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かいえ
2025-02-28 19:00:00
11190文字
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【竜武】「プレゼントは、オ・レ♡」作戦
2022年10月20日開催ワンデイ竜武ドロライ企画で書いたお話に2,900文字加筆し誤字脱字を修正したもの
11,186文字
蘭が弟の恋人である武道を可愛がりつつ、竜胆との仲を取り持ったり応援したりする話
竜胆の為に色々作戦を考える蘭が尊いのです
1
2
「あの
…
蘭君
…
下が置いてなかったんですけど」
しばらくして、リビングに戻って来た花垣は恥ずかしそうに足を内股にして歩いてきた。俺の用意した竜胆の白いシャツだけ着ている花垣は、当たり前だけど膝から下は素足になっている。思いっきり肩が落ちてぶかぶかで、長すぎる袖は適当に折り返していたが、それでも萌え袖になっていた。そんな見事なまでの彼シャツは、白色の生地なので花垣の肌の色が透けて見えて、視覚的にナイス俺だった。
「わりぃ。なんか下は全部クリーニングに出してあるみたいで無かったんだワ。俺のを貸しても良いけど、竜胆の服でそれなら俺のは大きすぎるだろ?」
「はぁ
…
そうですよね」
俺の身長を再確認しながら花垣が唸る。
「大丈夫。下着見えてないし。ワンピースでも着てると思えば問題ないから」
「そうっスよね。上着あざっス!」
チョロい。チョロ過ぎて笑える。男なのにワンピース着てるとか言われた時点で気が付けよと思う。
「じゃあ、これテーブルに運んで」
「わ! ケーキ美味そう!」
「だろ?」
「マジでスゲェ!」
「普段は作らないけど、誕生日だけは特別。可愛い弟の為に作ってやんの♡」
「そうなんですね。飾りつけもすごい綺麗っス!」
「ありがと」
ちょうど準備が終わった頃、ご機嫌斜めな竜胆が帰宅した。「ただいま」と言った後「おかえりなさい!」と出迎えた花垣の姿を見て固まる。俺の想定以上に驚いていて楽しい。竜胆の素で驚いた顔は貴重で、これも動画で撮れば良かったと思ってしまった。
「とりあえず、乾杯しよ」
ずっと静止していたままの竜胆に、席に着くように促してやる。
「ああ
…
」
竜胆はぎくしゃくと動き出し、納得いかないという顔のまま椅子に腰を下ろした。それでも、目の前にあるワインクーラーで冷やしておいたシャンパンの瓶には手を伸ばした。コルクを開けるのは竜胆の仕事なのだ。
俺は再び動画をとるべくスマホを構えた。画面の向こうで、竜胆が慣れた手つきでコルクにかぶっているキャップシールを外し金属の留金を緩めた。コルクが飛び出さないようにトーションをコルクの上に被せてから、親指でコルク部分を押えボトルを左右に回していく。きゅきゅっと鳴きながら、コルクがポンという軽快な音を立てて外れた。
竜胆はトーションで瓶の内側を拭き取り、シャンパングラスにそっと注いでいく。その流れるような一連の動作はソムリエのように洗練されていたから、花垣は目をキラキラさせて竜胆を見ていた。
「竜胆君、格好良いっス! プロみたい!」
花垣の賛辞に竜胆は照れながら「そうでもないし」と満更でもない顔をする。二人のやり取りは何もかもが可愛いらしくてぞくぞくした。この動画は俺の永久保存になるのは間違いなかった。
「ところで、兄ちゃん、ナニ撮ってんの?」
せっかく彼シャツ仕様にしてやったのに、竜胆の俺に対する態度はとげとげしい。多分、この格好の花垣と俺が二人きりだった状況が気にくわないのだろう。
「これか? 後でやるから気にすんな♡」
「竜胆君、誕生日おめでとうございます」
花垣がドンキで買ったプレゼントを竜胆に渡す。竜胆はプレゼントを貰えると思っていなかったから、目を見開いて驚いている。
「俺に?」
「はい。開けてみてください」
