さかな
4356文字
Public かきかけ
 

『僕の』おまけ

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にくっつけたかったもの
力尽きちゃったので完成しません


 夕陽に染まるオンボロ寮の談話室にて、監督生はロッキングチェアに腰掛け1冊のノートを読んでいた。

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 1日目 xx/xx
放課後。丁度よく腹を鳴らしたところに出会したため、フロイドに押し付けられて持て余していたウツボの棒付き飴を渡す。
しかし「なんの実験ですか?」と疑われてしまった。以前フロイドに謎の魔法薬を飲まされかけたり、怪しい手作りクッキーを押し付けられたことがあるらしい。
「いらないなら僕が」と言えば慌てて食べた。大きすぎたらしく、もごもごお礼を言いながらぽこんと膨らんだ頬が間抜けだった。

 2日目 xx/xx
午後の合同授業にて、隣席になったよしみとして小さな飴をやる。今回は大袋から好きな味を選ばせてやった。りんご味。マンドラゴラ味も気にしていたためそれも渡す。
「授業までに食べきれないから」と仕舞おうとしたので「これはそんなに目立ちませんよ」と口に含んで見せれば嬉しそうに舐め始めた。
教師が来たところで噛んで飲み込めば、信じられない! という目で見てきた。彼女にとって飴は噛むものではないらしい。

 3日目 xx/xx
昼休み。マンドラゴラ味が如何に凄かったかを語られる。飴を見つけたグリムくんが勝手に食べてしまったそうで、エグ味と渋味でそれはそれは良い悲鳴をあげたらしい。ぜひ見たかった。
面白い話を聞けた対価として昨日と同じ大袋から好きな飴を2つ選ばせる。苺味とチーズ味。定番を好むわりに冒険心もある。
「これはチーズじゃなくてバター塗った石鹸味」と眉間に皺を寄せながら舐めていた。強いハーブの香りはお気に召さなかったようだ。

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 7日目 xx/xx
午前の合同授業にて。小袋に複数枚入っているタイプのクッキーに興味を示してきたが、手を取るまで時間がかかった。個包装以外はやはりまだ警戒があるようだ。
それでもこちらが数枚食べて見せれば食べ始めるのは、懐いてきているのかそれほど飢えているのか。

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 19日目 xx/xx
彼女が手から食べた!
登校前に購買部へ寄ったところで声をかけられ、息を切らしながら走って寄ってくる様子はまるきり懐いた犬だった。以前「起きてるとお腹が減るからギリギリまで寝てる」と話していたが今日は珍しく余裕を持った登校らしい。早起きのご褒美としてチョコを与えた。
寝ているグリムくんで腕が塞がっていたせいもあるだろうが、目の前に差し出せば戸惑いながらも口を開いた。
昼にもう一度試したが口を開かず、朝は判断能力が下がるようだ。理性が薄まればなんとかなるということは、随分と懐いてきているのではないだろうか。

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 24日目 xx/xx
昼休み。デザートのプリンを食べているときに目が合ったのでなんとなくスプーンを差し出してみたところ、躊躇せずに食べた。食べておいてビックリしていたので彼女としても想定外だったようだ。餌付けの効果だとしてもあまりの警戒心のなさに不安になる。
ふた口目は遠慮されたが笑いかければちゃんと口を開き、最終的には機嫌良く食べていた。

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「あの、フロイド先輩」
「んー?」
「これ……私が見ちゃ駄目なやつじゃないですか?」

 監督生が今読んでいるノートは、先ほど突然やってきたフロイドに「はい、どーぞ♡」と渡されたものだ。
 訪れたときの髪の乱れようと無駄に甘ったるい声からして、おそらくジェイドと喧嘩でもしたのだろう。土臭さに耐えかねてテラリウムを割っただの境界線をはみ出してしまって殴られただの、なにか喧嘩をするとオンボロ寮にふらりと現れのはよくあることで。ここはジェイドもよく訪れるので、喧嘩はしてもお迎えは欲しいのだろうな、と監督生は微笑ましい気持ちでいつものように迎え入れたのだ。

「ちゃんと管理してないジェイドが悪いんじゃあん」
「えぇ……

 談話室のおおきなソファーを1人で悠々使って寝そべるフロイドは、監督性の情けない声で嬉しそうにケタケタ笑うばかりだった。

「小エビちゃん、それ面白い?」
「まぁ……興味深くはあります」

 なんかよく知らないけどおやつを分けてくれるようになったな、とは思っていたのだ。てっきり餌やり体験的なものなんだと解釈しておいしく享受していたのだが、思った以上に熱が入っている。

……太らせて食べてやろう、ってこと?」

 口にしてから、つい数時間前ジェイドに“陸のお付き合い”なるものを押し付けられた記憶がよぎる。
 あれから結局予鈴が鳴るまで拘束され続け、食べかけの昼食はジェイドの膝の上で食べる羽目になったのだ。「食が進まないのでしたら僕が」とか言い始めたウツボからカトラリーだけは死守したが、乙女の外聞としては瀕死である。
 しかし、シートベルトのように胴に巻かれた腕は不埒な動きもしなかったし、物理的な被害は頭頂部に擦り寄られて髪がぐしゃぐしゃにされたくらいであった。
 もしや、陸のお付き合いとは言っても単にお気に入りのペットくらいの意味なのでは? ジャックも以前モストロラウンジの番犬にスカウトされたことがあると言っていたし……

「あの! お昼のアレって人間の飼育の間違いだったりは」
「えー、海の底のが良かったぁ?」
「すみませんでした」

 監督生の一縷の望みをかけた閃きはフロイドによって封殺されてしまった。流石にまだ陸で生きていたい。

「あのねぇ小エビちゃん」

 フロイドはゆらり起き上がりソファーから身を乗り出すようにして、もはやノートも閉じ力無く俯く監督生へ優しく諭すように語りかける。

「オレも、最初はムキになってるだけだと思ったんだけどさぁ」

 ガンッ!

