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保科
2025-03-22 21:34:15
1633文字
Public
ひびちか
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信頼と親愛と重圧
ちょっと戸惑うチカちゃんの話 付き合ってないとしたら問題あるだろシリーズ これって成長パロですか!?
お題
ひびきの信頼に応えられるか不安な千鍵
「
……
おいひびき、だからソファーで寝るなって
……
」
「
…………
すぅ」
講義を終えて帰ってきた自宅。ソファーの上、心地よさそうに寝息を立てるひびきは、呼びかけに身じろぎ一つしない。何度目の注意かも分からず、ため息をつく。
――
大学に入り、彼女と暮らし始めて驚いたことの一つ。ひびきが、自宅のどこでも所構わず寝落ちることだった。ソファーだろうが床だろうが関係なく、なんなら部屋の隅でも体育座りで眠っている。
当人の意識として、ベッドで寝るのが正しいという理解はあるようだが、それが行動に結びついていない、というか。
……
正直、片付けが苦手な彼女が、これまで一人どういう場所で寝起きしていたか、ということも考えてしまう。
「
……
」
"家"で過ごす時の、ひびきのよくない癖なのだろう。それがアーネンエルベや学校では見られなかったことを考えれば、ある意味、彼女がこの部屋を自宅として認識している証拠ともいえるのだろうけれど
――
「
……
ま、それはそれだ」
それはそれ、これはこれ。ひびきがどれだけ居心地よく思ってたって、体に良くないだろうし、それにソファーはともかく床で寝られると死体と見紛った私の心臓に悪い。早めに矯正してほしい。
「おい、起きろ〜
……
」
軽く揺さぶるものの、小さく唸るばかりで目覚める様子もない。
「
…………
んにゃ〜
………
」
「
………
」
幸せそうな声に、手を止める。
……
ここで無理やり起こせないあたり、私も大概弱い。
「
……
ハァー
………
仕方ないか
………
」
諦めのため息を一つ。ひとまず寝室まで赴くと、適当なシーツを持ってソファーまで戻る。それを寒くないにうかけてやれば、ひびきはもぞもぞとシーツをつかんで引き寄せだす。
「
……
んぅ
……
」
「
…………
」
してあげられることといえばこれで終わりだけれど
――
このまま、ここを離れることを惜しいと思った。側にしゃがみ込んで、彼女の寝顔をぼんやりと眺める。
とても成人近くとは思えない程、あどけない顔で眠っている。もちもちのほっぺが、呼吸に合わせてぷうぷう動く。ぼうっと見ていれば、なんとも、耐え難い誘惑を感じた。絶対触ったら心地よい。そんなものをみすみす逃して良いのか。いや良くない
――
そうとなれば仕方ない。仕方ないのだとばかりに、私は右手を、
「
……
ちか、ちゃ
……
」
「
―――
」
――
ど、と心臓がはねた。全身が固まる。やましいことは何もないがなんかやましい気がしてならないのは何故だろうか。分からない。
極力息を殺して凝視する先の彼女は、私の気も知らず、もにもにと口元を揺らして。
「
……
んふ」
小さく微笑むと、そのまままた動かなくなる。すう、すうと寝息。
「
…………
」
ひびきが動かないことを再三確認して、ゆっくり、肩の力を抜いた。
不意打ちの名前には焦った、が。
しかしどうやら私というやつは、こいつの夢の中にも出張っているらしい。そんなんで疲れないんだろうか、と心配になる。四六時中『桂木千鍵』と一緒とか、それこそ私だって嫌になるのに。
「
……
お前なあ
……
」
つい、不安とも、期待ともつかないような声が出る。
この状況の全てがそうだった。彼女が私に抱く信頼とか、そういうものをより強く深く実感する度に。
――
間違いじゃないのか、とか、私でよかったのか、とか、何度も何度も確認したくなって、でも、ついぞできないままでいる。
分かってる。彼女がいつも本心を口にして、行動していることは。もし、疑問を口にして聞いたって、間違いじゃないと返してくれることくらい。
それでも、私の心の弱いところが、どこかにあるかもしれない誤りを、いつまでも恐れたままでいる。
「
………
、ホントさ、後悔するなよ
……
」
最後、口からこぼれた負け惜しみみたいな言葉に、我ながら笑ってしまう。そう
――
負け惜しみで、祈りだ、これは。
どうか、今日という日を。この先の未来を、間違いでないと、あなたと言えますように。
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