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保科
2025-06-01 16:02:42
1696文字
Public
ひびちか
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理由付け
お題:プラネタリウムか、星空をテーマにひびちかちゃんお願いしてもいいですか?
いいですよ…!でも私が疎すぎて申し訳ないですよ
「ふわー
……
もうすっかり冬だねぇ」
「そーだな。ま、もうすぐ年末だしなあ」
ひびきの吐く息が白く染まり、電灯の明かりの中に溶けていく。後ろ手にアーネンエルベの裏戸を閉めて、私は思わず身震いした。退勤時間の20時となると、当然のように外は真っ暗、おまけに11月後半ともなれば、気温は日によって一ケタ台だ。今日は特に冷え込む、と言われていた日で、前を行くひびきが小さく鼻をすする。
「うー
……
ね、チカちゃん、」
「やだ」
「えー!なんでなんで!?」
振り向きざまに上がる悲鳴に、何でもなにも、と私はマフラーを口元まで引き上げて、ポケットに手を押し込んだ。どうせ寒いから抱きつかせろだの手を繋がせろだの、誰がそんなことホイホイやるかってんだ。
「ちゃんと手袋つけてしゃかりき歩いとけっての」
「うう
……
今日もバイト頑張ったのに、チカちゃんがつめたいよう。冷蔵庫のアイスコーヒーよりつめたいよう
……
」
「先回りしただけだろーが
……
」
ぶうぶう文句を垂れながら歩くひびきとは、もう少し先の交差点で分かれることになっている。
……
妥協してやるべきだろうか。いや、いやいや。
なんて。そんな事を考えながら歩いていたものだから、ひびきが足を止めていたことに気づかず。
「のわっ」
どす、と背中にぶつかった。「おいひびき、急に止まるなって
――
」
「ね、見てみてチカちゃん!空!」
とはいえ、そんなことはどうでもいいと言わんばかりの跳ねた声に、気勢を削がれた私は口ごもった。
「
……
空ぁ?」
何なんだ、と顔を上げる。目を凝らして、すぐに、何を言いたいかは理解した。暗がりにも慣れてきた頃合いな夜目に、ちか、と瞬く星が目に入る。ドンドンと数が増えていく
――
今日は、そういえば、雲のないよく晴れた日だった。
「ね、お星さまキラキラだよ!」
「キラキラって
……
」また子供っぽい、と揶揄おうとした、振り向きざまの笑顔に口ごもる。返事がないのを気にしたのか、ひびきが小さく首を傾げた。
「
……
チカちゃん?」
「っ、な、なんでもない!
……
確かに、冬だから、結構星が見えるな」
視線を空に戻す。比較的都会の方とは言え、大通りを外れれば明かりも乏しい。昔、小学校で行ったプラネタリウムの景色を思い出す。まだそんな捻くれてなかった頃の私は、綺麗だなあとかなんとか思ったような、そうでもないような。
「ね、綺麗だよねぇ
……
」
呟きに、隣、じっと空を見上げる横顔に視線を移す。夜空を映して煌めく瞳の彩に、思わず目を惹かれる。
……
あの時聞いた説明は、まるで覚えていないけれど。もし何か一つでも残っていたのなら、ここで気の利いたことでも言えたのだろうか。マフラーの内側の口元をむにむにと捏ね回しながら、言い淀む私に気付いて、は
――
いないんだろうけど。ぱ、と視線をこちらに向けてきたので、少し身じろいだ。
「な、なんだよ」
「
……
星空見てると、オーロラとかも見てみたくなるよね、ねっ、チカちゃん!」
「あ?あー
……
いいんじゃないか?」
町中の星空をキッカケにするにしては、随分遠大な計画だなあと思いつつ。関係ないことと適当に相槌を打てば、途端、ぱあ、と、ひびきの顔が華やいだ。
「やった!じゃあ、約束だよ!」
ポケットの中に押し込んでいた手を、ぐいっと引っ張られる。
「おい、急に何
……
え、何、私も?」
「ゆびきりげんまーん!」
「いやいやいやいや」
誰も行くとは言っていないのに、勝手に結ばれた小指は慌てている間に解かれる。
「えへへ、楽しみだにゃー。えっと、二泊三日で行けるかな?」
「だから待てって
……
それは絶対無理だろ!」
るんたるんた、鼻歌でも歌いそうなひびきに手を引かれて歩き出す。ご機嫌で何よりだけど計画は練り直して欲しい。
……
当たり前のように握られた手。あれ、確か今日は、断ったはずなのに、いつの間に
――
「北海道〜♪」
「北海道には荷が重くないか!?こういうのってもっと北のヤツだろ!?」
さりとて、何かしらの気づきははツッコミでかき消されて、もう思い出されることはなかった。交差点までの道のりは、まだまだ遠い。
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