袋小路みけねこ
2025-05-18 16:55:56
2141文字
Public
 

アゼ♀と初潮 エメ視点

アゼ♀と初潮 https://privatter.me/page/6811fd9785c6e のエメ視点です。エメとアゼ♀とヒュ 生理ネタと過去ねつ造あります
この頃はまだアゼムじゃないけど便宜上アゼムです

 早く大人になりたい。これまで幾度思っただろうか。勝手に「冒険」に連れ出されて、厭だって言っても聞かなくて、でも……同じように「冒険」に連れ出されたヒュトロダエウスも笑ってる。もちろん「冒険」に引っ張り出してくるこいつも。だから早く大人になって、力を正しく身に着けたいのだ。こいつらを、失わないように。
 だが、最近のあいつはどうだ。笑ってはいるが、時折その顔が曇る。日に日に頻度は増えるそれが……どうにも苛つかせるのだ。
「確かにそれは心配だよね。ワタシの方からも何にも言われていないんだ」
「心配じゃなく落ち着かないだけだと言っているだろう、まったく……
 そう、あいつが何に顔を曇らせているのか、ヒュトロダエウスにも教えてないときた。……私たちはあいつと一番付き合いの長い腐れ縁だ。一時的にどっちかだけに話すことはあっても、両方に何も話さないというのは本当に珍しいことで。それで……苛ついている。もし大人だったのなら、あいつも何か話せたのだろうかとか余計なことを考えてしまう。
「あ! 二人ともいる! よし、今日も行くよ「冒険」!」
 アゼムだ。今日も、曇りを隠すように笑っている。いつものように手を握られ、引っ張られる。しばらくはつつがなく「冒険」が始まった。だが、突然。その手の引っ張る力が消えた。曇り顔が雨に変わっていた。口は何か訴えようとしているが、意味のある声にならない。……こいつ、こんなに力が弱かったか? 手も、背も少しだけ小さい。いや、力が弱いのはこいつの気が動転しているだけとも言えるが、手と背はアゼムが小さくなったんじゃない。私が、大きくなっているのか。いいや、今はそれを気にしている場合じゃない。
「ハーデス」
「ああ」
 すっかり触れているだけのアゼムの手を、しっかりと、かつ壊さないように繋ぎなおした。少し中の骨が主張してるこの手で、柔らかくつるりとしたアゼムの手を包み込む。震えていた手がようやく拠り所を見つけたように握り返してくる。助けを求めてくれない苛つきが、それだけのことで消えていくのを感じた。
「どう、しよう……
 アゼムの口は、やっとのことで言葉を紡いだ。やっと、助けを求めたな。
「行き先は私たちよりも長い付き合いの者のもとへ。家に帰るぞ、アゼム」
 私たちよりも付き合いの長い者。それは家族に他ならない。今の時間ならこいつの母親が在宅のはずだ。アゼムとヒュトロダエウスともども家の前に移動する。呼び鈴を鳴らせばすぐに目的の人が現れてくれた。
「あらアゼムどうしたの? 二人とも、連れてきてくれてありがとうね。さ、中に入って。お礼させて!」
 私たち二人は居間に通されて、アゼムと母親は扉を隔てて向こうの廊下にいる。アゼム、ちゃんと持ってる? 良かった、じゃあ行っておいで、教えた通りやったら大丈夫だからね……という母親の声が聞こえてきた。そのあと母親が一人で戻ってくるのを見て、思わず口と身体が動いた。
「あいつ……アゼムは、何を悩んでいたんです」
 私のこの行動に母親となぜかヒュトロダエウスまでもが目を丸くした。おい、アゼムの母親はともかくお前まで何故驚いているんだ。何かを知っているらしい母親が、思案するように口に手を当て、考えをまとめ終わった合図の頷きを1回した。
「二人には話してもいいけど、ヒントだけね」
 ヒントは「転身」じゃない身体の変化。せいちょう。そんなようなことを最近も聞いた覚えがある。……まさか。
……それって、痛い、ですか。あいつ、泣いてたから」
 月経、初めての場合は初経。俗にいうところの生理。周期的に発生して、数日間子宮から古くなった卵子と共に経血を排出する。血を、流している。
「うーん……痛い人もいる、かな。だけどアゼムの場合、初めてでびっくりしたのが大きいんじゃないかな」
 決壊したのは確かにそれだ。じゃあそれまでの曇り顔の原因は? 生理だけがあいつが泣いた原因だととても思えなかった。
「様子を見てくる」
 アゼムの居るところには算段が付いている。トイレの扉の向こう側には、アゼムの泣く声が漏れ聞こえた。どうした、まだ泣いていたのか。何がそんなにお前を曇らせる。私が話しかけると、少しは落ち着いてくれた。そして訥々と、曇っていた理由を話す。
「二人と、違う風に大きくなるのが怖くて、一緒に「冒険」も出来なくなったらどうしようって、思ったら、もやもやがどんどん増えて、それで……
 確かに男と女で違う成長はする。男には生理はないし女は手がごつごつとなったりしない。だが、それが何だというんだ。お前はお前で、これからも振り回してくる未来しか見えない。そんなことで冒険を諦める奴じゃない。とっとと大人になって、広い世界を駆けまわっていればいいんだ。それに耐えられる大人に私もなってみせる。そう、鼻で笑ってやった。程なくして出てきたアゼムの顔は、もうすっかり晴れて引っ付いてくる。昔より引きはがすのが容易にはなったが昔よりも引きはがそうと思えなかった。そのまま、ヒュトロダエウスとアゼムの母親がいる居間の方へ引きずっていく。大人への道はまだ半ばだ。今は一旦、休憩といこうじゃないか。