竜胆がリボンを外して袋の中から、例のものを取り出す。もちろん竜胆の目は点になった。でも一瞬だ。それを俺はばっちり動画に収める。花垣、最高。グッジョブだ。
「どうっスか?」
「あ
…
嬉しいよ
…
ありがとうな」
竜胆が笑みを浮かべてお礼を言っている。頑張ってるな。兄ちゃんはちゃんとわかってるぞ! と、笑いを堪えながら俺は動画を撮り続けた。ちょっと手が小刻みに震えてしまうのはもう仕方がない。
「ほら、ここ押すと鳴くんですよ」
花垣はそう言って、シャウティングチキン40センチの腹を思いっきり握った。すると、シャウティングチキン40センチはぐげげげっげげげっと、絞殺されるニワトリのように鳴いた。
「
…
すげぇな」
竜胆は何とかそれだけ言うと、今度も頑張ってにっこり笑った。
偉いぞ。表情筋に感情を出さない努力をしてて。花垣からじゃなかったら、きっと相手の関節外してるよな。
「良かった」
ほっとした花垣が竜胆に抱きついて、竜胆が柄にもなく真っ赤になった。その場面をしっかり収めて、俺の動画撮影は終わりを迎える事となった。なんだか一仕事終えた感が半端ない。
「蘭君、このケーキ美味しいです」
俺と竜胆が見守る中、花垣が無邪気にケーキをもしゃもしゃ食べている。花垣が食べているのを見ているだけで、なんか癒されてくるのは何故だろう。花垣セラピーとかいうのか?
「そうか。いっぱい食え。これも美味いぞ」
ケータリングで届いたオードブルのエビをフォークで刺して花垣の口に持っていくと、当たり前のようにパクっと口を開けて食べた。犬か。
「美味しいです~」
花垣は本当に美味しそうな表情で食べる。マジで犬に餌付けしている気分になった。そう思うと、段々花垣がコーギーに見えてくるから不思議だ。
「ねぇ、二人とも、いつの間に仲良くなってんの?」
竜胆がやきもちを妬いてるの、カワイイとニマニマしてしまう。そんな俺を見て竜胆がイラっとしたのが見えて、あんまり揶揄うのもいけないと、邪魔者はそろそろ席を外すことにした。
「じゃあ、俺出かけるワ」
「え? 兄ちゃん、どこ行くの?」
立ち上がって歩き出した俺を見て、竜胆がびっくりした声を上げる。やきもちを妬く癖に、俺がいなくなるのは嫌なんて、俺の弟って世界一可愛くね?
「急用。花垣、俺の代わりに朝まで竜胆の相手頼むな♡」
「りょーかいっス!」
花垣は素直に返事をする。本当にちょろくて、面白いのを通り過ぎて心配になるレベルだワ。
「ちょっと、兄ちゃん? マジで出かけんのかよ?」
動揺する竜胆の声を背中に受けながら、俺は夜の六本木に繰り出した。久しぶりのオールに何しようかなと思いながら。
自宅の広いリビングに花垣と二人取り残された。俺の誕生日に兄ちゃんがいなくなるのは初めてで、花垣の前なのに思わず動揺してしまった事が恥ずかしい。
それにしても、あの唯我独尊な兄ちゃんが気を利かせてくれるなんてあるのだろうかと、未だに信じられない思いだった。花垣と良い雰囲気になったら「ウソ♡」とか言って、戻ってくるつもりではないかと思ってしまう。兄ちゃんは俺を騙したり驚かしたりするのが好きなのだ。それに、どちらかと言えば「混ぜろ」とか「俺にもやらせろ」とかいう方が兄ちゃんらしいので、こんな風にあっさり出かけてしまうのは変な気がするのだ。
とはいっても、いくら兄ちゃんだからといって「混ぜろ」と、言われても混ぜてやるつもりは無いけど。だって、花垣は俺にとって特別だから、いつもみたいにシェアなんて出来なかった。俺がそんな風に思っている事も、花垣を大事にしている事も、兄ちゃんは分かっている気はしたのだけれど、本当にそうだと分かった今も、やっぱり信じられない気持ちが混ざってしまう。
俺の横に座って「美味しい」を連呼しながら、ケータリングの料理を食べている花垣は、何処からどう見ても格好がおかしい。
ワイシャツで素足ってなんだよ? と思う。
しかも俺のシャツじゃん? ってことは、彼シャツじゃん? しかも白で! 肌が透けてるし! 目のやりどころに困るだろ?
