しろくまたたくはくしゅんさん
2025-02-16 11:44:42
16328文字
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ココロオドル【ヌヴィフリ】

レディゴー!



 あくる日のフォンテーヌにて。

 カフェ・リュテスに集まったナヴィア、クロリンデ、旅人とパイモンの四人は、優雅にティータイムを楽しんでいた。

「「読心術 テレパシーの薬?」」
「そう。大シャーマンの秘薬」
「でも、効き目のある対象者には条件があるらしいぞ。シトラリのやつ、どんな条件かは最後まで教えてくれなかったけどな」
 パイモンの一言に、ナヴィアとクロリンデは目を合わせてそれぞれ苦笑いする。
「旅人の回りには、それを欲しがる人は多そうね……
 旅人とパイモンは首をかしげたが、ナヴィアは「ふふふ」と笑って紅茶を一口。
「その早くくっつきなさいよ テレパシー薬をフリーナが飲んだんだ?」
「そうだぞ!って、なんか今別の言葉が聞こえた気が……
「成程。ここに式場を建てよう テレパシーのおかげで、フォンテーヌでは連日面白いことが起こっている訳か」
 パイモンは困ったような顔をして、旅人の耳元で囁いた。
「なあ、旅人。なんかこの二人の言ってることが別の意味に聞こえるぞ」
「えっ、まだ結婚してないの おもしろいこと?」
「旅人までぇ!」
 パイモンが渋い顔をし意味がわからないと漂う。そんな折、カフェの脇の草木が揺れた。
「ん……?フリーナじゃないか!どうしたんだよ?」
「パイモン!しーっ!」
 まるで迷いネコのように頭に木の葉をつけたフリーナは、植木の陰にうずくまる。ナヴィアとクロリンデはフリーナとの友情を忘れたわけではないので、椅子をずらし傘を広げ、フリーナを隠してしまった。
「ありがとうナヴィア、クロリンデ」
「どういたしまして」
「おそらく、無駄だと思いますが」
 パイモンの肩を旅人が叩く。それから、視線を大通りへやった。それに導かれ星空の瞳が捕らえたのは、この国の最高権力者である男の姿だ。
「ヌヴィレットだ!おー、むぐっ────」
 旅人にそっと口をふさがれる。何するんだよう、と見上げるパイモンに「面白そうだから、黙っていよう」とにやついた声に諭される。
 最高審判官ヌヴィレットは、散歩よりもやや早い足取りで道を歩いていた。ぐるりと回りを見渡し、道行く人に声をかけなにかを訪ねているようにパイモンの目に映った。
「なにしてるんだ、あいつ……?」
 カフェの前を通りかかるとき、ナヴィアもクロリンデも、それに旅人も、目立つ白髪の男を無視するように茶をすするので、パイモンもちらちらとヌヴィレットを見ながら茶をすすった。
「ふむ」
 長い足でカフェへの敷地をまたいですぐ、ヌヴィレットはいつもカフェの隅で悩みうつむいているメリュジーヌのメンタに挨拶をした。二言三言、会話をすると彼女の顔は笑顔になる。
「ところでメンタ。我が愛しのフリーナを見なかったか」
「っぐ、!?えっほ、げほ、ッ!」
 パイモンは咽た。それは茂みから上がった小さな叫び声を隠すにはちょうど良かった。
「な、なんっ、うぇぇええ!?」
 メンタが答える前に、パイモンはヌヴィレットの元へすっ飛んでいった。
「おいお前!今、今なんて言ったんだよ!」
「こんにちはパイモン。ナタの冒険は順調か?」
「こんにちは!オイラたちは順調だけど、その……お前が今とんでもない事を言った気がしてだな……
 ヌヴィレットは少しだけ考え込むような仕草をし、それからパイモンに向き合う。
「フリーナを見なかったか?」
「答える前に教えてくれ。どうして探しているんだ」
「今日こそは愛の告白を受け取ってほしいと思っている」
「聞き間違いじゃなかった!」
 パイモンはいっとう高く舞い上がり、それから視線をヌヴィレットとカフェの席の向こうで何度か行き来させる。
「────あっち。フリーナがあっちに行くのを見たぜ!」
「そうか。感謝する」
「あれ、でも……
「メンタ!お菓子がちょーっと余ってるんだ!オイラたちとお茶でも飲まないか?!」
 ヌヴィレットは微笑ましい光景に表情をやわらげた後、「では、失礼する」とパイモンの指さした方向へと去っていった。
 メンタはぽて、ぽて、と旅人たちの座る席へと歩いて行き、そっと屈んで尻尾を左右に振った。
「フリーナ様。ヌヴィレット様がお探しでしたよ……?」
「ありがとう。メンタ、……良ければここで僕とお茶会をしないかい?」
「自分が?いいのですか?……よいしょ。──ああ、たしかにここは落ち着くう……
 フリーナはナヴィアからティーポットとカップ、お菓子を受け取ると、茂みでメンタとお茶会をはじめた。
 よろよろと戻って来たパイモンは、日傘の向こうの少しテンションがおかしい会話を聞きつつ、頭をおさえてつぶやいた。

結婚式にはよんでくれ やれやれだぜ……