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保科
2025-03-25 19:40:02
3451文字
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ひびちか
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しゅどうけん
これは罪です チーズとキムチとソーセージで出来てる
オタクくんこんな事考えながら日中過ごしてたの……?
お題
>「チカちゃん、コントロール任せた」
『
――
おい、ひびき!あの右の方の鳥狙うぞ!』
「うん
――
いや、待ってチカちゃん」
『ん?なんだよ』
「鳥がいるのは、左じゃないかな」
『
……
いや、違うだろ、ほらそこの木陰』
「
……
?違うよ、木陰のは猿じゃない?」
『だーかーら、あの4番目の羽の生えてるやつ!』
「4番目、イノシシじゃないかな。あ、3番目の鶏のこと?」
『そっから数えるんじゃなくて!木の影!』
「それは含めてるよ。だから1の、2の、3で、ほら」
『だーっそっちじゃねーって、上上!』
……
。
盾を構え直しつつ。前線が突然静まり返ったのを不審に思ったらしいマシュが、私を伺う。
「マスター?あの
……
向こうで突然シリウスさんが固まりましたが、何かあったんでしょうか?」
「なんかいちゃついてる」
「はい?」
思念を通してぼんやり聞こえる、ファミレスで間違い探しをしているみたいな会話を又聞きしてることに、何とも言えない笑いが出る。そもそも2人が言ってる鳥はコカトリスだと思うし。
あーだこーだ、ますます混沌としてきた声に、こちらから指示を飛ばしたほうが良いかもな、と思案した矢先。
『あーもう、埒が明かない!おい、ひびき!"借りる"ぞ!』
「え。あ、待ってチカちゃ
――
」
『おらー!こうしてこうしてこうして!『常夜を照らす導きの星』!!!!!』
「わ、あ、ああーーー!?」
突如、跳ねるように飛び上がったシリウスが宝具を発動しながら敵に突っ込んでいく。瞬間、辺りに広がるまばゆい煌めきと爆発に紛れて、心なしか珍しいシリウスの悲鳴も聞こえた気がしたが
――
ともかく。
その攻撃をもって、シミュレーター上の訓練は無事に終了した。
と、思われたが。
「
………
ひびきに、避けられてる」
「そうなんだ
……
」
ずん、と沈んだ顔の桂木さんが、部屋を訪ねてきたので。私は日課のレポート作成を中断の上、椅子を回して彼女に向き直る。
そんなことか、という気持ちもあれど
――
基本、悩み事を赤裸々に話す人じゃない桂木さんが、わざわざ私宛に相談を持ってくる
……
というのは、大分珍しい。
「ええ
……
どうしたの、なんかあった?喧嘩?」
「それが分かんなくて
……
ほら、一昨日、訓練?ってやつ、やったろ」
「ああ。最後桂木さんが滅茶苦茶やったやつ?」
「悪かったな!」
トドメの宝具の発動時、威力が想定をそこそこオーバーしたために、若干設備に不具合が出たのだ。シオンから2人揃って小言を言われた件をからかい混じりに引っ張り出せば、うがー!と桂木さんが吠える。
「しょうがないだろ!私だと加減できないんだって!」
「いや~失敗だったよね。ってそれは置いておいて。
それで?」
促せば、んぐ、と言葉に詰まった桂木さんが、打って変わって歯切れ悪く口にする。
「
……
その、あの後から、ひびきと目も合わないし、会話もすぐに打ち切られるというか
……
。
なんつーか、あんまりこういう態度取られたこと、なくて
……
店長、何か知らないか?」
「えー
……
?」
シミュレーター訓練以降、日比乃さんとは食堂で顔を合わせたきりだけど。その際のことを思い出しても、特におかしな様子はなかったと思う。というか、桂木さんが挙動不審ってならまだしも、日比乃さんが
……
?ナイナイ。
「ごめん。心当たり特にないし
……
取り敢えず謝ったほうが良いんじゃ
……
?」
「わ、私が悪いのか!?