兄ちゃんは絶対に楽しんでやったに違いなかった。どうやって、花垣をこの格好にさせたのかと考えると気が気じゃなくなるのだけれど。何しろ、兄ちゃんは恐ろしく手が早いし、倫理観なんてミリも持ち合わせていない人種なのだ。
「ところでさ、その恰好はどうしたの?」
さりげなく探りを入れる俺。
「これですか? なんか、蘭君がこの家のしきたりで、客はパーティーの前に風呂に入らないといけないって。でも、俺、そんなしきたりがあるなんて知らなかったんで着替えとかなくて
…
そしたら蘭君が、このシャツを貸してくれたんですけど
…
変ですか? なんか下は全部クリーニングに出してなかったって言われちゃって」
兄ちゃん
…
やっぱり遊んでくれてるじゃん。そんなウソに騙される方も騙される方だけどさ。何だよ、下は全部クリーニングに出してるって。ありえないだろ。信じるなよと、花垣のちょろさが心配になった。
「変じゃない。似合ってる」と俺が褒めると、花垣は嬉しそうにふにゃりと笑う。花垣の笑顔を見るだけで、胸がきゅんとするし、生きててよかったとすら思う。俺の脳内ではベータエンドルフィンとオキシトシンが分泌されているに違いなくて、多幸感に包まれる高揚感が半端ない。
更に視覚はよりヤバイ画像を拾ってきて、この家に二人っきりという状況も相まって、俺の心臓は早鐘のように忙しなく動いている。
長くて捲っていた筈の袖が解かれて、花垣の手をほとんど隠していて、中指の第一関節から上が見えるか見えないくらいになってドキリとする。シャツの肩の位置はずいぶん外側にずり落ちて、余計に華奢に見えてやばい。一番上のボタンを留めていない襟元から見える鎖骨に劣情を抱いてしまう。ずっと我慢していたのに、ごくりと自然に喉が鳴った。
テーブルの上に置いてあったスマホがぶるぶると震えて、兄ちゃんから動画が送られてきた。メッセージをさっと確認すると「ハッピーバースデイ竜胆! 俺のサプライズ楽しんでる? これはおまけのプレゼント。タイトルは『初めてのおつかい』な♡」という文面の下に、動画ファイルが貼ってあった。俺はすぐにさっき撮っていた動画だと気が付いた。初めてのおつかい?ってなんだよと、気になって仕方がない。
花垣にはトイレと言って席を外し、個室内で動画を確認して悶絶した。
なにこれ、花垣が可愛くない?
