保科
2025-04-14 00:04:01
1952文字
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ドクターとケルシー

これは昔ぽちぽち打ったアークナイツのやつ

「ドクター、その……今通信として使える帯域が、この辺りの住人が一般に使用している、機密性に欠けるものしかなく……
困り果てた様子のオペレーターの言葉に、ドクターは思案の後。
……私が、通信をしても?」
「!え、ええ、構いませんが……
「ありがとう」
縋る視線に頷くと、咳払いを一つ。







ロドスが、とある住居の一室に構えるシェルターにて。突然、部屋の無線レシーバーがけたたましく鳴り響く。一般回線での連絡の音に、部屋のオペレーター達が当惑したように顔を見合わせる。本来、この部屋にかかってくる電話など、ありはしないはずだからだ。
『やあ、ハニー、ハニー、居るかい?』
オペレーターの一人のタブレット端末が、傍受した音声を再生する。ノイズ混じりの音の中、甘くハスキーな声が囁く。
ハニー、というずいぶん呑気な単語。………いや、そもそも一体誰なんだこれ。
……なあにダーリン?」
だが、そんな動揺の中、誰よりも先にレシーバーを取ったのは。
「ケェッ………!?」
動揺したオペレーターの口を、隣の同僚が無理やり塞ぐ。――ケルシー。
『ハニー、よかった!遅くなって済まない!気付いてくれて助かったよ!』
「気にしないでダーリン、あたしも会いたかったもの♪」
何一つ会いたくなさそうな表情で、甘えながら吐き捨てる矛盾の様相。悍ましいものを見る心地でオペレーター達は一歩後ずさる。
隣室の会議が終わったのか、そろ、と顔を覗かせたアーミヤが、場の混沌とした状況にぎょっとする。
「(……あの、これ、何が……?)」
「(すみません、俺達にもさっぱりで……)」
『ああ、ルシア、君に頼まれた果実は無事に確保できたよ。3個で良かったね?
いやぁ、家族が喜んでくれると思ったらついつい娘の分まで買ってしまったよ!6番街の品揃えは実に良いね!』
「全く、無駄遣いが過ぎるわよあなたってば……でも、仕方ないわね♡」
瞳のハイライトを失ったケルシーの手が動く。
何かメモを取っている。いち早く気づいたアーミヤが一歩前に出て、
「アミー、ほら、パパよ!なにか伝えたいことはある?」
「ぅえっ!?」
アドリブを振られた。周りのオペレーターが固唾をのんで見守る。
「え、あ……これ……
は、となにかに気づいた様子で。アーミヤは、おそるおそる、レシーバーを受け取った。
……、パパ!えへへ……無事に帰ってきてね!」
――アミー!はは、勿論だとも!羽獣たちとちゃんと仲良く出来ているかい?』
……勿論よ!みんな元気で困っちゃうくらい!えっと……そう!明日は一緒に2番街に行くんだもん、早く帰ってきてね!」
『勿論だよ、私の宝物。ではそろそろ切るとしよう、ハニー、あとは頼んだよ!』
「ええダーリン、帰りを待っているわ!」
ケルシーがそう占めると、無線が沈黙して――凍りついた空気が僅かに溶け出すと同時に――顔を真っ赤にしたアーミヤがへたり込んだ。
「い、いきなり何をさせるんですかケルシー先生……!?む、娘って……!」
ケルシーはアーミヤの抗議の視線に、つい、と目を逸らした。
「私だけがこの不名誉を被る事実が受け入れられなかったのでな」
「ええっ!?」
「(八つ当たりだ……)」
「(結構ノリノリだったのに……)」
「何かな」
ケルシーは、オペレーターの物言いたげな視線に一つ睨みを利かせると、
「向こうの現在地は6番ゲートの辺りだろう。
今から2番ゲートに向かうとなると……およそ30分というところか。急ぎ我々も出立する」――続けて矢継ぎ早な指示。
「今のあんな会話でよく……
唖然としたオペレーターに、ケルシーは努めて澄ました様子で応じた。
「これ位拾えなくては、とてもではないが割に合わない。ああ、弾薬も不足しているらしい、補充分はあるか?」
……うう、確認します……
程なく、呻きながらへとへとで歩き出すアーミヤへ、なんとも言えない同情的な視線が、オペレーター達からそそがれた。
巻き込まれて雑にあしらわれ、一番割に合わなかっただろうCEOに、良いことがありますように、と。
そして――彼らは首を傾げる。そもそも、あの割れに割れた声の主は、一体誰だったのだろう?と。
「なあ……
「ああ……
……あんなシラクーザの劇もかくやのオペレーター、向こうのチームに居たか?」


………
「ど、ドクター、あの、今のは……
「2番ゲートに別働隊が向かってる」
「へ?……あ」
「私達も急ぎ向かおう」
「は、はいっ!皆に伝えてきます!」
……
「ドクター?他に何か」
……妻と娘ができてしまった」
……ええと、それは……おめでとうございます?」
「うん」
「(心なしか嬉しそうだ……)」