saeko
2025-03-19 07:45:49
12846文字
Public
 

無題

書いてる途中の悠アキのリン視点部分
いろいろ捏造解釈有り
VDネタだったけど過ぎ去ってるので、せめてここだけでもと、アップを。
これだけでも読めるようには、なっています。(多分)

【リンSIDE】

 インターノットの電子の海に潜り、散らばっている匿名者からの依頼を探しては内容を選ばず率先して引き受ける。
 プロキシ〈パエトーン〉のアカウントを失った代償はそれなりにあり、生活の為にもなりゆきとはいえ、AIフェアリーの為にも、名声を積み重ねる必要があった。
 リンやアキラがレンタルビデオ店『Random Play』を経営する傍ら、もう一つの稼業の依頼を成し遂げたのは陽がかなり傾いた頃だった。
 羊飼いなど、パエトーンのときから贔屓してくれている情報屋の存在はありがたい。けれど依頼が多くなれば、後処理の数も比例するように当然多くなる。 
 イアスを通しフェアリーに記録された録画や音声を確認し、もしものときの為に依頼主へ提供する証拠映像を編集していると、出かけるからとアキラがリンの背中に投げかけた。いつものように、分かったと返し、再び作業に没頭していく。
「やーっと終わったー!」
 あれから数時間。画面をずっと見ながら作業に没頭していたため、両腕を上げ大きく伸びした途端、肩が軽い悲鳴を上げる。 
「あー……、今日も店番あんまりできなかったなぁ」
 さすがにまる一日店に出ないというわけにはいかず、兄とフェアリーに探索を任せ、リンは少しだけ店に顔を出していた。
 昼過ぎから夕方まで。陽が落ちてしばらくの間は通学や通勤の者が帰宅する時間になる。カウンターで働く18号は、接客のプロボンプとして活躍してくれているけれど、リクエストを受け付けるのは、アキラやリンの役目だ。 
「18ちゃん、あとでいっぱいぎゅっとしてあげないと。Fairyもお疲れさま。やっぱり前とは作業の楽さが全然違う」
『作業に効率の良さは必要です』
 正体不明の人工知能だが、仕事上のパートナーとしては相性がいい。プロキシ兄妹としては、稼業の内容上フェアリーに対し油断ができない部分がある。それを踏まえても、それなりに砕けた関係を一方では築いているので、やり取りをするときの気安さは生れていた。
『疑問。助手二号、質問があります』
「なになに? Fairyが私になんてすっごい珍しいじゃん」
 フェアリーのプライド上、疑問や解析困難なものに関しては自身の知能や技術をフル活用し、アキラやリンの手助けを必要せずとも解を導き出していた。 
『マスターは病気なのでしょうか』
……へ? Fairyいまなんて?」
『マスターは病気なのでしょうか』
 聞き間違いではないかと問い返したが、フェアリーは一言一句同じ問いかけを繰り返した。
「え? ホントに?」
 ひ弱だとしても、健康面で問題があるとは思っていなかった。フェアリーがリンに尋ねるということは、身体のどこかに異変を感じ取ったということだ。
『ごく稀に、僅かな脈拍異常が有り。その頻度が最近上がっています』
「え、それって結構ヤバイんじゃ……
 病院。いや、すぐに大きな病院は無理だろう。兄が帰ってきたら、無理やりにでも診療所に連れて行かなければ。
「とりあえず、落ち着け私」
 柔和な笑みを浮かべ穏やかな表情が多い兄は、プロキシのなかでもトップといってもいいくらいの腕をしている。対峙する相手の声や表情から情報を得て、自分に有利な情報を引き出す。
 裏を返せば、アキラ自身は声や表情から完璧に心情を読ませない。兄の話術を熟知しているのは妹であるリンだと自負している。
 現に今日もその能力を如何なく発揮し、今日一日だけで三つほど依頼を完遂させていた。
……いやいや、私、お兄ちゃんの妹だし」
 家族相手に能力を使うわけがないと、軽く首を横に振るけれど、完全に打消す自信はない。 
(でも、まって。家族だからこそ、隠しておきたくなことってあるじゃん……
 心配かけたくないとか。杞憂だった場合、不安にさせるのは悪いとか。とにかく、あの兄なら思いかねない。 
「ただいま。リン、外でご飯でも」
「お兄ちゃん、ラーメン控えた方がいいよっ」
「どうかなって、え、なにいきなり……
 6号によってドアが開けられ、戻ってきたアキラに思わず勢いよく返してしまった。
「い、いや〜、ほら、健康志向って大事だっていうでしょ。ね、Fairy」
「それにしても、唐突過ぎるだろ。今度は二人して何に影響されたんだ?」 
 ネットやテレビ番組の影響かと尋ねるアキラに、慌てて、違うと否定した。
『先程、マスターに僅かな脈拍の乱れ、また異常を感知しました』
「ちょっ、Fairy、いきなり過ぎるってっ」
 もっと穏便に。相手を動揺させない質問の仕方があるだろうと焦ったリンに対し、アキラは僅かに驚いただけだった。けれど、すぐに落ち着いた表情へと変わる。
『だから、さっき控えろって言ったのか」
……まあ、そういうこと」
「心配させて申し訳ないけど、ここ最近寝不足だったからね。あとは、そうだな。寒かっただろ。それもあるかもしれない」 
「ちょっと、お兄ちゃん。自覚してるんだったら気をつけてよ。すっごく心配してるんだから」
「ごめん、ごめん。悪かったよ」
 当分は夜ふかしもしない。夜の外出も仕事絡み以外は控える。妹に誓ってと、アキラが兄の表情を見せた。
「Fairy、いまはどうだい?」
『現状問題ありません』
「じゃあ、ラーメン食べに行っても問題ないね」
「結局食べるんだ。……まぁ、大丈夫ならいいけどさ」
「心配させたお詫びに、トッピングを奮発するよ」
「やったっ。じゃあ、煮卵二つ」
『マスター』
「fairy、今月は電気代払うの頑張るから。それでどうかな」
 つまり、フェアリーが好きに知能を駆使できる時間が増えるということだ。
「なんか、差が激しくない? こっちは煮卵二つなのにー」
「じゃあ、もやし大盛りも追加しよう」
「やっぱり、割り合わないんだけどっ」
 文句を言いつつも、飄々としている兄の態度に安心する。
「じゃあ、いってくるね」
 フェアリーとドアの近くでウトウトしている06号に声をかけ、リンは兄の背中を追いかけた。