袋小路みけねこ
2025-04-30 19:38:15
2077文字
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アゼ♀と初潮

エメとアゼ♀とヒュ 生理ネタと過去ねつ造あります

 何か、でてる。お母さんから持たされたやつ。使わないと。ここじゃだめだ。行かないと。でも、でも、どうしよう、身体が動かない。その間にもそれは出てる。二人にも何か言わなきゃ。ハーデス。ヒュトロダエウス。そう思うのに言葉が出ない。それだけじゃない、目も、仮面付けてるよりもっと滲んでる。止まって、とまって。
「どう、しよう……
 辛うじて言えたのはこれだけだった。

 人間には雌雄がある。他の生き物も、それに倣って雌雄があるように作られたのがほとんどだ。みんなの身体はこれから大人になっていく。アカデミアの先生は、大人になるときの身体の変化や現象をみんなに教えていった。その中には……男の人と女の人では変化の仕方が違う、ってこともあった。それを聞いた時から、なんか、モヤモヤするようになった。どうしてなのか分からない。みんなは納得してるように見えた。それに、モヤモヤするって言ったってほんのちょっとだ。いつも通り、二人を誘って「冒険」に出かけたらきっとどっかに行っちゃう。
 「冒険」は何度行ってもやっぱり楽しい! 今はこどもだからあんまり遠くには行けないけど、大人になったらもっともっといろんなとこに行って、いろんな人を助けるんだ。ハーデスもヒュトロダエウスも楽しいって思ってるはず。特にハーデスは、口では厭だ厭だって言ってるくせに来てくれるんだ。じゃなきゃ、こっそりにこっとしたりしてない。私もとっても嬉しい! うれしい、はずなんだけど。
「どうしたの、なんだかここのところ、いつもより元気がないように見えるけど……
「大方はしゃぎ過ぎたんだろう、丁度いいから帰らせて」
「大丈夫! まだ今日の「冒険」は終わってないよ! 次はこっち!」
「おい、引っ張るな! お前も止めろ」
「あはは、確かにまだ終わってないもんね」
「そうそう! じゃあ「冒険」再開!」
「まったく……
 二人の手を引っ張りながら、ふ、とその二人の手を見た。そういえば、二人とも手が大きくなってる。ハーデスなんて声も少し低いかも。……どっちも、男の子が大人になってく時の変化だ。でも私は男の子じゃない。声も低くなってないし、手も二人に比べたら小さい。胸が変な感じするってお母さんに言ったら、胸用の下着を作られて着せられた。きっと二人はそんなこともない。二人は私と違って男の子だから。持ち物の空きが減っちゃう、なんて言っても強引に持たされることもないんだ。
 そのモヤモヤの最後のひと押しが今、滲み出た。

 引っ張るはずが引っ張られて、たどり着いたのは見慣れた個室だった。用を済ませるのにちょうどいい狭さ。そうだ、これをしなきゃ。……下着を見ると赤い染みが付いていた。持たされてた新しい下着に換えて、ナプキン――これもお母さんに持たされてた――を張り付ける。そんなことをしていたら、不意にまた涙があふれてきた。二人もいつの間にかいない。ここはトイレだから居ないのは当然。だけど、分かってても、きゅっと寂しさが私を捉えたその時。
「おい、少しは落ち着け」
 聞きなれた声だけど最近ちょっと低くなったハーデスの声が、扉の向こうから聞こえてきた。
「落ち着けって言われても、どしたらいいか、わかんない」
「だったらなんか喋ってろ、そうだな……少し前からお前、様子が変だっただろう。その理由を教えろ」
「理由……分かんない……けど、この前の授業からずっともやもやしてて、「冒険」してももやもやがむしろ増えて……
「この前の授業?」
「ほら、大人になるために身体が変化するって授業あって、それで、二人とは一緒じゃないんだってなって……前までは一緒だったのに、違ってきちゃって、それで、それで……
 「冒険」も一緒にできなくなっちゃったらどうしよう。ぎゅっとする感じがまた強く襲ってくる。もやもやの正体を吹き飛ばすように、ハーデスの鼻で笑う声が聞こえた。
「違うからなんなんだ。そんなことで「冒険」やめるような奴じゃないだろ、お前は。まったく……普段は強引に参加させてくるくせに、お前がそんなだと調子が狂う」
「あ……
 そうだ。……そうだ! ほんとにそうだ。違うからって「冒険」が出来ないわけじゃない! そもそも性別だけじゃなくって、いろんなとこが違うけど、一緒に「冒険」してたんだ。今さらなんだ!
「ありがとう! じゃあこれからも一緒に「冒険」しようね!」
「うるさい寄るなせめて事前の連絡を怠るな!」
「ふふふ、もうすっかり元気になったみたいだね」
 ヒュトロダエウスがお母さんと一緒になにかあったかい飲み物をもってここまでやってきた。きっとお母さんと一緒に用意してくれたんだ。元気になったみたいだけど、せっかくだし一緒にどう?というお誘いに、ハーデスもヒュトロダエウスも、もちろん私も頷いた。
「いいお友達ね。これからも大事にね」
「うん!」
 ああ、なんてあったかいんだろう。嬉しいな。出来ればこれからも、三人と一緒にあったかくなりたい。ううん、あったかくするからね。