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ぷの
2025-05-01 08:36:37
13960文字
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レイチュリ ※ベ限
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作って食べる小話
わいわいご飯を作って食べる🥫のお話まとめ。
レイチュリかな? たぶんそう。
P1 - 🍣♻️と🦑(祝・回転寿司コラボ)(2025/5/1)
P2 - 🍔(2025/9/18)
1
2
【🍔】
ハンバーガーつくーろ♪
「限定バーガーが食べたい」
「どこの?」
なんとなく朝見かけたCMを思い出して、アベンチュリンは呟いた。拾ったトパーズがいくつかファストフードチェーンを挙げる。名前を聞いたことしかない店も混ざっていて、彼女のアンテナの感度に感心する。
フットワークが軽いトパーズは「ちょっと足を伸ばしてくる」と言って星の裏側に行くし、なんなら近隣の星にも行く。彼女の生態艦の累積航行距離を見てみたいものだ。まだ取得して数年だけど、型と年式が同じ他の個人所有の船と比べて桁がひとつふたつ違ってもおかしくない。
「全部に限定メニューがあるのかい?」
「あるよ~。今ならだいたい目玉焼きが入ってる月見バーガーだね」
「玉子縛りなら、全部似たようなものなんだろ?」
「そんな大雑把な感性じゃファストフードは楽しめないよ。バンズもパティも卵の焼き方も野菜もソースもみんなそれぞれ工夫してるんだから」
「へえー。今年のおすすめは?」
いろいろ食べ比べたトパーズが勧めるならきっと美味しいに違いない。軽い気持ちでアベンチュリンが尋ねたら、サファイア色の瞳は光を失った。がらりとテンションを落としてやさぐれた顔でフッと笑う。
「食べてない
……
まだ、一つも、食べて、ない」
まあそうか、そうだよね。今二人はアベンチュリンのオフィスで顔を付き合わせ、決算に向けた報告書を作っている。当然プロジェクトごとに報告を上げているが、クローズした後で問題が起こったり、単純に不備が見つかることもある。そういった対応でこの時期は瞬間的に忙しい。なぜ二人で一緒に取り組んでいるかというと、ついでに都合よく案件をやりとりしたり、リソースをアレコレしたり、売り上げを立てる時期をコチョコチョしたり
……
有り体に言えば来期以降に向けて小細工
……
コホン、調整をするためだ。
アベンチュリンとトパーズは、昇格降格がある成果主義の会社で大勢の部下を預かる身である。自分の見通しにみんなの評価とキャリアがかかっている。せっかくすぐ横に話のわかる同僚がいるのだから、お綺麗にやるばかりが脳じゃない。不正と呼ぶか融通と呼ぶかは価値観によるだろう。カンパニーで成果を出し続けるには、たゆまぬ研鑽と細かい努力が不可欠なのだ。方向性はともかく。
事務仕事というのは、飽きる。アベンチュリンもトパーズもオフィスにこもって黙々と作業をするのに向いた性格じゃない。終盤になればすっかりうんざりしていて、手より口が滑らかに動いている。トパーズはメモを書きなぐった裏紙を丸めてゴミ箱に投げ、くるくると手の中でペンを回した。
「それ、レイシオの前でやるとチョークが飛んでくるよ。頭に直撃をくらって気絶した人間が出て以来、うちのオフィスでは禁止」
「君のコインロールと変わらないじゃない」
アベンチュリンは肩をすくめた。同じことをレイシオに尋ねたら、それは気にならないと言っていた。
「物がペンだと、邪魔な学生かと思って無意識に手が出るんだってさ」
「まあわからないでもないか。私、ノック式のペンをカチカチされるの大嫌い」
「それもチョークが飛ぶね。講義を聞いてないのは勝手だけど、人を巻き込んで気を散らすのは我慢ならないんだって」
集中力には個人差があるし、不真面目なのは自己責任。とはいえ、大学生にもなって、たった一システム時間少々の集中を維持できないのは問題外だとも言っていた。
レイシオはそういう生徒から真っ先に容赦なく放り出して落第させる。経歴に箔をつけるために卒業したいなら、成績表を汚さないように他で単位を狙った方がいい。レイシオの授業を取ろうとすると一度は警告されるそうだけど、それでもミーハー心で選択し、一月足らずで単位を落とす学生は毎年いるそうだ。以上、学食で聞き耳を立ててみたアベンチュリン調べ。
