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2025-05-07 12:45:16
3878文字
Public 演劇【推しの子】
 

欠稿/KING of BLADE

書きたいとこだけ書き散らかしますた。
曲解/僭王戴冠青い空の下の間を埋めるキザミと匁の話。
※一部残酷な表現があります。苦手な方はご注意ください。

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Scene03【盟刀狩り】

ずらりと刀が並んでいた。様々な拵の様々な刀。中には大太刀と思われる巨刀も、ほっそりと華奢な懐刀もある。
すべてに共通しているのは、その異様な輝きだった。刀身に宿る光が、意思あるもののように揺れている。

「まさか、これが全部盟刀なのか?」
「壮観でしょう? まだすべてには足りませんけどね。僕は盟刀たちの主ではないが、所持者ではある。次代へ継承するために盟刀を所持していた僕の一族と同じように」

地深い鍾乳洞のように、低く重い不思議な音が満ちている。盟刀たちの光はその音と呼応しているかのようだった。あるいはこれが盟刀たちの"声"なのか。
キザミは知らず自分の盟刀を意識した。獄楽天女もこんな光を、唸りを発しているのだろうか。

「やめろ、こんな……
「嫌ですよ。せっかくここまで集めたのに」

匁は愉しげに盟刀たちを見渡す。

「大変だったんですよ? 騙して誑かして力尽くで奪い取って。みんな殺した」


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Scene05【嘘】

匁はその細い首に指を絡め、己の側へ引き寄せた。

「大人しくして、と言ったでしょう? いくら桜花があったって、首を落とされたらそこの許嫁が悲しみますよ」

煽るようにちらりと刀鬼に眼をくれる。刀鬼は万黒燕尾に手をかけたまま、じっと匁の隙を狙っている。寸前まで張り詰める弓弦のようだ。
鞘姫は背後の匁を拒むように凛と頭を上げている。

「匁……あなたは本当に、この國の王になりたいのですか」
「あーあ、やっぱり僕を信じてはくれないんですね。姫様はいつもそう。あなたには僕の言葉が通じない」

匁は肩をすくめて、はああ……と大げさに溜息を吐いた。
鞘姫に突きつけていた流水死命をひらりと返し、見せつけるように宙に掲げる。

「僕は盟刀が嫌いなだけですよ。流水死命も。桜花も。他の盟刀たちも。ただの殺しの道具じゃないですか。
なのに國盗りを決めるのは結局、盟刀の意思だ。剣主なんて何の意味もない。戦いたくなんかないのに、盟刀を持つが故に巻き込まれて。みんな惨めに死んだ」

不意に流水死命の切っ先がキザミに向いた。青い光に射竦められる。
その鋼の冷たさをキザミは身を持って知っている。いつか匁に抉られた肩がひやりとした。

「だから、いっそすべてを鉄屑にして海の底にでも沈めてやろうかと。ちょうどいい。獄楽天女の炎でぱぁっと燃やしてくれません?」

流れる汗が冷たい。キザミはそっと自分の盟刀を握り直す。匁に、この情況に呑まれたら敗けだ。

「そう、あなたの刀も僕にください。キザミ。全部集めて壊してしまえば」

匁はキザミの眼を覗き作りもののような顔で笑う。

「もう誰も殺さなくて済む」


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Scene06【盟刀炎上】

「そんな……!?」

「これはまやかし、獄楽天女の炎ではおじゃりませぬ! 匁様の罠、です、ぞ」
「せっかくの見せ場を邪魔しやがって」

匁の舌打ちが聞こえた。
視界の端に、扉にすがりついて息も絶え絶えな風水師の姿が見えた。
ここまで全速力で駆けて来たのだろう。ずり落ちかけた眼鏡を指で押し上げ、百目は匁に見得を切る。

「匁様とはあの宴で盃を交わした仲。この百目、しかと百のまなこで"見"たのでおじゃる!」

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Scene07【炎と水】

「考えたことはないですか。僕は、僕たちは、もはや人でも鬼でもない。他者の生命を掠め取って生きている。ただ剣主と云う名の」

……俺は、いやだ。そんなのは絶対に嫌だ」

「あの時流れた血の何割かは、僕が殺した分だったんだ!」

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Scene09【主人公】

「待たせたな、真打ち登場だ!」
「王の盾はこのつるぎ様が任されたぁ!」
「遅えよブレイド!」

「ああ……盟刀も剣主もクソ喰らえ。一人残らず、俺が」

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Scene10【盟刀の意思】

「刀たちよ、力を貸してくれ!」

「やはりおまえが"王"なのか。ブレイド。あの時から。桜花がすべてを無効にした時から……!」

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Scene12【崩壊】

「聞こえない。おまえは殺しが好きなのに。俺がこんなにも憎んでいるのに……僕を喚ぶ声が、聞こえない!」

己の盟刀を十字架のように掲げ見惚れながら、匁が笑っている。引き攣った声は泣き叫んでいるようにも聞こえる。
瓦礫と化したこの場にあって流水死命は美しい刀だった。だが濡れたように青かった刀身は、今はただ冷たい鋼の色だ。

