で買いに行っていた。
(すごくいい質感の生地が手に入ったなぁ。ふふっ。今からお洋服作るのが楽しみ♪)
軽い足どりで駅に向かおうとすると
「………ねぇ、あの人超かっこよくない?」
「ねー!女装男子ってやつ?でも顔がいい〜!」
どこからかそんな会話が聞こえてきた。普段仕事の時はメイド服を着ているが、今自分の服をショーウィンドウで見てみても、男としかみられない格好をしている。
(この声どこから………?あっあの子達かな?)
声の主はブレザーを着た女子高生達だった。どうやら本屋の中を覗いて話しているようだ。
少し気になった類は女子高生の邪魔にならないようにゆっくりと近づき、同じように覗き込んでみると、一人目立つ者が立ち読みをしていた。
(ひぃちゃんだ)
視線を集めていたのは親友の柩だった。モデル顔負けのビジュアルに女性と思われてもおかしくない可愛らしい服装、それに加えて長くサラサラした髪を結わずに下ろしている様は誰もが立ち止まって見つめてしまう程に美しかった。
(何を読んでいるんだろう?)
遠くからでしか見えなかったが、どうやらファッション雑誌を読んでいるようだ。
(偉いな、ひぃちゃん。まだまだ自分を磨こうとしてるんだ)
ウンウンと頷きながら感心していると、柩は暗い表情で本屋から出てきた。
「はぁ……」
ため息をつきながらとぼとぼと歩いて行くのを類はただオロオロしながら見ていることしか出来なかった。
(どうしたんだろう…?)
類は本屋に入り、柩で先程まで読んでいたであろう雑誌を手にとり、中を読んでみた。ぺらぺらとページをめくるが、特に柩がため息をつくような記事は見当たらない。
(今流行りのファッションに、モデルさんへのインタビュー記事、次の季節の先取りアイテム…何が気に入らなかったのかな)
ページが全体の半分をこえようとした時
(……あっ)
とある記事に目がとまった。
(もしかして…これを見たから?)
この記事で暗くなったのかと類は納得した。Abyssの中で一番長い付き合いの類には、柩がなぜあんな表情をしたのかがすぐに分かり、加えてどうやったら笑顔になってくれるかと考えはじめた。
(うーん……手段はいくらでもあるけど、根本的な解決にはならないよね。どうしよう)
うーんうーんと小刻みに揺れながら悩んでいると
「……何してるの?」
思いがけずにある人に声をかけられた。振り向くと類が、いや、Abyssの皆が敬愛してやまない女性が立っていた。
そうだ、彼女なら何か助けてくれるかもしれないと、類は先程までの出来事を話した。
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