保科
2025-04-02 01:29:41
1507文字
Public まほ箱系(オールキャラ)
 

四月馬鹿

今は4/1 25:30 お願いだからかつての四月馬鹿の魚拓かテキストを下さい……………………………………………

お題
四月馬鹿

――肩をゆるく揺すられる。
「お客さーん」
……んぅ」
柔らかなハスキーボイスが、優しくあたしに呼びかける。
「大丈夫ですか?そろそろ閉店ですよ〜」
「ぅあー……ごめんじゃん……
耳馴染みがないのに、不思議と安心させる声。沈んでいた意識が、緩やかに浮上する。
……いつの間にか寝ていたらしい。須方スナオ、かなりの不覚であった。目を擦りつつ、突っ伏していた上体をなんとか起こす。
鼻をくすぐるコーヒーの香りに、一瞬ここがどこか考えて――目についた内装から、アーネンエルベであることを思い出した。そうだ。今日は、ひびきちとチカちーがバイトだと聞いて、茶化しに行こうと思って。
それで……それで?
「お疲れだったんですか?お水とか入れます?」
……あー……それ助かります……
どうしたんだっけ。纏まらない思考にモヤモヤしつつも、店員さんの提案に一も二もなく乗る。のどがからからだったから、潤したいと思っていて――ふと違和感。視線を向ける。
「分かりました!少しお待ち下さいね」
オレンジの髪をした、長身のお兄さんがハキハキと応えてくれる。白シャツに黒ベストにスラックス、ウェイターの制服を纏っているあたり、店員であることは間違いない――はずだけれど。
この喫茶店の店員にこんな人いたっけか。覚えがない。それに、前にチカちーに聞いた話だと、店員は2人を除くとあの槍使いサーヴァント以外居ない、という話だったはずだ。
「あのさ、オニーサン」
「はい?」
カウンターにあるピッチャーから水を汲みつつ、オレンジのお兄さんが返事をしてくれる。ので、あたしは何気なく聞いてみる。
「いつからここでバイトしてるじゃん?あたし、結構この店来てるけど、見覚えなくてさー」
「そうですか……?オレもそろそろ半年とかになると思うんですが――
水の入ったグラスを運んで、あたしの前に置きながら。じゃあ、自己紹介しないとですね!と、彼は明るく口にして。
「オレ、日比乃ヒビキっていいます!
今後とも宜しくお願いしますね」
――ひびきち?」
「あ、スナオくんみたいな呼び方だ!いいですよ、好きに呼んでいただいて……
……えと、あの、お客さん、大丈夫ですか?なんだか、急に顔色が悪く……
―――
――なんかひびきちが男の子になっとるがな。
何の冗談だよ、と言いたくとも、目の前のお兄さんが冗談を口にしているような素振りはなく。とはいえ、あーそうなんだーで到底信じられるような事象でもなく。他人の空似?にしても状況が状況であり。
それでも、なけなしの理性に則って。いやいやいや、と、せめてツッコミを入れようと――
――ヒビキ、こっちの片付け終わったぞ。お前、サボって何チンタラ喋ってんだよ」
「あ、チカちゃん」
「だァれがチカちゃんだチカギと呼べ。……あー、お客サン?
悪いけど、そろそろ閉店なんでお会計……おい、なんでそんな化け物見たような面で俺のことを見る?」
オレンジのお兄さんと同じ制服を着た、目つきの悪い緑髪の男の子がぎょっとしたようにあたしを見る。
決定的だった。あまりにも決定的な状況に、口元がわなわなと震える。
………ひ、」
「ひ?」
「ひびちか共が男になっとるがな!?!?」
あたしの半泣きの絶叫に、オレンジのお兄さん――ひびきちが首を傾げ、緑の男の子――チカちーがなんだコイツと言わんばかりに顔をしかめた。首を傾げたいのも顔をしかめたいのもあたしの方だった。
アーネンエルベ、宝石翁の作りし魔法使いの匣。司りしは第二魔法――かつて習ったそんな与太じみた現実を、あたしは虚ろな頭のどこかで思い出す。