夢篠
2025-03-11 23:43:21
2290文字
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おいでよ、タソガレ幼稚園!

なんかちっちゃくなっちゃった話


朝、陣左の叫び声で目が覚めた。珍しい事もある物だと身体を起こして水差しの水を口に含んでいると、今度は尊奈門の叫び声が聞こえた。いよいよ何だろう、と適当に身支度をしている間に山本の叫び声がしたのでもう笑うしかない。一体何が起きたのだろうと三人の気配の集まっている所に向かうと随分慌てている三人が楽しそうに何か話していた。ナマエの気配もあったから、一緒に話しているのかな。

「こ、これは、どうすれば」

「どうすると言われましても……。あ!育て直す、とか……?」

「はァ!?元に戻るまでに何年掛かると思ってる!大体誰が育てるんだ!」

「そんなの、経験者に任せるしか……

……!?私か!?」

「なになに?何の話?」

全く私の事には気付いていないようだったので声を掛けると三人が大袈裟に驚くから声を上げて笑いそうになった。もっと精進しましょう。ナマエは、姿が見えない。

「あ、く、み、頭……

「それが……、あの、」「わあ……、だあれ?」

何だろう。今、確実に時が止まった。幼い高い声。聞き覚えはある。今まで見えなかった陣左の腕の中。抱えられたその塊は。

…………ナマエ?」

推定三歳程のナマエと思われる娘が綺羅綺羅とした目で私を見ていた。

陣左の説明はこうだ。朝、ナマエの部屋の前を通り掛かったら、中から大きな音がしたので心配になり部屋を訪れた。そうしたらもう、こんな形をしたナマエナマエの衣に埋もれて眠っていたそうだ。それが陣左の悲鳴の訳。そして、混乱した陣左が兎に角ナマエに真面な服を着せてやろうと里の幼児の服を探している所に尊奈門が起きて来て、陣左の腕の中の子供を見て大声を上げた。これが尊奈門の悲鳴の訳。そして尊奈門の悲鳴に驚いたナマエが泣き出して、聞き慣れない幼児の泣き声に駆け付けた陣内が陣左の腕の中のナマエを見て悲鳴を上げた。これが陣内の悲鳴の訳。

「あはは、何それ、面白いね」

「わ、笑い事ではありません!こんな、可笑しな事……!」

取り敢えず陣左の腕の中の子供を受け取って(陣左があからさまに残念そうな顔をした。分かりやすい奴だよね)検分してみる。大きな目が私をじっと見ている。三歳頃といえば、私とナマエはもう出会っていたような気がするけど、もしこれが本当のナマエだとして、この子は覚えているのかな。あ、でもナマエが三歳の頃はまだ、私はこんな見た目はしてなかったからやっぱり分からないかな。

どうでも良い事を考えながらナマエの身体にも触れる。もっちりとした幼児特有の肌に目が細まる。何だろう、潰したくなっちゃうもちもち感。

「あぅ、こがちら、ちゅぶれちゃいましゅ……

ぎゅう、と手加減しながら彼女の両頬を潰しているとナマエが困ったように呟いた。きゅん、と何だか変な音が四つした。

……あ、あー、そういえばナマエがこのくらいの頃、私はまだ小頭だったっけ」

ぎゅううう、と心臓を握り潰されるような気持ちに胸を抑える。残りの三人も似た様な物だからナマエってば本当罪作り。手を離してやるとナマエはそのもちもちの頬を両手で押さえながら私を見た。零れ落ちそうな目が潤んでいる。

「あの、こがしら、おけがして……

小さな手が私の方に伸ばされる。触れるのを躊躇うように握り締められる手に私の方から触れる。ナマエの手は元々小さかったけれど、今はもっと小さくなっている。

「ああ、これはもう大丈夫なやつだから。ね、尊奈門」

「は、はい!組頭の怪我は私がちゃんと看病したからな、心配しなくて良いぞ、ナマエ!」

「くみがしら?えっと、あの、」

尊奈門の私への呼称に少し混乱をきたしたようだったが陣内の丁寧な説明でナマエは納得したようだ。流石陣内。

***

「それにしてもどうしようか」

一頻り遊んでやって私の腕の中で遊び疲れて眠ってしまったナマエを抱えて漸く本題に入る。陣左と尊奈門が羨ましそうに私を見ている。ははは、こういうのは年長者の特権だよ。

「どうする、も何も、原因が分からぬ以上、」

「そうなんだよねえ。いきなりこうなった訳だし、いきなり元に戻るかなあ。尊奈門はどう思う?」

「は!?あ、いや、わ、私はその、」

「うん」

「その、もし、ナマエが元に戻らぬなら、私が育て直し、ます、ので……

陣左と陣内の恐ろしい物を見るような目に尊奈門は少し怯んだようだったがそれでもその言葉は真剣のようだ。そういえば尊奈門は昔からナマエの後を追い掛けていたっけ。

「尊奈門、お前、本気か!?」

「ほ、本気です、小頭!それがナマエの為になるのなら!」

おやおや、何だか面白そうな展開に……。そう思って止めずにいたら今度は陣左が立ち上がった。陣左も陣左で「こう」と決めると聞かないもんなあ。どんどん面白くなって、じゃない、どうする気なんだろ。

「尊奈門……。黙って聞いていれば好き勝手な事を……。ならばナマエを育てるのは私の方が相応しいだろう!」

もう我慢出来なくて噴き出してしまった。隣で陣内がため息を吐いている。こんなの、経験者に任せて仕舞えば良いだけなのにね。