バラ肉
2025-06-09 20:06:17
3511文字
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ラブシック【銀サイ】

古の頃。
シルバーマンが帰ってこないと知ったときのサイコマン。

銀サイ戦をうろ覚えで書いてるので、設定が間違ってたらすみません、




「ゴールドマンとシルバーマンが死んだ」

いつものポーカーフェイスのまま報告したジャスティマンに、サイコマンは自分の体から一気に血の気が引くのを感じた。
「ッ……、は、……っえ……
戸惑いに、咄嗟に声が出なかった。
一体何を言っているのか。問い詰めたい言葉は次々と湧き起こる。だが、動揺に絡んだ舌は言うことを聞いてくれない。
「どういうことだ!?」
代わりに聞こえてきた怒声は、誰のものだろうか。
サイコマン同様、周りに居た始祖たちも告げられた真実を素直に飲み下せないようだ。
あのゴールドマンとシルバーマンが!
控えめだったざわめきは、すぐに大きな喧騒へと変わっていった。
特に、ゴールドマンとの闘いを好んでいたペインマンとアビスマン、カラスマン辺りはどうにも納得出来ないのか。無意識に奥歯を噛む顔は揃って険しい。今にもジャスティスマンへ食ってかかりそうな勢いだ。
実際、近くにいたミラージュマンやガンマンが抑えなければ拳の一つや二つは飛んでいたに違いない。乱闘は免れなかっただろう。

「やめておけ、お前達」
だが、そんな内輪揉めが始まる前に、低い声がその場の空気を震わせた。

「とにかく、ことの次第を説明しろ。ジャスティスマン」

静かな声で先を託すザ・マンは、真っ直ぐジャスティスマンを見つめると、その鋭い瞳に向けて顎をしゃくる。続けろ。言外に込められた指示に、彼もまたあい分かったと顔を上下させた。

……ああ。分かった」

そこから、彼は今回の顛末を語った。



曰く、
「相打ちだった」
「互いに剣を持ち、確実に勝者を決めるようにした」
「結果、相打ちと言う形でかの兄弟は互いに同等の力を示した」
「持った剣は、どちらの首をも刎ね落とした」
「首は、シルバーマンの系譜にあたる正義超人に祀らせるようにした」



そう淡々と告げる声に感情はない。
自身が見たままを語る。自分の価値観など一切挟まない。平等を謳う彼らしい告白に、一同の顔は歪むばかりだ。

中でも、白い顔を更に青ざめたサイコマンの表情は苦悩に満ちていて。

……めて」

「二人とも、共にこちら側へ帰る様子は——

……やめて、ください……

「どのみち、壱式と弍式。彼等は我等とは袂を分かつつもりで——

「もうやめなさない! ジャスティスマン!」

「黙るのはお前だ、サイコマン!」

ビリビリッ!!
絹を裂くようなサイコマンの金切り声に対し、ザ・マンの低い一喝が空気を揺らした。ギロリと睨む目は酷く冷たく、一個人の意見など邪魔だと言わんばかりだ。ましてや感傷めいた非難など、栄誉ある完璧超人として情けないだけ。
無言のプレッシャーに、他の始祖達も吊られて固唾を飲む。
こうなっては、直ちにザ・マンへ謝罪し、ジャスティスマンに報告の続きを仰ぐのが上策だろう。きっと普段のサイコマンなら、言われずとそうしたはずだ。もちろん、ちゃっかり嫌味の一つや二つ添えるのも忘れずに。始祖随一の智略家として、完璧に道化を演じる場面……にも関わらず、今のサイコマンは怒鳴られるなり、何も返すことができなかった。
……
感情の抜け落ちた顔はさながら人形めいていて。

「おい、サイ」
様子を訝しんだガンマンがその肩に手を置いた瞬間。

「呼ばないでください!!」

バチンッ!

「ッ……!?」

大きな手を弾き返したかと思えば、彼の目は怖いほどに血走り、温情をかけようとした男を睨んでいた。

「やめて、ください……
示される拒否は、全身から溢れていて。

「あの人の声が、薄れてしまうでしょう……っ」
頭を振りながら両耳を塞ぐ姿は、足取りすら覚束ない。



『サイコマン』



誰よりも見た目に気遣う癖に、この時ばかりは皆からどんな目で見られているかなんて考えられない。

「やめて……嗚呼、シルバーマンさんの、声が」

ゆらめく体は、彼の心を映しているのか。



『サイコマン』



鼓膜から蘇るシルバーマンの優しい声音に、瞳に薄い膜がかかる。
大好きだった、何よりも心地よかった。

「私を呼ぶ、声がッ」



『サイコマン。行ってくるね』



また、聞けると思っていたのに。
また、会えると思っていたのに。


「シルバーマンさん……ッ!!」


もう二度と帰ってこない。

その事実に、サイコマンはスカートを翻した。

「おい!? サイッ……いや、拾式(テンス)!!」

掛け出す足は、早く。
背中でがなり声がした気がしたものの、今の彼にとってそんなものはノイズでしかなく。

駆けていく側から、涙が宙を舞っていく。

(うそつき)

その言葉と共に、サイコマンの胸にはぽっかり大きな穴が開いた。

決して誰も埋めることはできない。

彼以外、愛しいあの人以外。




だから、
その奥に産まれていた種は、もう決して芽吹くことはないだろう。









【死んだ花の名を、誰も知らない】