……
まあ、そうなんだろうけどさあ
……
」
でも理由もなく謝るのも、と悩ましげに口にするのはなんとも生真面目というか。確かに、形骸的な謝罪では謝ったとは言えまい。
なら、と提案する。
「やっぱ本人に直接聞くしかないんじゃない。その上で謝るとして
……
私でよければ聞いてみようか?」
「お、おお
……
助かる。ありがとな。
っつーか、そういう提案聞くと、なんか店長がマスターらしいことしてるって思うわ」
「こちとら毎日頑張っとるでしょーが」
つっかかれば、冗談だよ、と、疲れたように笑う桂木さんは、用はそれだけと踵を返そうとして
――
「店長さーん、すみません!今度のお仕事についてご相談、が
――
」
「
――
、ひびき」
「え、ち、チカちゃん!?なんでっ」
瞬間、部屋に入ってきたのは、まさに日比乃ひびきその人だった。桂木さんが虚を突かれた様子で名前を口にすると、呼ばれた日比乃さんはあたふたしながら視線を泳がせる。その狼狽ぶりは嘘には見えなくて
――
どうやら、桂木さんの言葉は確からしい。
そうであるなら。私は即座に覚悟を決める。
「え、あ、ご、ごめんね!取り込み中だよね、また改めて来ます!はい!」
「日比乃さん、待った!」
「
――
うひゃう!」
私のストップコールに、部屋を飛び出そうとした日比乃さんがつんのめるように止まる。
「な、なんでしょーか
……
?」
おそるおそる、怯えたうさぎのように振り向く。ちらちらと桂木さんをうかがう様子に、桂木さんが険しい顔をするのを見つつ
――
私は心を鬼にして咳払いを一つ。
「コホン。あのさ、
……
何か桂木さんに何か嫌なこととかされたりした?」
「え?」
ぽかん、とした顔でこちらを見る日比乃さん。
桂木さんが、途端青ざめた顔で私の肩を掴む。
「おまっ、頼んだけどさあ!私の前で言うかそれ!?」
「いやだってまだるっこしいし
……
」
「さっきまでの頼もしさは何処だよ!?」
揺さぶられながら、でも先延ばしにするほうがしんどいことも多いしなあ、と私は思う。解決できることは早期解決が生きていくコツだと思う。少なくとも、今のこの状況を先延ばしにするよりよほど良い。
「嫌なこと
……
?されてないよ?」
そんな私たちの喧々囂々はさておき、一切の心当たりなし、と不思議そうに答える日比乃さんの反応に。
――
うぇ、と、半ば泣きそうな桂木さんが呟いて。たまらず、一歩詰め寄る。
「じゃ、じゃあ。
……
何で私のこと避けてるんだよ」
「
……
あ、えっと、その」
はっとした様子の日比乃さんが、落ち着かない様子で目をさまよわせる。顔を赤く、妙にもじもじと手を合わせて。
……
おっと?
これまでの話の印象とは異なる反応に、私は隣の桂木さんにそっと囁く。
「
……
あのさ、これ、私居なくなったほうがいいやつじゃない?」
「は?いや待て、この状況で私をこいつと二人きりにしてくれるな
……
!」
「
………
」
焦りが盲目にしてるのか、この桃色ムードの状況に何も気づいてないようだった。いいのかなこれ本当に私居ても。いやいいんだけどさ。いいけども。
「さ、避けてるって、いうか
……
。
その、なんだか、ドキドキしちゃって」
「
……
ドキドキ?」
桂木さんが、困惑した声で反復する。
「う
……
うん。あの
――
その、ね。
この前の訓練で、シリウスで、チカちゃんが急に宝具、発動したとき
……
」
「あー、あったねえ
……
」
戦闘の最後の方だろう。ついさっきもそれで怒られた話をしたばかりだ。
私の相槌に、こくり、と日比乃さんが小さく頷く。しどろもどろなまま、両手をなんども落ち着かない様子で捏ねている。
「あ、あの時、
……
ち、チカちゃんが、わたしの体、ぜんぶ、いきなり奪って、そ、そういうの、初めてだったから」
「
―――
」
「なんか、なんかね、全部チカちゃんのものになったみたいだなあって、思ったら、急に、恥ずかしくなっちゃって
……
それで
……
」
どんどん声も小さくなって、耳まで真っ赤にしながら縮こまる日比乃さん。普段の天真爛漫さからはかけ離れたその姿を、唖然とした顔で見る相方に、取り敢えずかける言葉が一つだけ見つかった。
「
…………………………………………
桂木さん、責任取りなよ」
「何のだよ!?」
「あ、あのね!だから!嫌とか、キライとかじゃなくてね!
あの時のこと、思い出すと何だかとっても
――
」
「分かった!分かったから!お前はもう喋るなッ!」
「んむぐ」
致命傷を避けるためか取り押さえられた日比乃さんがもごもご言っている隙に、私は忍び足でそっと部屋を抜け出す。やっぱこれ私いないほうが良いよ。
は、と目ざとく気付いた桂木さんが声を上げる。
「
――
お、おい待て店長!どこに」
「1時間後に戻りますごゆっくりー!」
背中越しの、懇願するような声に一言雑に返す。ぱしゅんと扉が閉まる瞬間、何やら罵声が聞こえた気もするけれど。
……
、うん。
私はまあ解決してよかったなあ、と頷くのであった。それ以上考えるのをやめた。
食堂行こっと。
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