綺麗に整えられた指先がペンを軽く押す。親指を軸にくるりと一回転したペンを止めたトパーズは、もう片方の手でタタタと軽快にキーボードを叩いて顔を上げた。
「こんばんは、教授。ここは学校じゃありません」
オフィスに入室するなりチョークを構えたレイシオを、トパーズは呆れ顔で手のひらを向けて制止した。そのトパーズに、レイシオもまた呆れ顔になった。
「君たちはいつからここにいるんだ? 時計を見ろ、まもなく昼になる」
「うわ
……
」
「どうりでお腹が減るわけだ」
トパーズは天井を仰いで、せつなそうにお腹を押さえた。そういえば昨日、オフィスに来てくれと頼んだアベンチュリンに、レイシオは明日の昼頃行くと答えたのだった。
レイシオを手招いて、いくつか内容を確認する。これが埋まればほぼ作業はおしまいだ。最終確認は、胃に物を入れてひと眠りして、気力を取り戻してからがいいだろう。アベンチュリンは集中が持つ方だと自負しているが、半日以上根を詰めて空腹と寝不足を抱えていたら限界はすぐそこだ。
「はあ、じゃあ僕は一旦家に帰ろうかな」
「君もおしまい? なら一緒にお昼を食べるのはどうかな」
「いいね。何にする?」
「君が食べたがってたハンバーガーを作りましょ! 教授もご一緒にいかがですか?」
あれ、この展開前にもあったような気がする。遠慮なく断っていいんだよ、というアベンチュリンの目配せが届く前に、レイシオは頷いていた。
バンズを焼くところから
……
はさすがに時間がかかりすぎるので省略された。代わりに、大袋にたっぷり入った出来合いのバンズがあることを初めて知った。飴色になった玉ねぎが売られていることも。
ひとっ走りして買い物をしてきたのはトパーズで、その間にアベンチュリンは調理できる部屋を確保し、レイシオは午後の予定を後ろに調整した。
トパーズがみじん切りにした野菜などを混ぜて挽き肉をこねる。それを眺めながら、アベンチュリンは生野菜をスライスしてレタスを千切る。レイシオはソースを何種類か作っている。
「見た目はハンバーグの種だね」
「ほとんど一緒だよ。手作りするなら野菜も摂りたいからね」
前にレイシオが作ってくれたハンバーグも野菜がたっぷり混ぜ込まれていた。それでいてちゃんとお肉感もあって、大満足だったのを覚えている。
「焼くと高さが出て挟みにくいんじゃないかい?」
「あれ、料理しないのによく知ってるね。そこは一工夫するんだよ」
トパーズは粘りが出た種を摘まんで、空気を抜いて小さめに丸めた。それをくっつき防止のシートを敷いた金属のバットに並べてから、ぺたんこに潰してしまう。
「すぐ火が通るように薄ーく伸ばして冷凍するの。で、凍ったまま強火で一気に焼く」
「なるほど」
目分量で無造作に作っているようで、パティ一枚一枚の大きさが大体揃っている。レイシオもそうだけど、普段から料理をする人間は軽量センサーが磨かれるんだろうか。
伸ばしたパティを急速冷凍庫に任せている間に、トパーズは他の具の準備だ。ソースを作り終えたレイシオは鉄板を温め始めた。
「スクランブルエッグと目玉焼き、どちらにする?」
「とろとろのスクランブルエッグがいいです!」
「異議なし」
「月見はいいの?」
「僕が食べたいのは限定バーガーだよ。手作りだから、一点物だろ?」
アベンチュリンとトパーズのリクエストが揃ったので、大量の卵がボウルに割られていく。コンコンパカッとテンポよく進む作業に見惚れていると、横から腕を肘でつつかれた。
「あーん」
言われて思わず開けた口に、ピクルスの切れ端が放り込まれる。
「どうかな、いける?」
「いけるいける」
レイシオの方を指さしたトパーズに頷く。大丈夫、レイシオも好きな味だよ。
トッピングの具材たちを鉄板の横に並べる。アベンチュリンをその前に立たせて、トパーズは冷凍庫からパティを取り出した。握った金属のヘラをペンのように軽々と回す。レイシオはチラリとその手元に目をやって、焼いている玉子に目を戻した。
「お肉焼きまーす」
アベンチュリンは指示通りバンズを鉄板に乗せて、切り口に軽く焼き目を付ける。三枚の皿にそれぞれ紙を敷いてバンズの下半分を置き、レイシオが調合したソースを軽く塗る。トパーズが焼き上がったパティを乗せ、その上にアベンチュリンがトッピングを積んで、レイシオがスクランブルエッグを添える。追加でソースをかけたら、バンズの上半分で蓋をして紙で包む。
「完成ー! 実食しましょ」
調理台の下の冷蔵庫からトパーズが取り出したのは、缶ビールだった。
「僕は
……
