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夢篠
2025-02-25 23:54:44
2030文字
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兄弟星(雑渡双子弟)
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兄弟星見えた、宙を征く
雑渡は双子の弟に歪んだ感情を持ちつつある
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私たちは限りなく同質に近い存在だった。生まれた時こそ前後したけれど、同じ経験をして同じ感情を持ち同じ行動をした。それがいつから分かたれてしまったのだろう。
私の片割れはとても優秀だった。幼い頃から何だって、私より良く出来た。体術も話術も何もかも。天性の忍びの才を持っていた。私たちは常に比べられ、二人とも先代の提示した及第点を取ったけれど、いつも片割れの方が私を上回る結果を出した。
妬ましい、と思った事は最初はあった。けれど、直ぐに仕方の無い事と思った。片割れは天賦の才を持ち、その上で誰よりもその才を練磨していたのだから。将来の忍び軍を率いるのは片割れで疑いが無いと周囲は口々に褒めそやした。だのに。
だのに
ナマエ
はその道を自ら閉ざしてしまった。
ナマエ
が私から距離を置き始めた時、どうして私は気付かなかったのか、今となっては分からない。ただ、気付いた時には既に
ナマエ
は私から限りなく異質な存在となってしまっていた。
「ねえ、なんでだと思う?」
「素直に
ナマエ
にそれを伝えれば良いだろうに」
膝を抱えて隣で何か書き物をしている陣内に問い掛けてみる。
ナマエ
は陣内には心を開いているように見えた。少なくとも、陣内と関わっている時には、私と同質だった頃の
ナマエ
が良くしていた表情を沢山しているような気がした。
「
……
お、ぁ、わ、私には、何も言ってくれないんだよ」
「そうやって、無理に同じになろうとするからじゃないのか?」
陣内の苦笑が耳に痛い。一人称を先に変えたのは
ナマエ
だった。昔は二人とも「俺」と言っていたのに。
ナマエ
は私に何も相談する事無く、勝手に「私」になってしまった。私はその背を追えば良いのか追わなくても良いのか分からなくて、曖昧に追ってしまった挙句、いつも言い直す事ばかりだった。
「
…………
私たちは二人で一つだよ」
理由にもならない理由だった。でも私たち、否、私には大切な理由なのだ。大切な理由の筈なのだ。
幼い頃から私たちは色々な想いを勝手に乗せられた。期待が大半。後は妬み嫉みも。一方的な恨みも、向けられた事がある。父の血を受け継いだ事で、私たちは動くのも儘ならないくらい、重い枷を背負わされた。それが当然と思っていた。
「
……
ナマエ
だけ、逃げた。そう思いたい。でも、そうじゃない、だろ」
口にして仕舞えばそれだけの事なのに、
ナマエ
を責めたい訳じゃ無いのに。私は
ナマエ
とただ。
言いたい事が上手く纏まらない。抱えた膝に顔を埋める。陣内が困ったように息を吐いた音が聞こえた。
「昆奈門は、
ナマエ
に何を伝えたいんだ」
「分からない。
……
どうしたら、
ナマエ
は俺を分かってくれるの。
ナマエ
は俺より優秀なんだから、俺の事、ちゃんと分かってよ
……
」
ナマエ
を前にすると言いたい事一つ言葉に出来ない。喉が締まって声すら出ない。他の同年代とはすらすらと煩いくらい言葉が出るのに。
ナマエ
のあの目に見詰められると私は途端に怖気付いてしまう。
「それを纏めて
ナマエ
に伝えてやれば良いのに」
「どうやって?こんな、格好悪いの、」
じんわりと滲んだ視界を陣内に見付からないように拭う。もう一度、
ナマエ
と同じ視界に立ちたかった。同じ物を見て同じ事を感じて同じ行動を取りたかった。
ナマエ
ともう一度同じ物を見たかった。だから
ナマエ
の部屋に行ったのに。気分が悪いと素気無く追い返されて、仕方なく陣内に行って貰った。父に内緒で町に行って桃も買った。沢山悩んで店に並んでいる中で一番甘くて美味しそうな桃を選んだ。私の記憶の中の
ナマエ
は桃が好きだったから。
陣内なら、もしかしたら
ナマエ
の心を解かしてくれるのではないかと思った。
ナマエ
の心が解けたら、きっと
ナマエ
が将来の組頭になって、私はそれを絶対に支える。そう決めていた。
だからこれ以上、私に
ナマエ
を誤解させないで欲しかった。やっぱり気になって、改めて
ナマエ
の部屋に行こうとした。詰所の一番奥の陽の当たらない部屋。そこだけねっとりとした嫌な空気が流れていて、部屋に行くまでに恐ろしくなって踵を返した。
だから陣内の艶を孕んだ低い声も、
ナマエ
の蕩けた高い声も。私は何も聞かなかった。聞いていないから、何も知らない。何も知らない、ままでいたい。だって、こんな。
陣内が
ナマエ
を抱いている事に、一瞬でも羨望と憎悪を感じてしまうなんて。
私は皆大切な筈なのに、
ナマエ
が介在するだけでこんなにも誰もが憎らしくなる。誰も
ナマエ
を見ず、触れず、私だけが独り占め出来たら良いのに。そんな呪いの言葉を吐いてしまう。
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