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保科
2025-04-13 22:27:20
2023文字
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ひびちか
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王道
お題
トライテンに庇われるチカちゃん
「あのさ、オッサン、団子買わないならとっととどっか行けって
……
」
「そんなつれないこと言うなよ嬢ちゃん、な?買ってやる団子、増やしてやっからよ〜」
――
いきなりイカれた原色カラーの長崎くんだりで目が覚めて。タイムスリップで異世界転生物か、と絶望しながら路頭に迷っていたところをワニワニ言ってるサメに拾われ、名物でも何でもない団子売りをさせられている
――
などと振り返れば、夢でももう少し秩序がありそうだけど。
そんな現実を現実として受け入れるべく。日銭を稼ぐため、仕方なく名物偽証団子を売りはじめて
……
その矢先の出来事。
酒でも飲んでいるのか、顔色も呂律も怪しいオッサンが店の前にずっと居座っており、大迷惑だった。
着物を着た人間は、ここでは珍しいものではないし、普通の客ってんならまあ会話の一つくらい相手してやってもいいんだが
――
嫌気が差してきた。
思えば、アーネンエルベは喫茶店らしい雰囲気も相まってか、素行の悪い客の来店は少なかった。
……
まあ、それ以上にいろいろ正体やらが不審な客が多かったわけだけども。どっちがマシなんだか。
「な、嬢ちゃんはどうだい?どうせ暇してんだろ?俺と団子でも一緒に食べながらよ〜、粋な時間でも過ごそうや、な?」
「(
――
……
どーすっかなぁ
……
)」
ワニのやつを呼んでくるか。でなければ、そろそろ抑えきれず拳の一つでも出そうだった。目覚めた時に拾ったスマホはやかましすぎるので漬物石で店の裏に固定しているし、助力は見込めない。
そんな事をつらつら考えて、相槌すらもやめた私が気に食わないのか。オッサンはピクリと眉を上げると、いいか!と突然声を荒げる。
「なんならな!嬢ちゃんをお買い上げでも俺ァいいんだぜ?端女なら大した金でもねえだろ!
だがなあ、俺は、優しいから自由意志ってやつを尊重してやってるんだ、オイ、分かるか?な!?」
唾飛ばしながら喋るな気持ち悪い。聞き流していたせいで言ってることが良く分からなかったこともあり、私は半眼でオッサンを睥睨する。
「
……
はぁ?あのさ、さっきから何を言って、」
「
――
だめだよ。
チカちゃんは、あげない」
突然、後ろから掴まれた肩を、強くそちらに引き寄せられる。傾いた体ごと抱き留められて、うえ、とつぶれた声が出た。
顔を上げれば。隣、険しい顔のひびきが、オッサンのことを不機嫌そうに睨みつけている。部分的に白く輝く髪は、トライテンに切り替わっているのか。
……
いやなんで?
「うお、な、なんだお前!どっから」
「僕のだから。
今すぐ、帰って。次来たら、ワニの兵士の人に通報するよ」
「
……
、ちっ
……
!なんだ、白くて気味の悪い
……
」
その剣幕にたじろいたオッサンが、ブツブツ文句を言いながら店を後にする。突然の出来事に身動ぎもできず、呆けたままその背を見送っていれば。ぱ、と手が離される。
「
……
あ、ごめんね、チカちゃん。
引っ張っちゃった」
「
――
あ、ああ、それは別に」
立ち上がる私から一歩下がったひびきは、真顔のまま私の事をじっと見て。
「うん、大丈夫そう」
こくん、と頷くと。瞬きの内に、髪色が一瞬でオレンジに戻った。
にこり、笑う顔はいつものひびきのそれだ。「たはー、ごめんね!買い出ししてたら遅くなっちゃった。その
……
大丈夫だった?」
「大丈夫
……
では、まあ、あるな。
絡まれてただけだし」
私が戸惑いつつも答えれば、ひびきは安堵した様子で胸を撫で下ろした。
「そっか、よかったあ。びっくりしたよう
……
。あ、もしかして、こういうお店のトラブルは親方さんに来てもらったほうが良かったかも
……
?」
しまったなあ、と顔を顰めるひびきに、私は何から言うべきか迷って。
「
……
なあ、お前、なんで変身してたんだ?」
「え」
私の指摘に、ぽかん、と戸惑った顔のひびきが首を傾げる。
「
……
それは。チカちゃんが、危なそうだから、急ごうと思って
……
」
「いや、そんな切羽詰まった状況でもなかっただろ
――
」
「そ、そんなことないよ!」
「
―――
」
急な大声に驚いた。むう、と頬を膨らませたひびきが、大げさなくらいにアピールする。
「絶対危なかったもん、チカちゃん!あのおじさん、なんかよくない雰囲気だったし
……
!」
「そ、そうか
……
?」
「そうだよ!もー
……
チカちゃんの無自覚さん
……
」
しょんぼりした顔でため息をつくと。咳払いを一つ、ひびきはあのね!と指を立てる。
「危ない時は、ちゃんと周りの人に助けてって言わなきゃ駄目だよ?
わかりましたか、チカちゃん!」
「
――
わ、分かった。ありがとう
……
」
「
……
むう」
こくこく、と頷く私に、なんとなく信頼が置けないらしくじっとりと見てくるひびき。迷惑をかけてしまった気まずさに、つい視線をそらしつつ。
「
………
」
――
『僕のだから』
……
脳裏に引っかかった言葉を反芻して、いや聞き間違いだろうと頭を振った。いくらなんでも。
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