Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
匣舟
2025-06-02 22:08:47
5489文字
Public
RKRN
あなたしかいない
毎回会う度に健気に乱に薔薇を送る滝の話
1
2
あなたしかいない
乱太郎の自室にはいつも花瓶に一輪の薔薇が生けられているのは誰もが知っている話である。何故、いつも花瓶に一輪の薔薇が生けられているのか。それは六年い組、体育委員委員長である平滝夜叉丸が乱太郎に会う度に薔薇を送っているからだ。
いつしか突然始まったこの行為に、乱太郎はいつも、要りません!と突き返していたけれども、順応性が高く尚且つ薔薇は薬として使うと色んな用途に使えると校医である新野に教えられてからいつしか乱太郎も突っぱねることなく貰うようになったという話も有名である。
「また今回も貰ったの?」
「うん。よく続けるよねえ。」
滝夜叉丸先輩。と微笑んで慣れた手つきで花瓶に一輪の薔薇を生ける乱太郎。しんベヱはそんな乱太郎を見て気づかれないようにため息を吐いた。
いつも、薔薇が枯れかけた時を見計らっていつも一輪の薔薇を送る滝夜叉丸のなんと健気なことか。かれこれこんなことを三年も続けているというのに乱太郎は薔薇って珍しいのになんでくれるんだろうね。と首を傾げているだけだ。
滝夜叉丸が三年も乱太郎に薔薇を送っている理由をしんベヱは知っているし、三年は組のよい子達はもちろん知っているし、なんなら上級生はみんな知っているし、勘のいい下級生も知っているだろう。
滝夜叉丸が乱太郎に薔薇を送る理由を知った時、どうしてこんなに回りくどいことをするんだろうとしんベヱは思った。
だって、滝夜叉丸の想いが乱太郎に届くように、乱太郎が滝夜叉丸を好きになるように。そう願いを込めて薔薇を送るのならば、もっとストレートに好きと伝えた方が早いだろうに。
自称学年一成績優秀のナルシストで自信家の滝夜叉丸とあろうものがどうしてこんな回りくどいことをするのか?と乱太郎と一番仲の良いきり丸としんベヱは一度、滝夜叉丸本人に聞いたことがあった。乱太郎は鈍感だから、そんな回りくどいことをしても振り向かないですよ。と。
滝夜叉丸が乱太郎に薔薇を健気に薔薇を送り続けて三年。乱太郎は一年生から三年生に、滝夜叉丸はもう最高学年の六年生になってしまっていて、卒業まであと一年を切っている。
このまま乱太郎が気づかなければ、ただただ三年間、乱太郎に対して薔薇をずっと送ってくれていた先輩として記憶に残ってしまう。
いつも乱太郎の隣にいて、滝夜叉丸が乱太郎の事を大切に思っていることを知っているふたりだからこそ、滝夜叉丸に乱太郎を託したいと思っているし、彼の一途な想いがこんな形であっていいのかと問いただしたのだ。
滝夜叉丸はそんなことを二人から言われると思っていなかったのか一瞬驚き、きり丸としんベヱを見て微笑む。
「
…
そんなことを思ってくれていたのか、お前たちは。その心遣いに私は感謝しなければいけないな。」
でも、乱太郎に別に気づかれなくてもいいんだ。と言った滝夜叉丸にしんベヱときり丸は顔を見合わせて、そして滝夜叉丸に向き直って、なんで、と言葉を紡ごうとしたが、滝夜叉丸に制された。
「
…
本当は気づいて欲しい気持ちもある。」
けれど、この先卒業してから忍者として生きる身ならば死と隣り合わせの日常を送るだろう?だから絶対に生きて帰ってくるという確信もないし、卒業して、私が居なくなったら乱太郎が私のことをずっと好いてくれているとも限らないだろう?だから、これでいいんだ。乱太郎の記憶により濃く残るならそれでいいんだ。
そう言って、滝夜叉丸は髪を弄りながらふうとため息を吐いた。乱太郎の前では見せない滝夜叉丸の苦悩に、ふたりは何も言えなくなってしまった。明らかに落ち込んでいるきり丸としんベヱを見て、滝夜叉丸は二人の肩をポンと叩いた。
「
…
そんな顔をするな、お前たち。毎回、私が贈った薔薇を見てありがとうございます。と微笑む乱太郎を見る度にそれだけで満足している私もいるのも事実なんだ。」
しんベヱときり丸はそれを見ていられずに俯いてしまう。滝夜叉丸はそんなふたりに微笑んで、空を見上げた。
「
…
乱太郎が幸せで居てくれればそれでいいんだ。だから、」
もし、この想いが届かず卒業してしまった時。私が居なくなってしまった時には
…
まあ、私が願わなくとも一緒にいるだろうが
…
乱太郎のことをよろしく頼む。と滝夜叉丸はふたりに言った。
ふたりはその言葉に、滝夜叉丸の想いが痛いほど伝わってきて、そして何も言えなくなってしまった。そんなふたりに滝夜叉丸はまた微笑み、頭を撫でてくれたのだった。
そんな滝夜叉丸の想いを知っているからこそ、滝夜叉丸から乱太郎を託されてしまったきり丸としんベヱは彼の気持ちを無下にすることも出来ず、ただただふたりのもどかしい距離を見ていることしか出来ない。けれど、ふたりともが幸せになって欲しいと願っている。
「
…
もどかしいねぇ
……
。」
「
…
?しんベヱ、何か言った?」
「
…
ううん、お腹すいたな〜って言っただけ!」
「今もお菓子食べてるのに!?」
だってぇ、早くおばちゃんの作ったご飯が食べたいんだもん〜。と言いながら、しんベヱは乱太郎が早くこの薔薇の意味に気づかないかなあ
…
。と願うばかりだった。
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内