「ヒッ」
「土臭い趣味は押し付けてくるくせに、小エビちゃんはそんなこと言わないんだよね」

 ドンドンドンッ

「あ、あの……玄関からすごい音するんですけど……!」
「うん。ジェイドぉ」
「なんで!」
「え〜……フロイドより先に恋人ができてしまいました〜とかウザかったから、ちょおっと冗談言っただけだもん」

 オレ悪くねぇし、とにっこり笑うフロイドと、なおも続く執拗なノック音に監督生の顔が引き攣る。

「ちなみに、なんて……?」
「じゃあオレは先にドウテイ卒業してくんね〜って」
「エッ!?!?」
「ア、ごめぇん……オレ小エビちゃんには勃たないっていうかぁ……
「なんで私が振られてるんですか??」

 フロイドと監督生がふざけたやりとりをしている間も、ノックというよりも叩き破るのではという力強い音が鳴り続け、次第にガチャガチャとノブを回す音も混じり始めている。
 流石にそろそろやばいかな、と命の危険を感じる勢いに監督生は諦めて現実を受け入れることにした。

「はぁ……フロイド先輩が出てくれません?」
「ドアぶっ壊してもいい?」
「アズール先輩に言いつけますよ」

 日が暮れてからは鍵のない訪問者は中から招かなければ入れないように学園長が防犯強化してくれているとはいえ、ドアごと壊されてしまえばおしまいである。

「ん〜〜……オニイチャンお願いって言えたら頑張ったげる♡」
「じゃあおにいちゃんお願いします!」
「やだ。もっとかわいく」
「小エビに何を求めてるんですか?」

 ばぎん

「あ、」

 席も立たずぐだぐだやっている間に、不穏な音が響く。フロイドと顔を見合わせて動けずにいれば「お邪魔します」という涼やかな声がした。
 ギ、ギ、と床の軋む音が一定のテンポで近付いてくる。

「こんにちは、監督生さん。お邪魔しております」

 談話室に入ってきたジェイドは、先ほどまでの騒音が嘘のようにいつも通りの笑顔だった。
 
「すみません、ドアを開ける際にこちら壊れてしまいまして……

 ジェイドは心底申し訳なさそうに眉を下げると、監督生へ近寄りなにかを手渡す。くすんだ銀色の、手によく馴染む丸っこい金属。捻じ切れたドアノブだ。

「わあ」
「陸のものは脆くて力加減が難しいですね」

 しょんぼり恥じらう姿はさすが人魚! 美人ですね! と言いたくなる様相だが、手のひらに落とされたドアノブのせいで台無しである。
 ジェイドは碌な反応も出来ずに固まる監督生をジッと眺め、なにかに納得をした様子で次に部屋をぐるりと見回した。

「おや、これは……フロイド?」
「あは。ごめーん」

 ローテーブルに置かれた1冊のノートに気がつき、手に取りそれが自分が書いた記録だと確かめるとフロイドを睨む。

「小エビちゃんは面白かった〜って言ってたよ」
「え!? いや全部は見てないですよ? ちょっと、パラパラ〜くらいで……
「そうなんですか?」
「ほんとに!」

 監督生は怒られては敵わないと慌てるが、ジェイドの反応は案外おとなしいものであった。
 頬に手を当て、ほぅ……と悩ましげにため息を吐く。

「書きかけのラブレターを見られてしまった気持ちです」
……あれが?」

 観察日記と言われた方がまだ納得できる、あれが?
 監督生が訝しげに首を傾げていたら、フロイドがにやにやしながら教えてくれた。

「ジェイドはねぇ、小エビちゃんに大好き〜って言って欲しいんだって」
「えぇ……? あ、でも前お裾分けくださったギュッとしたチョコはかなり好きでしたよ」
「いつのものですか?」
「え」
「いつの、どのような?」

 ぐいぐいくるジェイド
 こわ、なに?

「先週の……なんか、ドライフルーツとかビスケットとか色々入ったやつです」
「チョコレートサラミですね。行動食に使えるかも、とトレイさんに教えていただいたんですよ」
「トレイ先輩のおやつだったんですね! 通りで好きな味だっ…………

 笑顔からの突然の真顔、こわ。むり。たすけて。

「ジェイド顔やべ〜! ウケんね」

 なんでこの人は喜んでるんだよ。やめろ刺激しないで。うそ、無言こわいからなんか喋ってて。

「こ、今度ジェイド先輩と一緒に作りたいなー! なんて……

 えへ、と笑ってなんとかならないか祈る

……なるほど」

 なにが