「ぼくの、かたな……

匁は壊れ始めている。風に囚われふらつく脚で舞っている。その姿は奇妙に美しく、おぞましい。
ごうごうと虚空で風が鳴る。ブレイドが持てる力のすべてで流水死命を封じている。

皆それぞれの場所から匁に刀を向けている。刀鬼と鞘姫は互いを庇い寄り添いながら。両と貫が満身創痍のブレイドを支えている。百目は必死に盟刀たちを掻き集め、つるぎはブレイドの盾となり匁から眼を切らない。

今、最前線に立っているのはキザミだ。共にあるのは獄楽天女。手の中の炎を信じる以外に道がない。

もう後には退けない。キザミは鋭く息を吸い込んだ。ひりひりと背に走る緊張を受け流す。盟刀が力を失っていても、匁の剣は恐ろしく速い。

「もう一度、おまえだけは」

匁の昏い眼がゆらりとキザミに向いた。何も見えていないようで、確かにキザミを捉えている。来る。


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殺すしかない。

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おれを、おいていかないで。

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鬼と人が出会えば、災いが

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いいこにします。だから、もう

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「二度と敗けねえ。俺はそう決めたんだ!」

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「鬼が、俺の名を喚ぶな……!」

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「匁ぇ!!!」

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Scene13【鬼と、人】


灼熱に赤く光る刃が匁の胸下に食い込み、半ばで止まった。
匁は己を裂く刀を見つめ、やがてゆっくりと顔を上げた。血の灼ける匂いがする。限界まで開かれた眼の中に牙を剥いた鬼がいる。笑いの形に大きく開いた口腔は溢れた血で真っ赤だった。

「人も……鬼、も。……なにもかも」

喘鳴混じりの壊れた厭な声だ。獄楽天女の刃を掴み炎に灼かれながら、匁はキザミに呪いを吐きかける。

滅んじまえ。

匁の手から流水死命が滑り落ち、音を立てて床に転がった。
匁の身体に深く入った刀を引きながら渾身の力で横に薙ぐ。ほぼ二分された身体が床の血溜まりにばしゃりと落ちる。倒れた匁の心臓に狙いを定め、深く抉る。鬼に止めを刺す時と同じように。

たとえそれが既に止まっていたとしても。






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Scene15【結末】

半分以上吹き飛んだ建物の真下に匁は倒れている。役に立たない天井から大粒の雨が吹き込んで来る。
匁の両眼は開いたままで、何も映さず雨に濡れていた。誰も遺骸に触れようとはしなかったらしい。
取り落とされた流水死命は、今はブレイドの手元にあるはずだった。

かろうじて屋根が残った別棟で、戦いに加わった者たちが、匁をどうすべきか話し合っている。
キザミはひとり途中で抜けて来た。どうでもいいと思ったからだ。
匁が國の行く末などどうでもいいと言い放った時、キザミはそれなりに憤ったのだ。今は同じ気持ちを抱いている。どうでもいい。

ふと気がつくと少し離れたところから渋谷の鬼がキザミを見ていた。鞘姫の近習の一人だ。名は忘れたが喧嘩早い女だなと思ったことは覚えている。

女はキザミを睨みつけながら小走りに駆け寄り、腕に抱えた白布を匁の上に広げた。またたく間に雨と血が染みて行く。

「これは渋谷の者だから」

聞かれてもいないことをぶっきらぼうに口にしてそっぽを向く。何に言い訳をしているんだ。

「鞘姫様が決断なされた。桜花を使う」

キザミの背後から重い声がした。こっちは名前も知っている。諸刃は鞘姫を支える渋谷の重鎮だ。

「ふうん。ブレイドは」

匁を新宿に連れて帰ろうかと思っていたのだ。両や貫は反対するかも知れないが。それも杞憂になった。

「王は、その……一度刀を交えたからには、仲間だと」
「は、ブレイドらしいや」

諸刃は苦り切った顔をしている。掟を重んじる男には、王の理屈が理解しがたいのだろう。

「ともあれ咎人は裁かれるが道理。ましてやこれは僭王。できる限りの鬼を集めることになった」

桜花は傷を移し替える刀だ。匁の身体は凄惨なまでに損壊している。傷を受ける数は多い方がいいのだろう。だが。

やっと終わったのにな。

口には出さず、流れ出た血が雨に薄まって行くのを見ている。
雨は次第に強くなる。いつまでも降り続くのだろうか。この雨が止む日は来るだろうか。
数多の命を掻き集めて、匁はまた生きるのか。

キザミはようやく顔を上げて諸刃を振り返った。

「俺は新宿に帰る」

それだけを告げて土砂降りの中を歩き出す。匁を壊したのは自分だ。桜花に力を貸す気はない。
それに、そんなこと、どうでもいいんだろ。匁。

トメと諸刃は何も言わず、篠突く雨に遠ざかるキザミの背中を見ていた。