【能楽鑑賞】#194 特別企画公演 袴裂・武文

狂言「袴裂」 復曲能「武文」

3月特別企画公演 袴裂・武文

国立能楽堂
2025年3月28日(金)13:00開演
2025年3月29日(土)13:00開演

「天正狂言本」と古画による 狂言「袴裂」
   舅:野村又三郎
太郎冠者:奥津健太郎(28日)/野口隆行(29日)
   聟:奥津健一郎(28日)/野村信朗(29日)

復曲能[新演出]「武文」
秦武文/武文の怨霊:金井雄資
    一宮御息所:金井賢郎
      松浦某:宝生欣哉
       舟人:大日方寛
       舵取:野村萬斎
    船宿の亭主:深田博治
      火付け:高野和憲、内藤連、中村修一

 笛:一噌幸弘
小鼓:鵜澤洋太郎
大鼓:安福光雄
太鼓:金春惣右衛門


*・*・*


以前、復曲能「武文」の事前講座に行きましたが、その後、無事チケットを2日分ゲットできましたので、観能して参りました。

事前講座に加えて、先週の定例公演「名取川」を拝見した時に購入したパンフには、「武文」の全ての台詞と詞章も載っており、事前に全貌を予習出来たのと、当日のプレトークにも参加させて頂いたので、万全の体勢で観能した結果、字幕を見なくてもしっかりと楽しむことが出来ました。

てか、ホントに能では珍しい科白劇でね、狂言方も5人も居るから基本的に聴き取りやすかった。シテ、ワキ、狂言方の役割も明確で、話のテンポも良く、これぞ、眠くならない能だ!と思いました。

なので、特別企画じゃなくても、初心者向け公演としても、定期的に演っても良いんじゃないかなーと思いました。せっかく、これだけ良い役者が揃っているんですから😁

宝生流は、この復曲能に関わるまではお堅い流派と言われたらしいですが、今では夜能や漫画とコラボしたり、柔軟性がある流派だと思いますので、是非、今回の「武文」も、今後に活かして欲しいですね。



狂言「袴裂」

予定より早く聳入りにやって来た智。舅はあいにく準備が整わず袴がありません。仕方なく太郎冠者の袴を借りて面会します。舅と太郎冠者は交替で袴を穿いて応対しますが、とうとう二人一緒に出てくるよう言われてしまい・・・。袴は一枚、人間は二人。はたしてうまく切り抜けられるのでしょうか。

現存する最古の狂言台本「天正狂言本」のみに伝わる「はかまさき〈袴裂〉」は、現行狂言「二人袴」の古形と考えられていますが、大まかな粗筋しか書かれていません。本作は、江戸時代の狂言絵を参照しつつ、 新たな解釈も加え、二○二○(令和二)年に国立能楽堂にて復曲初演されました。


相手の都合も考えずに、面会の予定を勝手に一日早めてしまった聟殿。そのせいで舅側はてんやわんやに🤣

「二人袴」の立場を逆転した話だが、どちらが袴を履くか争ううちに引き裂かれてしまう型は、二人袴では大蔵流で見れます。しかも今回は完全に分離せず、片側だけ繋がっている状態で、舅と太郎冠者は二人三脚状態になるので難易度が高まり、これだけでもだいぶおかしな展開に🤣

連れ舞を強制させられると、太郎冠者は舅の動きに合わせなければならず、大変な体勢になるのだが、それが可笑しくて可笑しくて🤣(バレエみたいな、つま先立ちの動きも面白かった🤣)

ということで、二人袴は見慣れておりますが、立場が逆転したことで、かなり新鮮な気持ちで観れました。二人袴の対になる狂言として常設しても良いのでは?アポ無し訪問はやめようね、という教訓にもなるし🤣


ちなみに初日の着流し姿の又三郎さんは、着物の色柄的に朝ドラのお父さん感があって、とても良かったです🤭(二日目は茶色のシンプルな着流しでした)

あとアドも役者が変わるとイメージも変わるなァと。健一郎さんの聟は存在感がチャーミングで、天気が良いから今日行こう♪というノリの通り、空気の読めないやらかし感があったのですが(笑)、信朗さんの聟はとても誠実そうだから、面会の予定も良かれと思って早めた感があって、完全に事故案件だなと思いました😂