」
家には着替えと仮眠をしに戻るだけでまた仕事をするから飲まない。断ろうとしたアベンチュリンに被せて、トパーズがレイシオに向かって言った。
「教授はこの後もお仕事でしたっけ。残念ですね」
カシュ、と缶の口を切って炭酸が抜ける音を聞かせながら言う極悪さを、レイシオは鼻で笑った。
「今日の分は明日に変更した。なんの支障もない」
「さすが~。これができる男だよ、アベンチュリン総監。仕事は詰め込めばいいってものじゃないの。君ならこのくらいで酔わないでしょ」
ハイ、と手渡された缶をもう断れない。アルコール度数が気持ち低めだ。トパーズもまた、休憩したら仕事に戻る気なのだ。
「乾杯!」
缶がぶつかってカコカコッと鈍い音が鳴る。作業台の前で立ったまま、冷えたビールで喉を潤し、大きな口を開けてバーガーにかぶりつく。
「わっ、このマスタードソース万能。レシピください、教授」
「あと二種類あるよ。オーロラソースは絶対食べて」
どれも前に家で食べさせてもらったはず。だよね、とレイシオを見ると首を横に振られた。
「見た目は似ているが、これはマヨネーズとケチャップで作ったものだ」
「へえ、前のと違うんだ」
「なに、ベシャメルソースから作ったのを食べさせてもらったことあるの? 甘やかされてるね」
「そ、そうかい?」
「そうだよ。作るところを見たらわかる」
びっくりしてレイシオを見ると、また首を横に振った。
「作り置きだ。冷凍がきく」
そして、呆れたような視線をトパーズに向けた。からかわれたと気づいてアベンチュリンも顔を向けると、トパーズはビールを美味しそうに飲んでニヤッと人の悪い笑みを浮かべた。
「私たちしかいないからって油断しすぎ。まあ私なら、市販のソースで間に合わせちゃうかな」
一番に食べ終わったトパーズは、携帯端末の通知をチェックして顔を輝かせた。
「いくつか作ってジェイドさんのとこに持っていくから、残りは二人で食べてくれる? 片付けは戻ってきてやるから」
「ジェイドがこういうものを食べるの珍しいね。せっかく時間が合ったんだろ、一緒に休憩してきたらいい。片付けもやっておくよ」
「ありがとう!」
トパーズのことだから、ジェイドの好みに合わせてパティを作ったに違いない。それに、あのピクルスは彼女のお気に入りだ。ジェイドの部屋にいっとき間借りしていたアベンチュリンも知っている。
一人で手際よくバーガーを作り、トパーズは足取り軽く出ていった。
「はは、本当にフットワーク軽いなあ。また巻き込んじゃってごめんね、教授」
「いいや」
レイシオの顔が近づいてきて、アベンチュリンの口に付いたソースを舐めとった。トパーズがいなくなった途端これだ。
「君はもっと、こういう体験をした方がいい」
「野営で食事を作ることならあるよ」
「できれば仕事以外で人と関わるんだ」
たしかに、アベンチュリンにはプライベートで人と交流する時間などほとんどない。前に飲み会を知らなくて驚かれた話をしたら、レイシオも驚いていた。そういうレイシオもあんまり誘われる方じゃないだろうに。
人と交流する必要と余裕が自分にあるとはあまり思えない。でも、今日のこれが楽しかったのは間違いなくて、少しだけ人生が豊かになった気がするのも本当だ。自発的にそうすると約束はできないけれど。
「うん、そうだね」
レイシオはもう一度アベンチュリンの口元をさっと舐めて離れた。
「もう一つ入るな。食べやすいように次はオムレツにしよう。本当は、半熟はあまり得意ではないだろう」
姿勢よくヘラを手に持つ姿はなかなか様になる。チョークや本よりよっぽど武器みたいだ。
「さすがレイシオ、僕の胃の容量も好みもよくわかってる。それ、トパーズみたいに回せるかい?」
「そんなことをしたら油が飛ぶ」
やってくれないのかと思えば、鉄板の余分な油を拭き取るついでにペーパーでヘラを拭って、くるりくるりと回した。トパーズほどのキレはないものの、大きな手だからこそ動きがダイナミックで優美だ。
肉が焼けるいい音と匂いがする。レイシオの家のキッチンにいるようで気が抜けてくる。お酒より二人きりの空気に酔っていて、現在進行形で甘やかされているのがくすぐったい。
照れ隠しにビールを一口飲んで、アベンチュリンは焼いたバンズの上に先程より多めにソースを塗った。もしまた口周りを汚して舐められることになったら、今度はその舌を口の中に招いてやろうと企んで。
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