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tonami
2025-06-04 03:32:19
6260文字
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ある日曜日の話
いずれ🐯⚔️になってユニットも組む予定の俳優パロ。
2P目は🐯のモブファン視点。
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とある日曜日の午前七時三十分
日曜日の朝、ローは起きるなりテレビの電源を入れた。子供向けの番組がやっているのを横目で見ながら、ケトルのスイッチを押す。
ドラマ撮影から解放されたあとのオフは、誰にも起こされないのをいいことに昼過ぎまで眠っていることが多い。それからのんびり起き出して、撮り溜めていた番組や映画を夜までゆっくり見るのが常だった。けれど今日ばかりはそうも行かない。日曜日である今日ばかりは、朝早くに起きる必要があった。
ローは子供の頃から特撮ヒーローが好きだ。特に海の戦士ソラという特撮番組が好きだった。ちょうどローは初代リアルタイム世代で、よく父や恩師を付き合わせてソラごっこをしたものである。
今日早起きしたのは、その海の戦士ソラ三代目の放送を見るためだった。ソラには各世代の特色がある。たとえば、初代のキャスティングはベテラン俳優が多かったが、二代目からは若手や新人が多く起用されるようになった。今期の三代目は特に顕著で、主人公ソラを含めメインキャラが全員新人から抜擢されていた。放送当初は演技力を不安視されていたが、回を重ねるごとにどんどん成長していくのが手に取るようにわかった。一年という長期クールの半分まで過ぎた現在では、安定した演技と、代の特色によって変わるストーリーも見所だとファンから評判を得ている。
本当ならローも演者として関わりたかったが、オーディションの話を知った時にはすでに遅く、他のドラマ撮影があったので泣く泣く諦めた。もし次があるのなら絶対に出演してやると、マネージャーには口酸っぱく告げている。
インスタントのコーヒーを淹れ、ソファーに腰掛ける。ちょうどテレビでは子供向け番組が終わったところで、次週の予告を流していた。一瞬コマーシャルが挟まり、海の戦士ソラが始まる。
先週から始まったワノ国編は、名前の通り時代劇のような背景と衣装の国だ。広い道を、深緑の着流し姿が歩く。それよりも鮮やかな緑をした髪は地毛だろうか。通り過ぎる町人に声をかけられながら、町の外れまでやってくる。そこで侍が振り返った。
まず目に入ったのが、閉じられた左目に縦に走る傷痕。精悍な顔立ちをよりいっそう強面にしていて、歴戦の猛者を感じさせる。
おれに何用だ、とざらついた、耳触りの好い低い声が周囲に鋭く放たれる。よく気づいたなァ、とどこからか声がして、空間が揺らめいた。誰もいなかったはずの場所に、黒いマントとマスク姿が現れる。ジェルマ66の、ステルスブラックだ。
『
……
てめえが、ジェルマとかいう奴か』
『ステルスブラックだ。まとめんじゃねェ』
不機嫌そうに返したステルスブラックに、侍の眉が上がる。今期のステルスブラックは兄弟との仲があまり良くなかった。視聴者から離反も疑われているくらいには、ソラ側に肩入れしているように見える。
『お前のその刀、ずいぶん貴重な素材を使っているらしいじゃねェか。王国の繁栄のため、渡してもらおうか』
『断る!』
侍が抜刀して、半円を描くように振り抜く。それを飛んで避けたブラックは一度着地すると、今度は角度を変えて侍に飛び蹴りをかます。侍は片腕で防ぎ、素早く刀を袈裟がけに振り下ろす。紙一重で躱したブラックに追撃をかけるべく、一歩踏み込んだ足を軸に体を反転させる。襲い来る刃を沈み込むことでブラックは回避したものの、顎を蹴り上げられ衝撃で吹っ飛んでいく。ジェルマは改造人間という特性上、体が頑丈だ。飛ばされたものの、無傷で立ち上がったブラックが、やるじゃねェか、とにやりと笑った。──ここでオープニングだ。
