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みたむら
2025-05-14 22:13:54
4456文字
Public
同人誌発行物まとめ
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「極めた恋、嫉妬する推し」サンプル
刀剣乱舞・長義さに本6冊目です。
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3
4
「極めた恋、嫉妬する推し」本文サンプル
これはある本丸の物語。
とある日の本丸では、いつもの時の政府から下された任務を出陣させていた。電子端末を操作し、出陣部隊に指示をする。
「
――
ふぅ、今日も無事帰還だね」
「お疲れ様、ここで一息つこうか」
「長義、ありがとう」
私と出陣部隊と通信している間にいつの間にか席を外していた近侍
――
山姥切長義が二人分のお八つを持って部屋に戻ってきた。今日のお八つはカステラのようだ。
出陣舞台が帰ってくるまでの間、私と長義は先にお八つの時間を取ることにした。準備を終えると「いただきます」と二人で挨拶をして、カステラを頬張る。
「! すっごく美味しい!」
「ああ。燭台切光忠はどんどんレパートリーを増やしていってるね。刀剣男士だということを忘れてしまいそうだよ」
「はは! 確かに。刀剣男士じゃなければ料理人とかパティシエとかなってそうだね!」
「海外の菓子にも目を向けているところは、元主の伊達政宗の恩恵があるかもしれない」
「そうだね。そのおかげか、毎日和菓子だらけにならずに済んでるよね」
和菓子も好きだけど、毎日和菓子もちょっと飽きがくる。洋菓子もあるといい気分転換になる。
次の任務まで時間がまだある。
私は、電子端末である掲示板に接続する。そこには、同じ審神者の友達と繋がっていて、趣味の話や各々の本丸事情を共有したりしている。
最近の話題は、〝推し活〟。
私は最近知ったばかりなのだが、世間では二次元キャラでも三次元の実在する人でも推しを応援する活動をいうらしい。そして、推し活の一つとしてアーティストならライブチケット、架空の人物ならグッズ販売を中心に〝推し活〟ブームが流行っているそうだ。
私が好きな推しはとある架空のキャラクターだ。審神者の仲間に最近はまっている漫画が気になって貸してくれたのがきっかけ。気がついたら徹夜してまで漫画を読みふけるまでになっていた。
それから〝推し活〟というものも教えてもらい、私も推し活がマイブームになっていた。
「主、そろそろ遠征部隊の
――
」
「ごめん、長義。代わりに彼らを迎えてくれる?」
「
……
主、またか」
はぁ、と大きなため息をしている長義を横目に見つつ、私は掲示板に返信するためにキーボードをひたすらたたき出していた。
今は、今度の休みに推しのグッズが出る。そのためにみんなで買い出しに行かないか、という話が出ている。もちろん、政府や長義たちには事前にそのことは伝えていて、許可を貰っている。
(やっと長期任務が終わっての休日だもの。んでもって推しのグッズをたくさん買うんだから!)
時間遡行軍との戦いは終わることを知らないこの世界は、ずっと戦いに張り詰めていると飽きるし、息抜きくらいほしい。
長義は「仕方ない」と言いながら帰って来た遠征部隊を迎えに部屋を出る。
私はその間、待ち合わせ場所や時間などを打ち合わせしている。
「この日の○時に××に集合、と」
掲示板に書かれたのをメモしていく。そして、スケジュール帳にも書き写す。
「ああ、やっと休みが出来た。待ってて、私の推し! 絶対に迎えに行くから!