兄ちゃん、ありがとうと、俺は心の中で盛大にお礼を言った。欲しかった秋物のブランド物のコートをプレゼントで貰っていたけど、このおまけの動画はその上をいくと思った。全編に渡って花垣がカワイイ。もう、これ永久保存版じゃね? と、思うくらいカワイイ。だから、途中で兄ちゃんが花垣に自分の名前を呼ばせているのは、目を瞑ってやる事にした。
リビングに戻ると、花垣は先程と変わらない格好でご馳走を頬張っていた。隣の席に座り、この後はどうしようかと考える。このまま彼シャツ花垣を見ていたら余計にむらむらしそうで、花垣に貰ったプレゼントのシャウティングチキン40センチの首を掴んでじっくり観察することにした。気持ち悪いからエロい気持ちが萎えるかもしれないと思ったのだ。さっきの動画で兄ちゃんがバカウケしていたこいつは、近くで見るとより気持ち悪かった。なにこの鳥肌! と、ぞわっと不快感が走る。
それにしても、個室で見てきた動画には驚きがいっぱい詰まっていた。あの兄ちゃんが、俺の為に花垣の動画を撮ってくれたという事実からして凄いのだけれど、俺の誕生日だと知ってプレゼントを買いに行くと言い出した花垣について行ってくれるというのが、本当にありえないくらい凄いと思った。兄ちゃんは、そんな面倒なことをする人間じゃないのだ。欲しいものがあったら人を使って持ってこさせるか、店の人に持ってこさせるかという、生まれながらの支配階級の人間だからだ。
それでも、兄ちゃんは俺の誕生日はいつも一緒に祝ってくれた。普段は料理なんて全然しなくて、俺が作るばかりなのに、誕生日だけは兄ちゃんが俺だけの為に何か作ってくれる。だから、花垣と付き合って初めての誕生日も、どこかのレストランに行くんじゃなくて、花垣を自宅に呼んだのだ。二人から祝って貰おうと思って。
それなのに、兄ちゃんはどこかに出かけてしまった。「俺の代わりに朝まで竜胆の相手頼むな♡」と、花垣に伝えてから。それってそういう事だよなと思う。風呂も入って、いつでも俺を食べてと言わんばかりの彼シャツ花垣と、ここにきての兄ちゃんの外出は、今夜やれって言ってるって事だよな? と。つまり、俺は兄ちゃんから早く手を出せと、尻を叩かれているのだ。
ここまで御膳立てして貰って、何もなかったじゃダメってことだよな? と俺は蒼ざめた。
でもさ、兄ちゃん。こいつは無垢すぎて手が出しにくいんだよ。まだまだお子様で躊躇しちゃうんだ。自分でも意外だったけど、花垣の泣く顔は見たくないんだ。今頃、純愛かよ? と、自分で自分に突っ込みたくなるけど、もっとゆっくり愛というものを育むのもありじゃないかって思ったんだ。きっと、兄ちゃんに言ったら笑われそうだけど、こんな気持ちになるの初めてなんだよ。
色々考えた結果、やはり、花垣にはまだ早いだろうと結論付けた俺は、オールでゲームをする事に決めた。ゲームの用意をしようと、手に持っていたシャウティングチキン40センチをラッピング袋に戻そうとして、袋の底にもう一つラッピングされた長方形の袋を見つけた。
「これなに?」
少し重たい何かが入った袋を武道に見せる。
「あ、それは蘭君が俺と竜胆君にって、くれたやつです」
相変わらず食べ続けながら花垣が言った。花より団子なお子様に手を出すのはやっぱり気が引けるなと、その様子を見て更に思いを深くした。二人っきりになって、そんな無防備な格好でいるのに、俺にドキドキしてないもんなと。普通、そんな恰好したら「プレゼントは、オ・レ♡」とかいうやつだぞと言ってやりたい。
花垣の返答に「ふーん」と言いながら、何も考えず袋を開けて絶句した。
そんな俺の様子に気が付いた花垣が「何だったんですか? そう言えば『二人っきりになったら竜胆に渡せ♡』って蘭君が言ってましたけど」と言ってくるから、先にそれを言えよと俺は思った。
花垣は俺の手元を覗き込んで「あ、これってイチゴ味の避妊具じゃないっスか? すげぇ。初めて見た」と、無邪気な声を上げた。
中学生かよ! って中学生じゃん。
花垣は興味津々といった感じで、俺の手からイチゴ味の避妊具入りの箱を奪うと、パッケージをマジマジと凝視している。
「これって、つけて舐めろって事ですかね?」
花垣、なんて言った!? と、イチゴ味の避妊具を興味津々で見ている花垣のつむじをガン見する俺。
「こっちは何ですか?」
袋の中に入っている白にピンクの英語が書かれたチューブを指さして花垣が俺に聞く。彼シャツ着て上目遣いに首を傾げておいて、あざとすぎるだろ!
この後何もなく済むと思うなよと、俺の理性が切れた音がした。
「
…
そっちは、おまえのケツの穴ほぐすローションだよっ!」
分かったよ。やればいいんだろ?
ありがとう、俺の背中を押してくれて!
兄ちゃんの「プレゼントは、オ・レ♡」作戦最高かよと、目の前の据え膳を美味しく頂くことにした。
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