保科
2025-04-07 00:08:25
1147文字
Public まほ箱系(オールキャラ)
 

ランサーとトライテン

うわ!あるわけないだろこんなの!
※なんか街でトラブルが起きてるらしいぜ〜という前提での話

お題
掲題通り

「えっと。それで、ご要件ってなんですか?ランサーさ――
「悪いが、動くなよ」
―――
アーネンエルベの裏路地にて。ひびきの首に、何気ない動作で槍先が向けられた。禍々しい気配をまとった真紅の槍の圧、軋むような緊張に喉が鳴る。後数ミリずれれば、この刃が、容赦なく首を刺し貫くと理解する。指先を僅かに動かすより、遥かに速く、「死」が訪れる。

――非常事態。
瞬きのうちにトライテンに変わったひびきは、そのままの体勢で、真っ直ぐ正面――この槍の使い手たる、青髪の青年を見遣る。
ランサー。『ひびき』と同じ、喫茶店のアルバイト。それ以上は何も知らない。
「へえ。なんだ、そっちのがらしいじゃねえの」
………いきなり乱暴だね、ランサーさん」
「だから悪いっつってんだろ。あのなぁ、オレだってこんなことしたかねえよ。……つーか、お前さんに何かしたって緑にバレたら、何言われるか分かったもんじゃねえし」
槍を持たない手で頭を掻きつつ、ランサーは、はあ、と面倒そうにため息をつく。
「だがまあ、どうにも状況がきな臭い。
お前が犯人だとは思っちゃいないが――何も知らないとも思えねえ。
答えろ。
お前は、今起きている事件と、何か関わりを持っているか?」
鋭い眼光がトライテンを見据える。牧歌的なウェイターの制服には似合わない殺気に、頬がピリピリと震える。動じず、靡かず――それでもわずかに荒くなる呼吸を自覚しながら、トライテンは口を開く。
「今、この街で起きているとされるトラブルについて、ぼくは――日比乃ひびきは、関与していない」
「証拠は」
……特には。ただ、動機がない」
……。チ、弱いな――
落胆の声。見切りをつけられた――離脱のため全身に魔力を走らせようとして、不意に切っ先が遠ざかる。
「けど、アイツへの報告としては十分か。
付き合わせて悪かったな」
くるくる、ランサーの腕で手遊びのように長い槍が回されて――ふ、と何もなかったかのように空気に溶ける。
突如訪れた安寧に、トライテンの声に困惑が混じる。
……いいの?」
「ああいいさ、形骸的なもんだ。あそこまで脅してお前さんが違うってんなら、違うってんで良しとしようや。
――そもそもが、どこぞのクソシスターが無理に指示してきただけでな。乗り気じゃねえんだわ、こっちも」
骨折り損だったとあくびを噛み殺すランサーへ、尚も懐疑的な眼差しを送るトライテンに。若干呆れたように、大体な、とランサーは指さす。
「お前さんは、チカギの嬢ちゃん悲しませるようなことはしないんじゃねーの」
―――
それは。
……そうだね」
「な」
詫びにジュースでも奢ってやるよ、などと手を振るランサーの妙な信頼に。トライテンは、ぼんやり頬をかいた。