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影喰い
2025-03-30 22:11:22
2301文字
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伊剣ワンドロワンライお題「落椿」
以前から呟いたネタからの先行ものです。
人を選ぶ内容なので、必ず1ページ目の注意事項を確認する上で読んでください。
1
2
3
剣戟の最中にゆっくりと、戦場の中心を目指して歩いている。視線の先にいる男が無駄もない動きで攻撃を受け流し、正確に急所を斬る。戦闘は数秒間に終わるもの
――
男の周りにいる、敵だったモノたちは次々とその場で崩れ落ちる。
人形からどろみを、身体ときれいに斬られた首から血液ではなく、黒い泥を勢よく断面に吹き出して、男の着物を汚す。それらを浴びるひとが服にこびりついたものをか構いなく、ただ地面にあるモノを見下ろした。そこにあったはずの首は一つ一つ、いつの間にかくすんだ赤の椿に変わる。
あえて、呆れた口調で目の前の光景に一言をもらした。
「良い趣味が出来ているな、宮本伊織」
言の葉を反応して、こちらに振り向ける男は姿を視認した同時にビクリと動きを止めた。青い瞳には狂気と、隠しきれない驚愕の色が滲んでいる。
何故、と口の形だけ伝える。
「こんな人形と遊ぶより、私の方がよっぽど良い。きみなら一番理解しているだろう?」
先程の敵はいい、落とされた椿を、地面に赤一色を彼方まで染めていく。どれだけ斬ったのか、どれほどそれを続けるのか。考えてみれば気が遠くなってしまいそうだ。
揶揄う音色と余裕の振りをして、彼の顔を見ると解る。かの余分は、まだこの男の中でまるごと捨てたわけではない。
――
さもなくば、今の彼には喜ぶの色が出てきて、こちらに斬りかかるのだろう。
「もう俺の手で、斬ったはずだ」
「ああ、そういうことがあったな。だがなあ」
一歩ずつ、伊織がいる場所へ進む。歩く度に置いかれた椿をくしゃりと潰してしまった。噎せ返る腐った匂いが漂っていて、椿たちは遠くから佇んでいた空想の木から落ちた果実を彷彿させる。
其処は地獄には非ず。ただ一人の愚かな男を、歪んだ願いを成就させるための箱庭。
「私とて、きみとの
愛
ころ
し合いはまだ足りぬ」
そう言いつつ、白玉に似てる指が男の視線を誘導し、平らかな胸板から腹へとなぞる。
「きみに貫いた感触をまだ覚えてるぞ?その熱く、鋭い剣を仮初の臓腑の中で掻き回した感じはどうだ?」
「
……
っ、」
「でも残念だったな。サーヴァントは所詮常世の影法師、その身体は現世に長く留まることが叶わない」
だからもう一度こうして帰ってきたと、うっとりする顔で男に告げる。
「おまえ、は、セイバーじゃ、ない」
「うむ。今はアサシン、と云うべきか」
白い指はまた下へ行く。
「それとも、今回は別の形で愛で欲しいのか」
艶めかしい笑顔をしながら、花弁のような裾を軽くかき分け、細い足を見せつける。
「きみが望むなら、その腹の上で踊っても構わんぞ。ひとの肉の味、もう知ってから忘れはしないよな」
ここまでやれば冷静に居られる男は殆どいないが、彼は別の原因でどうしても呼吸を乱れている。
「おまえ、は、おまえを」
刹那、空から落ちる
――
もとい、こちらを狙って投下する人間より高く、大きな「種」が、地面に深く突き刺さった。やがて種の外殻は破って、人間性の形、サーヴァントの形、人ならざるモノの形を変わっていく。息を飲む音をした彼が、それらに反応して二刀を構え、異形たちを次から次へと首を跳ねる。
鬼はもう血の匂いを識ったせいなのか。頭の中でこれはもう、元に戻らないと囁いた。
「
……
邪魔者か。私から狙いを取るな」
作り笑顔から一瞬無表情になって、足に備えた短刀を手に取る。凄まじい速さでモノの喉を断ち切って、ここに葬るべき花を増やす一方、穢れた液体はまた二人の服を汚した。
「種」を一掃した後、伊織から自ら距離を取る。形のいい眉は気に食わないの弧を描く。
「
……
、退け、」
「きみが望んだ強き者だぞ?今更何か不満か」
其方から一向に戦う気はない。怯えるより信じられない、認めたくない顔にして返ってくる。
「はあ。仕方あるまい」
最初から穏便に済ませる選択肢はなかった。それを解ったくせに、安らぎを彼に与えたいと妄想している。
これなら未熟な考えを捨てるしかない。
また一歩、前に踏み出す。
幾ら穢れを染められても、白金を帯びる琥珀の輝きが決して曇りはしない。
凛とした声が箱庭の中で響く。
「我が真名、ヤマトタケル。抑止の声を応じ、災いの共犯者に裁きを下す」
彼の渇きは永久に満たされることができない。だから神や魔物を鏖殺する英雄ではなく、人間相手に殺戮を尽くしたこの霊基で再びこの地の懇願を応えた。
――
否。最初からそう願ったのかもしれない。
剣を捨てても、何もかも失っても、必ずこの手で歪んだ願いに終わらせる。
「そして、ここでたった一人の人間を
殺
あい
しに来た
――
なあ、
イオリ
」
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