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も茶
2025-04-02 22:06:40
2273文字
Public
父+水
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『名』
最後まであだ名の文句を言わなかった所を見るに付けてもらえて気に入ってたんじゃないかなぁと思ったゲゲ郎の話
からの鬼太郎の名前についての妄想
ドラマCDのネタバレがあります
父+水のつもりです
「そういえば御前、人間に対して岩子と名乗っておったな?」
廃寺にて怨念という呪いで爛れボロボロになった身体を横たえていたゲゲ郎は傍で腹を撫でる岩子に顔を向けてそう声を掛けた。
岩子は治る気配のない腫れ上がった右目はそのままに左目だけでぱちくりと瞬きをした。
「ええ、そうよ。それがどうかしたの?」
「名など興味も必要性も感じてはおらなんだが、儂にもゲゲ郎という名が出来たのじゃ」
「あら、もしかして水木さんに付けてもらったの?」
嬉しそうに語る夫に岩子は口元を綻ばせて訊き返した。ゲゲ郎は軽く頷いて見せる。
「うむ。彼奴はすぐ儂をゲゲ郎と呼んで来るのじゃ。あの村で何度聞いたか解らぬ」
「そう。ふふっ良かったわね」
「
……
最初は適当な呼び方をしよってと思っていたが、呼ばれ続けると馴染むものじゃな。気に入ってしもうた」
「特別なのね」
「ああ、そうじゃ。儂と水木の友の証しの一つじゃ」
懐かしむように目を細め、思い出の中で自身を呼ぶ水木を思い浮かべた。友に想いを馳せて居れば何処からか「ゲゲ郎!」と聞こえて来そうな気がした。
「素敵ね。私も水木さんともっとお話したいわ」
「あの時は話せる状況ではなかったからのぅ」
「ええ」
しみじみとあの時の事を思い出す。激戦だった。精一杯戦った。そして友に家族を託したのだ。
本当に生きて帰れたのが奇跡だった。友とまた会おうと約束をした。だから帰る気概はあったがあれ程凝縮された怨念を身に浴び、生きて帰れるとは思わなかった。これならあの時の、墓場の酒盛りでした約束も果たせるかもしれないとゲゲ郎は思った。
「なぁ御前、これは提案なんじゃが
……
」
「なぁに?」
おずおずと話し出したゲゲ郎に岩子は優しく訊き返す。きっと妻も賛同してくれるだろうとゲゲ郎は意を決して口を開いた。
「産まれてくる子に名を付けんか?水木に我が子が産まれたら抱いてくれと約束したんじゃ。その時に呼べる名があると水木はきっとたくさん呼んでくれる筈。我が子にも名を呼んでもらえる温かさを知って欲しい」
「! ええ、それはとても良い提案だわ。男の子と女の子どちらが産まれても良いようにどちらの名前も考えましょう」
「そうじゃな!嗚呼、産まれて来るのが待ち遠しいのぉ」
岩子の言葉にぱぁっと明るい顔になりにこにこと笑顔を浮かべたゲゲ郎は手を伸ばして腹の中で未だに揺蕩う我が子を腹の上から撫でた。
◇◇◇
「鬼太郎ー?どこだ鬼太郎」
「あい」
「ああ、そこに居たのか」
昼食の時間だった。鬼太郎を呼びに来た水木は押し入れに隠れていた鬼太郎を見付けて安心した顔をした。
見た目一歳くらいの鬼太郎はまだ小さいがそれ以上の年月は生きている。年齢に身体が追い付いていないだけで洞察力は高く頭も賢いので押し入れを開けるなんて造作もなかった。
「かくれんぼでもしてたのか?」
「ん!」
「水木が探しに来てくれるのを今か今かと待っておったぞ」
両手を差し出し抱っこを強請る鬼太郎の髪の間から目玉おやじが頭、ではなく目玉を出す。水木はむず痒そうに笑みを浮かべると鬼太郎を抱きかかえた。
「親父さんとじゃなくて俺としてたのか。居ないから少し心配したぞ」
「おとー」
「ははっどうした?鬼太郎」
ぎゅーっと首に抱きついて頬と頬をくっ付けて来る鬼太郎に思わずふにゃりと破顔する。珍しく甘えただ。その様子を間近で見ていた目玉おやじも笑顔になった。
「愛いのう。水木のお陰で鬼太郎のこの様な顔が何度も見れて幸せじゃ」
「なんだよ急に」
「改めて思ったのじゃ。感謝するぞ水木」
「止せよ、今更」
照れた様子の水木はふいっと顔を背けたがすぐに目玉おやじの方へ向き直り困ったように笑って口を開いた。
「それに俺だって鬼太郎に救われてる。感謝してるんだ。最初はどうなる事かと思ったがな」
そう言って鬼太郎の頭を優しく撫でれば鬼太郎は嬉しそうに笑う。目玉おやじは一つ頷いた。
「そうか
……
。こんな身体で不甲斐ない父親じゃがお主が頼りじゃ。これからも鬼太郎の事をよろしく頼む」
「当たり前だ。乗りかかった船、今更降りれるかよ」
「頼もしいのぅ。長い付き合いになる。儂の分も鬼太郎の名を呼んでやってくれ、水木よ」
「? そりゃまぁ日常生活送るなら名前は呼ぶが
……
目玉だって同じように呼ぶだろ」
「そうじゃが、そうではのうて」
「ん?」
「
……
鬼太郎が呼ばれるのを嬉しがるのでな。呼んでやっておくれ」
水木が付けた『ゲゲ郎』と言う名が呼ばれなくなって久しい。しかしあの村での事を覚えていない水木にその事が言える訳もないゲゲ郎は内心寂しく思いながらも濁す事にした。自分の名を呼ばない代わりに倅の名を沢山呼んで欲しいとゲゲ郎は思ったのだ。
目玉おやじの言葉に水木は不思議そうにしながらも「ああ」と頷いた。
ゲゲ郎にとってその『名』を思い出して欲しい気持ちはあれどあの凄惨な出来事を思い出す事が水木に取って良いとは到底思えなかった。戦時の夢を未だに見るくらいなのだ。思い出したらまた苦しみが増えるかもしれない。だから高望みはせず幽霊族なりにのんびりと構える事にした。
水木は覚えて居ないが再会の約束も酒を飲み交わす事も我が子を抱いて貰う事も果たされた。いつかもし、思い出してくれる日がくればきっとまた─────
……
『ゲゲ郎!』
そう呼んでくれる日が来るだろうと夢を見て。
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波箱
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