2日間とも新鮮なイメージで観れたので、両日拝見出来て良かったな、と思いました😌



復曲能「武文」

大物の浦に逗留する一宮御息所を松浦某が見初めますが、忠臣・秦武文が警護しておりなかなか近づけません。松浦は宿主と一計を案じ、夜盗の襲来に見せかけて家並みに火をかけさせます。火勢から逃げる武文は松浦が待つ船に御息所を預けてしまい、御息所は松浦に連れ去られてしまいます。計略に気づいた武文は小舟に乗って松浦を追うものの叶わず、悪霊となって松浦の船を止めようと自害し海中に沈みます。現れた武文の怨霊を鎮めるべく松浦が御息所の衣を海に投げ入れると、武文の怨霊は衣をかき抱き、松浦を海に引きずり込んで波間に消えていくのでした。

「武文」は江戸中期の記録を最後に上演が絶えていましたが、一九八七(昭和六十二)年に国立能楽堂で復曲初演されました。せりふ劇の色合いが濃く場面転換が多いなど、今日一般的に上演されている能とは一味違う魅力を湛えた作品です。この度、武文が御息所に抱く心情にクローズアップし、より劇的な新演出で上演いたします。どのような舞台が展開されるのか、古作が再び蘇る瞬間をどうぞお見逃しなく。


まず、美しい刺繍の入った白地の装束に身を包んだツレの一宮御息所を観て、ホントに美しいと思いました。そして、その美しさは外見だけでなく、内面も美しいのだろう、と感じました。それくらい白というのはピュアで気品のある色なのだと思います。

そして、彼女に続いて出てくる直面の金井雄資師が演じる武文は、チラシのお写真同様とてもカッコ良くて、誠実さと強さを感じました✨✨✨


個人的にとても楽しみにしていた、大好きな欣哉さんは、今回は珍しく悪い人の役なのですが、それでもやはり品がありました。持ち前の品の良さが、能としての品性を保っていて、どちらかというと、美人に心狂わされた一人の男と言った感じ。御息所を盗み見た時の一瞬の佇まいから、まさに一目惚れといいますか、恋に落ちた瞬間を感じ取りました(またこの時のお笛のBGMがドラマティック✨)。

事前講座の時は、どう演じるか悩んでいた様子でしたが、そう来たか!と思いました。ちなみに二日目は、少し余裕を感じました(笑)。悪人役、ちょっと板についてきた?😁


萬斎さんの舵取も、松浦と一緒に御息所略奪計画を実行する悪い人(苦笑)。初日は本狂言を演じてる時と同様にチャーミングに活き活きと演じられていたのが印象的でした。万作さんの時は、全員シテ方みたいに重く演じていたらしいので、今回は狂言方は狂言方らしく、そこに全振りしたんでしょうね🤭

でも二日目はテンションが気持〜ち少し抑えめな気がして、能の雰囲気により合わせているような印象を受けました。結果的に、狂言方らしさを出しつつも、演劇としての一体感は高まりました。

個人的には、役柄的に萬斎さんと欣哉さんが絡む場面が多かったのも良きでした。推しの二人が会話してるの観るの好きなんですよね。芸風が異なる二人が絡むことで、互いが引き立つといいますか、そこから生まれる化学反応を感じ取るのが好きと言いますか。


何気に気づけば、狂言方5人は松浦サイドの人間だったのですが(苦笑)、亭主役の深田さんもハマり役だと思ったし、火付けの3人もお馴染みのメンバーで、安心感と安定感がありました。一門の皆さんは日頃から萬斎さんを中心とした創作物に関わっているからか、万作の会のチームワークの良さを改めて感じました。良い配役でした(二日目は、火付け隊が、より活き活きしていた気がします😂)。


他にも演出面では、萬斎さんの美声の謡が聴けたり、超貴重な欣哉さんの舞が観れたり(媽祖以来では?)、とにかく寝てる暇なんて無かったッス!(笑)