今週からオープニングが変わり、曲が新しくなっていた。主人公達のカットと同時にクレジットが表示される。ジェルマ側のキャストが終わり、声優キャストが表示される前に、見慣れない名前を見つけた。『リューマ ロロノア・ゾロ』。あの侍だろう。今回のみのゲストか、それとも追加戦士ならぬ新規加入者か。
前よりも合体ロボを強調したオープニングが終わり、主人公サイドに話が移る。そもそもワノ国にやってきたのは、故障したロボットを直すためだった。修理のためにはワノ国にある特殊な鋼とそれを扱える鍛冶屋が必要で、先週は鍛冶屋の居所を突き止めたところで終わった。今週はその鍛冶屋の元へ行き、修理のために力を貸してほしいと説得するが、余所者には力を貸すことはできないと突っぱねられる。そこへ、同じように噂を聞きつけてきたジェルマが襲ってくる。ところ構わず暴れる配下が建物を壊し、さらに逃げ惑う町人を襲おうとしたところを、ソラ達が助け、撃退する。その光景を見ていた鍛冶屋が心を開いて、ロボットの修理をしてくれることになった。
シーンは変わり、侍対ステルスブラックの戦いに移る。両者引けを取らず、刀と足技がぶつかり合う。ステルスブラックの役者はキックボクシングの経験者で、それで今期のブラックの攻撃は足技になったとは本人の言だ。出典はオフィシャルサイトのキャスト座談会である。対して、侍のほうは刀を扱い慣れているのか殺陣が滑らかだ。体の使い方も上手い。ローは初めて見る俳優だが、少なくとも剣道かなにかの経験があることは確かだ。
打ち合っていた二人が距離を取り、侍が正眼に構える。ぴんと張った背筋。ステルスブラックを見据える鋭い隻眼。真夜中のように深く、静寂に満ちた空気が画面越しにも伝わってくる。ステルスブラックも機を伺いながら構え、両者共に地面を蹴り──エンディングが始まった。
二代目から、エンディングはキャストが踊るタイプになっている。曲が変わってしまうとダンスも変わるので、こちらはクール通して同じ曲だ。特に映像は変わることなく、次回予告が始まる。鍛冶屋がロボットを修理しているシーンと、侍とステルスブラックが会話しているシーン、ソラ達とジェルマの他の兄弟との戦闘シーンが流れ、サブタイトルをナレーターが告げて終わる。コマーシャルが挟まることなく、次のライダーが始まり、ようやっとローは一息ついた。
今週は情報量の多い回だった。リューマという侍はあのままステルスブラックのライバルになるのだろうか。そうなると、リューマが追加戦士枠だ。オープニングの妙に長いカットに入る。他の兄弟が来ていないのに、ステルスブラックだけ先行してワノ国にいる理由も気になる。しかも単独行動のようだった。近々、離反が現実になるかもしれない。
そう考えながら携帯端末を手に取って、ブラウザを開く。入力するのはロロノア・ゾロの文字。出てきたのはよくある有志による情報ページ
……
ではなく、剣道の大会だった。開いてみると、どの大会も優勝している。小学生から高校まで、どれも個人では負けなし。恐ろしいほどに強い。そのうちのどれだかに掲載されていた写真には、左目を縦断する傷があった。あの傷は自前だったのかと驚くと同時に、目がしっかり開いていることに安堵した。隻眼はよく似合っていたが、片目が失われていたのはもったいない。
いくらスクロールしても演者としての情報はまったく出て来ず、諦めてSNSを開く。次の番組の途中だったのでそちらのトレンドも入っていたものの、一番上にあったのはロロノア・ゾロの名前だ。そのすぐ下にリューマとステルスブラックもある。
試しにロロノア・ゾロの名前を押してみる。殺陣についての褒め言葉と正体不明の新人であること、大会のホームページのリンクを添付した投稿。同じ剣道をやっていた人間の声もちらほらある。戦績を見てもあれだけ強かったのだ。そちらの界隈では有名なのも頷ける。
名前が上がるのは剣道ばかりで、舞台などの情報はいっさいなかった。案外そういったものに出演しているかもしれないと思ったのだが。ロロノアに至ってはまるきり新人らしい。こうなれば自分の伝手を使ったほうが早い。試しにマネージャーに訊いてみるか、とSNSを閉じた。
端末をテーブルに置き、入れ替わりにマグカップを手に取る。コーヒーは、すっかり冷めていた。
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