玑灵 短い散文まとめ

現在2本


鳥吸い


「へ、陛下?」
 スゥと背後から聞こえる息を吸い込む音に宣玑は羞恥で顔を赤らめた。

 事の発端はどうにもこうにも仕事が忙しすぎる事にあった。昇進したにも関わらず、人使いーー否、鳥使いの荒さには神鳥を敬う気配すら感じられなかった。
 暫くゆっくりとした時間すらとれず、盛灵渊と肌を交わす時間すらない事に苛立ちが募っていた。
 火急の任務だと呼ばれ出向いてみれば大した案件でもなく、普段であれば後進の育成に努めていたが、今日ばかりは辛抱ならなかった。
 ここの所出番のなかった翼を現し、力ずくで解決すると美しい翼に見惚れる後輩たちを残し忙しなく本部へと戻る。

 いつものように服が派手に破れ背中を晒していたが、盛灵渊にさえ見られなければ宣玑は気にも止めていなかった。
 しかし神識に近付く盛灵渊の気配を感じた途端、宣玑はおさめていた筈の羽を白々しく出現させた。好きな人の前では常にかっこいい自分で居たい男心からだった。
 何日振りだろうか。職場で会えるだけで嬉しい。一目散にこちらへ向かってくる盛灵渊の気配に、彼も自分と同じように一目でも会いたかったのだろうかと自惚れすら感じてしまう。
 騒がしい脳内を戒めている内に廊下の角から当人が現れた。
 先程の事件について部下へ引き継ぎを行いながら、宣玑の意識は全て背後の男に向かっていた。
 盛灵渊はふと宣玑の背後へと佇むと、何を思ったのかその翼へと顔を埋め始めた。
「?!?!」
「宣部長?」
 宣玑の瞳が大きく見開かれ、硬直した様子に同僚が訝しげに声をかけた。どうやら精神系ではない彼は宣玑の大きな翼で隠れた盛灵渊の存在に気が付いていないようだった。
 スゥと息を吸い込む音が聞こえ宣玑の鼓動がみるみるうちに高鳴っていく。
 宣玑の力が具現化された翼は発現も大きさも羽根も自由自在だ。なので野鳥のように不清潔ではないが、まるで体臭を嗅がれているようで思わず頬が紅潮する。
 気もそぞろのまま雑に引き継ぎを切り上げると、背後の盛灵渊を翼に隠したまま横歩きをすると手近な空き会議室へと滑り込んだ。

「へ、陛下!いきなり何するんだ!」
「うん?久しく会っていなかったからな」
 それはいきなり匂いを嗅ぐ理由になっていない!どこか夢心地のような様子で未だ宣玑の翼へと顔を埋める盛灵渊はうっとりと話を続けた。
鳥飼いの話を聞いたのだが、一般的に鳥吸いをすると精神が統一されるそうだ」
「一体どこでなんの知識を得て来たんだ
 宣玑は頭を抱えながら、背にかかる温かい吐息にぞくりと腰が重くなるのを感じた。
「で、陛下の感想は?」
「悪くない
 まるで情事の最中のような恍惚とした声を漏らされ、宣玑は我慢出来ずに勢いよく背後へと振り向くと蕩けた表情の盛灵渊の顎を掴み荒々しく口付けた。
「ん………
………は、灵渊……
 腕の中の男をきつく抱きしめ角度を変え何度もその唇を貪った。薄い唇を喰み舌を差し込むと、自身より体温の低い口腔が宣玑の舌を迎え入れる。
「ンン……っ、は」
 歯列をなぞり上顎を擦るとびくりと震え、鼻にかかった甘い声が漏れ聞こえた。
 それに気を良くした宣玑はさらに口付けを深くし、盛灵渊の舌を絡めとる。ちゅくちゅくと会議室に淫らな水音が響き、2人の興奮をさらに煽っていく。
「ん………は、」
 快感に震える手のひらはいつの間にか宣玑の背へと回り、柔らかな翼を撫で上げる。その感覚にぞくりと背筋が粟立ち、宣玑は堪らず盛灵渊の白い首筋へと噛み付いた。
「っ……こら、小玑
……
 赤く歯型がついた首筋をひと舐めすると、猛った股間を押し付ける。途端、盛灵渊はぴくりと片眉をあげると腰を引き、黒い霧が宣玑を拘束する。
「んえ、何……?」
「職場で盛るな」
 唾液で濡れた唇を手の甲で拭うと、盛灵渊は宣玑の膨らんだ下肢を見下ろした。
「落ち着いたら出てこい」
 そう無慈悲に言い捨てると、盛灵渊は会議室を出て行った。
「ええ……?」
 理不尽過ぎる!!
 先に煽ったのはそっちだろ!と宣玑の悲痛な叫びは締められた扉に消えて行った。

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