さかな
3230文字
Public CPなし監
 

ネジを失くした監督生

異世界にきて全部なくなって、ついでにネジもどっかいった女監督生(男子制服の姿)

pixiv投稿 2024年12月2日



「で? 今度はなにやったの?」

特別個人面談の翌日、昼の大食堂にて。
昨日はあれから散々説教され、今朝のホームルームでは課題図書としてジュニアハイスクール向けの道徳の教科書と法律入門『人権ってなぁに?』が手渡された。もちろんクラスメイト全員に見られていたし、その場は濁したが昼休みに入った途端両脇をエーデュースに掴まれたのだ。
連行された腹いせに頼んだハンバーグを見せびらかしながら、今朝渡されたものを説明する。

「子分もトレインの補習一緒に受けるのか?」
「えっ、監督生もグリム並みだったのか……?」
「違う違う! ちょっとすれ違いがあっただけだってば!」

監督生がクルーウェルとお茶している間、グリムはトレインとルチウスに道徳教育されている。野生の魔獣が人間社会に馴染むため、キンダーガーデンレベルから始まり、最近はエレメンタリースクールの教科書を貰ったと威張っていた。流石の監督生もそこまでではない(と、少なくとも本人は思っている)。

「ちょっと思いついたこと溢しただけなのにさぁ、あのサ部の顧問なのにだよ?」
「いや、だからだろ」
「クルーウェル先生はサイエンス部のストッパーだからな」

それはそうかもしれないけど……と納得のいかない顔でサラダをグリムに無理矢理食べさせる監督生に、行儀悪く頬杖をついたエースが更に話しかける。

……例えばどんな感じ? なんか思いついてよ」
「えぇー、そんな急に」
「僕も気になるな」
「そうだなぁ……

なにか取っ掛かりはないかとぐるりと大食堂を見回す。

「やっちゃいけないと思えば思うほど……ってあるじゃん? ここで突然大声出したらどうなるかな〜とか」
「あー、怒られてる時に限ってツボ浅くなったりね」
「そうそう! んで例えばさぁ、あそこに人魚先輩たちがいるじゃないですか」

監督生が声を潜めるのに倣って出来るだけ目立たぬように視線だけ動かせば、確かにオクタヴィネル寮のトップスリーがいた。エースデュースグリムにはイソギンチャクにされた記憶も未だ生々しい、あまり関わり合いたくない先輩方である。

「故郷には人魚食べて不老不死になる伝説があるんだよね」

途端、周囲から音が消える。食事中に突如落とされた爆弾は、マブたちだけではなくそれが聞こえてしまった人たちも戦慄させた。
そもそも始まりからして、あの退学RTA組のオバブロ常連がまたなんかしたらしい、となんとはなしに聞いていた野次馬は少なくなかったのだ。結果として『人魚を食べる』 カニバリズムという禁忌を犯した発言は大食堂にいた大半の生徒に届いてしまった。

……かんとくせー、冗談キツいって〜!」
「うん? さすがに信じてないよ〜」
「だっ、だよな! タチ悪いぞ監督生!」
「えぇー……話振ったのはエースなんだから、そっち責めてよ」

朗らかに返しながらハンバーグを食べる姿に力も抜け、このラインをわかってない友人は後で密告しよう……とエーデュースは心に決めた。担任による調教と、寮長による法律ブートキャンプでもされてしまえばいいのだ。


「でもさぁ……

タコは勿論おいしいけど、ウツボの唐揚げもおいしいらしいんだよねぇ……

「おい! リーチが倒れたぞ!!」
「誰か大人のひと呼んできてぇ!!!!!!」

監督生の続投は騒めきが戻りかけていたとはいえ思いの外よく通り、大食堂は混乱の渦に呑み込まれた。