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つきのせ さぶろく
2025-04-08 17:47:11
1063文字
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リアライズ
【よそ探SS】人様のVOIDほいちくんのSS【ネタバレ有り】
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君が紅茶のカップをソーサーに乗せた時の音がやけに耳に残った。決して乱暴ではなく、かと言って音が無いわけではない、耳に障らない非常に上品な音だった。食堂で聞こえる食器の音にはただの雑音という印象しかないのに、君と紅茶を嗜む日曜日の午後は、宝石の生み出すプリズムに近い輝きを内包していた。
「いい香りですね」
午後の日差しが、君の頬を艶めかせている。アンドロイドの血液が青色だなんて、今でも信じられない。
「
……
そうだな」
「これがバラの香り、甘くて口の中に残ります! 蝶や蜂が花に集まるのも納得ですね」
強化プラスチックの瞳が、今はイエロー・ダイアモンドに見えた。この瞳が美しいままであって欲しいと、どこか心の片隅がくすぐられるような感覚と共に、じっと君の表情を観察してしまう。君は宝石を携えた繊細な蝶のようなものなのだろうか。ひらひらと舞う羽は、視線をつかまえて離さない。
「詩苑?」
「ああ、すまない。気が抜けて
……
」
一呼吸置いてしまった返答が、不信を与えていないだろうか。詩苑はこわばった手で慎重にティーカップを置いた。
「こんなに穏やかな午後は、
……
久しぶりだ」
セイが2回まばたきをして、両手で静かにカップを置く。二人のティーカップが所定の位置に正しく戻った。ゴールドのふちどりが日差しのきらめきを保存している。波打つ紅茶の底には、溶け残った砂糖が沈んでいた。
「最近少し忙しかったですから、今日は休憩の日ですね」
そんな日があっていい。肯定の相槌と共に、詩苑はティースプーンで紅茶の湖をかき混ぜる。そこに沈んでいた砂糖がくるくると舞い踊って透明になっていく。異例の若さで刑事となって、怒涛の日々が過ぎ去って。気がつけば1年はとっくにすぎていた。年上の後輩が入ってくるばかりでいまだに署内に居場所がないように思えてしまうが、父をあの姿にしたこと、セイがここにいること、明確に変わった己の心の内は自己の確立には十分すぎる要素ばかりだ。たとえ居場所がなかったとしても、刑事として立ち続ける理由があるのだから。
「
……
セイ」
「はい! なんですか?」
「ありがとう、隣にいてくれて」
窓辺で小鳥が飛び立った。揺れる木漏れ日が部屋に小さなかがやきを撒いている。それを日向の種とするなら、小さな種は心に落ちて、ゆっくりと芽生えていくだろう。
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