――
」
「遠征部隊の帰還だ、主」
「ただいま戻った。本歌から聞いたが、また〝おしかつ〟とやらに夢中になってたらしいな」
「あるじさん、本当推しさんのこと大好きだね!」
遠征部隊・隊長の山姥切国広と、一緒に向かっていた乱藤四郎が長義と共にやってきた。他のメンバーは先に解散しているようだ。
成果を聞くと、「お疲れ様」と二人に声をかける。
「主、たまには本歌にも目を向けてやってくれ」
「え? 目を向けてるよ? ね、長義」
「に、偽物君! 何か勘違いしてないか?!」
「だって、あるじさんの愚痴言ってたでしょ。あるじさんが推しさんばかり構ってて嫉妬してるんだよね? 長義さん」
「な、にを
……
」
私と長義は一応恋仲ってことになっている。一応っていうのは、恋仲になって結構な月日が経っているからだ。掲示板での審神者たちともたまにお宅の恋仲とどうか、という恋バナをすることもあるが、私と長義の関係は正直いうと〝マンネリ化〟と言ってもいい。
長義は、真面目で私のことを大事にしてくれている。それはとても嬉しいし、誰もが憧れる〝優しい人〟に該当するだろう。しかし、私と長義との関係には、恋愛的な進展は正直ほぼないに等しい。
長義は私の前では格好いい長義でいてくれる。でも、あくまで審神者や主として接していて、女や彼女としての対応は正直イマイチだ。
(審神者の友達は『それは大事に想ってくれてるんだよ。羨ましいかもしれないけどその人のペースがあるし、焦らなくてもいいんじゃない?』と励まして貰ったけど
……
やっぱり不満はあるよねぇ)
これまでに何度か二人きりになることはあった。しかし、恋愛としてのスキンシップは日に日に少なくなっていて、所謂〝主従関係以上恋人未満〟みたいな関係に落ち着いてしまった。
(長義に直接、我が侭言ってみたら? ってアドバイスも言われたけど、堅物の長義に言ったら
――
)
『主。確かに俺たちは恋仲にはなったが、恋に呆けたくてなってるわけじゃない。恋仲は寄り道のようなものだ。あくまで審神者と刀剣男士、これは忘れないように』
元・時の政府直属の監察官を担当したことがある、徹底ぶりを思い出しては彼らに気づかれないように小さくため息をつく。
「大丈夫、さっきだって二人きりでお八つ食べて恋人らしい会話もしたもん。ねー、長義」
「あ
……
い、いや
……
」
長義はしどろもどろになりつつパクパクと口を開けている。穏便に終わらせようとしているのに、何故か長義はこうやって言い淀む行動が目立っている。
「
……
主、本歌。もう一度話し合った方がいい、その〝おしかつ〟とやらも構わないが、本職は審神者だってことは覚えておいてくれ」
「そうだよ。やっと長義さんと恋人になったんだから。それに長義さんも、あまりあるじさんを厳しくしないで、優しくしてあげないとね。あるじさんは女の子なんだから」
(乱ちゃん
……
! あなたって子は!)
いい奴だ。国広も遠回しに私たちの仲をもっと進展できるように助言をしてくれている。分かっているんだよ、私も長義も。ただ、あの頃のように素直になれないだけなんだよ。
「偽物君! これから暇だろう? 俺がお前を鍛えてやる」
「それは助かる。では、また夕餉に」
「ボクも畑当番の見張りしないと。それじゃまたね、あるじさん」
そう言って刀剣男士三人は部屋を出て行った。
私は三人に、じゃあね、と手を振って見送る。戸が閉まると静かになった部屋に少し寂しさを感じる。
「
……
しょうがないじゃん。推しがかっこよすぎるのがいけないんだから!」
私だって、こうなる未来が来るとは思ってなかったよ。それは学生までだって思ってたよ。でも、大人でも推し活をしていいんだって思ったらハマるじゃん。それに、それぞれ推しがいるカップルだっているくらいだ。推しがいて、恋人もいて、そしてお互いを尊重していればよくない?
(これ、浮気になる? でも推しは現実世界の人間じゃないよ? 単なる漫画のキャラクターだよ?)
あの長義が架空のキャラクターに嫉妬なんてするかな? 多分私が子どもみたいに見て呆れてるだけだと思うんだけど。
「長義にとっては読書したり仲間と鍛錬してるときが趣味っていうのと同じで、私の趣味は推し活ってだけ。別にホストに通ってるわけでも現実の男に浮気してるとかじゃない。うん、それは本当」
一人になった部屋で独り言が炸裂する。いいんだ、一人だから。こうやって振り返って、思考整理する時間があってもいいだろう。
『そうだよ。やっと長義さんと恋人になったんだから。それに長義さんも、あまりあるじさんを厳しくしないで、優しくしてあげないとね。あるじさんは女の子なんだから』
乱ちゃんが言った言葉を思い出す。
そう、私はたまに長義の口から好きだよとか、抱き合ったりとか、そういう何気ない誰でも体験する恋人のような時間が欲しいんだ。だからこそ、乱ちゃんの「あるじさんは女の子なんだから」と言ってくれたことに心に沁みた。
告白したのは、私から。
きっかけは出会った時の第一印象で一目惚れしたから。
『監察官、さん』
『聚楽第調査は強制ではないが、大人しく参加した方が身のためだとは言っておこう。では、準備が整い次第、聚楽第に来てもらおうか』
長義は今こそ外套を羽織り、顔を隠して我が本丸にやってきた。そして、審神者としての評価を彼が下し、無事に〝優〟をもらい、正式に山姥切長義として我が本丸に所属となった。
その時から私は恋い焦がれて、審神者でも基本的に戦いを好まない私でも一番頑張ったと思う。私の必死さに国広たちも察してくれたのか、苦しい中協力して聚楽第攻略をしてくれた。
『評価は
――
〝優〟。むしろこれまでよりも一番評価が高かった。よって、この山姥切長義がこの本丸に所属することになった。よろしく、主』
『
……
っ! うっ
……
ご、めんなさい。嬉しくて、つい』
私は嬉しくて彼の前で涙を流してしまった。私は、同期の審神者の中ではドベのドベだったからだ。
*製本版を購入の上、お楽しみください。*
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