保科
2025-03-18 23:41:57
1476文字
Public ひびちか
 

花びらはきっと奇数

AATM、普通に面白かった Bすけ先生のひびちかちゃんスマートかわいい プリヤなイリヤもかわいい おい桂木千鍵お前他作品ヒロイン公認なのかお前!?

お題
・花占いの後の話

「塩……塩撒かなきゃ……
「チカちゃん、チカちゃん」
どうにかこうにか、トラブルしか持ち込まなかったお客様共を追い払った後。疲労のため適当なテーブルに突っ伏し呻く私をひびきが呼ぶ。くいくい、と控えめに袖が引かれるので、顔を少し動かして返事をした。
……なんだよ、皿なら全部洗ったぞー……
「あ、ありがとう。……って、そうじゃなくて」
……?」
「さっき、何を占ってたの?」
―――
今、一番聞かれたくない問いに口元が引きつる。チクショウ恨むぞあの客ども!
聞かれているのは、買い出しに戻ってきたひびきが目撃した私の奇行だろう。金髪の少年がくれた怪しい手袋と花で花占い――などと。まさか、頼んでもいない謎の恋愛指南の果てに、あんな醜態をひびきの前で晒す羽目になるなんて。今日は本当に災難な日だ。
「あー、あのな?ひびき」私は仕方なく体を起こすと。やれやれ、という雰囲気を滲ませながら、ひびきに切々と語りかける。
「あれは、なんか流れでやらされるはめになっただけで。
特に深い意味も何もないというか、むしろ私も被害者で……
……ふーん、そうなんだ」
「あ、ああ……
返事はあるものの、じっ、と無表情にこちらを見つめるまなざしには、何かしらの疑いが含まれているような気がしてならない。――緊張に、私の顔が険しくなる。
……なんだよ」
――ううん、ならよかったなって!」
………
つっけんどんな私の声を気にもせず、ぱ、と、切り替えたようにひびきが笑った。拙い説明でも納得してもらえたことに胸を撫で下ろしつつ。
なんとなく、その言葉に引っかかる。
ならよかった、とひびきは言った。
よかった、ならば。――逆に、何なら、彼女にとって都合が悪くなる?
「ひびき」
「ん?」
――お前、私が何を占ってるって、思ったんだ?
口にしようとして、言葉に詰まる。カウンターに向かっていた足を止め、振り向いたひびきが首を傾げる。
「チカちゃん?」
……いや、何でもない。ごめん」
「?うん」
聞いて何になる。むしろ墓穴を掘るだけだ。触れない方が良いに決まってる。
………
でも。なんとなく、問いかけるひびきの顔は、ほんの少し、こわばっていたような――
――よーし、張り切って作るぞ〜!
チカちゃん、今日のまかないどうする〜?パンケーキでいい?」
……おー。生クリーム多めな」
「おっけー!」
カウンターの向こう、袖捲りをしてガッツポーズをする顔には何の陰りもない。
……ま、気のせいか。



チカちゃんが、欠伸をしながら顔をそらしたのを確認して。わたしは静かに息を吐く。
…………
ごまかされたなぁ、わたし。
「んー……
ホットケーキミックスの袋を開けながら。チカちゃんは、一体、誰が好きなんだろうって思う。クラスの誰か?年上の先輩?それとも、わたしの知らない人?
だって。花占いなんて、好きな人を占うこと以外、目的ないのに。
……………ふう」
そっか。チカちゃん、好きなひと、いるんだ。……そっかあ。
「そっかあ」
声に出しても、胸の奥のぼんやりとしたもやもやは消えないまま。それが無性にざらついて、なんだか、どこか遠くへ行きたいなあ、と思って――
「あ、ひびき、そうだ!チョコシロップもかけてくれよ!」
――顔を上げる。向かい、カウンターに手をついて。な、と笑うチカちゃんの顔に、わたしは、うん、と頷く。頷いて、つられるように笑う。笑って、そうして、ああ、きっと離れられないなあって、どうしようもなく、思い知る。