でもね、ふと、御息所の方を観ると武文が切腹したと知って悲しんでるんです。御息所の気持ちは置いてけぼりなんです。そういう意味では松浦はやはり悪い人です。。。



後半、怨霊となって現れた武文ですが、ここの演出は船弁慶と通ずるものがたくさんありました。揚幕を半分だけ上げて姿を見せたり、波模様の袴だったり。他にも舵取が荒波のところで足拍子を入れる型は、船弁慶の大蔵流の船頭でも見れる型です(そういえば、萬斎さんの船弁慶の船頭さんって、まだ生では観たことないや🙄)。

しかし、船弁慶の長刀を振るう荒々しい知盛と比べると、武文は松浦への執念を感じさせつつも、どこか儚さや切なさを感じるような品のある舞に感じました。能らしい美しさを感じさせる型だったとも思います。とにかく良い動きでした。

そして、松浦が投げ入れた御息所の衣を拾い上げ、それを見つめる表情(面)はホントに切なげでグッときました🥺(ここは特にお気に入りポイントです)

衣をまるで御息所本人のように大事そうに抱えながらゆっくりと消え去る仕草を見せる武文。だけど、思い出したかのように再び、松浦の元へ引き返し、彼を海へ引きずり込む。そこに至るまで、武文と松浦は互いに何度も真剣に顔を合わせるのだけれども、その二人の無言のやり取りは、まさに一人の女性を巡って争う男たちそのもの。でも御息所が誰を想っているかは明白で、そういう意味でも松浦は武文には敵わなかった。

武文が御息所を想う感情の種類は当人にしか分からないけれど、ひとつ確かなのは、武文と御息所の間には危険な旅路を共にする、信頼と絆があったこと。そして松浦は、どう足掻いてもその絆を引き裂くことは出来なかった。

とても切ない物語でもあるのですが、悲劇を描くのが得意なのが能という芸能ですから、そういう意味でも、ピッタリな題材だと思いました。


ちなみに、二日目は最後の演出が変わりまして、初日は松浦だけが海に引きずり込まれて死ぬのに、二日目はその直前に、武文が舵取を睨みつけて、舵取が海に落ちる場面が追加されました(念力で落とされたのか、勝手にビビって落ちたのか型的に後者の方がしっくりくるか?🤔)

松浦だけを海に引きずり落とした方が、武文の松浦への執念深さが強調される気がするけど、舵取も今回の悪事に加担してますし、彼が落とされたことで、欣哉さん演じる松浦の表情も強張り、武文の念の強さに観念した様子が伺えたので面白みが増したかなと。

何より、最後に舞台上に残ってるのが御息所だけの方が、去っていく武文の背中を見つめる姿に切なさとロマンスを感じますし、終演して退場する時も、御息所一人の方が悲劇性が増して、より印象に残りました。

ということで、最後の最後まで試行錯誤されてたんだな、と。

ちなみに字幕表記がありましたけど、台詞や詞章は決定稿の後も本番直前まで試行錯誤・調整し、随時変わっていったそうです。なので、表記通りじゃないところもあるとプレトークで説明がありました。初演時を観ていないので比較できないのは残念ですが、かなりブラッシュアップされたのは伝わってきました。とてもテンポ良くまとまっていたと思います。

いやぁ~これで終わりは勿体ないですね!
また再演して欲しい。

あとメインの役者陣たちのアフタートークも欲しい!

長い期間かけて企画、制作してきたわけですから、実際に演じ終えての感想を訊いてみたいものです😌


あ、あと、事前講座の時に、萬斎さんに警戒されてたけど(笑)一噌幸弘さんのお笛、時に寄り添い、時に盛り上げ、ドラマティックで凄く良かったです!👏👏👏✨

やはりお笛が良いと雰囲気出ますよ😁


ということで、とても良いものを魅せて頂きました🙏✨

あと今回は狂言も能も復曲ものでしたが、類似する演目がある点も共通点であり、良い番組構成だったなと思います😊



復曲能「武文」事前講座の感想⬇️
https://privatter.me/page/678008fb57068

過去の観劇日記はコチラから⬇️
https://privatter.me/user/mijuppa
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