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やや
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寝顔に想う
現パロ社会人恋人同士ビマヨダ。ある日の夜の出来事。ビマの独白のようなもの。おだやかしあわせ風味の小話です。
🆕(2025/02/28)ヨダナ版を2ページ目に追加しました!ある日の昼間の出来事。バレンタイン風味🍫
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180度に予熱しておいたオーブンの中に、生地を流し込んだ6個取りのマフィン型をさっと入れる。24分に設定してから、さっきまで使っていた調理器具を洗ってしまう。こういうのはちゃっちゃと片付けていく方が結局手間ではないことを、今のドゥリーヨダナは知っている。
立ちっぱなしで疲れた体を休めるかとリビングに戻って発見したのは、ソファの上で仰向けになって寝こけているビーマだ。
料理を始める時に「こっちに来るな!見るな!あっち行け!」とキッチンからビーマを追い払ったから、暇を持て余しているうちに寝てしまったのだろう。今更いささかの申し訳なさが出てきたが、今日ばかりは仕方ない。ビーマも許してくれるはずだと勝手に結論づけた。
そろりそろりとソファに向かい、カーペットの上に静かに座って恋人の顔を見る。
「間抜けヅラ」
寝ていても端正な顔なのに、ぽかんと開いてる口が台無しにしてしまっている。ふふ、とドゥリーヨダナは小さく笑った。ソファから落ちていたビーマの腕を腹の上にのせてやる。
遥か遠くの記憶より幾分細いその腕は、今はドゥリーヨダナを抱きしめるためにある。ドゥリーヨダナの短い髪を優しく撫でてくれたりもする。変な格好で寝て、筋でも違えては大変だ。もう自分たちは「昔」ほど頑丈ではない。年末の繁忙期の疲れで新年早々発熱した自分を、せっせと看病してくれたビーマの姿は記憶に新しい。
ぐっすり寝続けるビーマを、ドゥリーヨダナは飽きずに見続ける。剛力無双がこんなに近くに宿敵の接近を許して、のん気なものだと思う。でも、そんなことも嬉しい。気を許し、寄り添えあえる相手の寝顔を見ているだけで満たされるものもある。
ふと、寝ているビーマが笑った。次いで開いていた口が閉じられ、もぐもぐと動く。今焼けてきたガトーショコラの香りがこちらにまで届いたからだ。きっと夢の中で食べているに違いない。間抜けめ。ドゥリーヨダナは今度は心の中で笑った。
「待っておれ。極上の菓子を食わせてやる」
ドゥリーヨダナは一度目を閉じてビーマの胸に顔を埋めてから、立ち上がった。良い香りがしているということは焼き上がりが近い。
「ご家庭のオーブンによって焼き時間は変わります」レシピに書いてあるこの文言は正しいのだ。最後はよく見ておかないと焦げてしまう。焦げた菓子を見るのは悲しい。実体験である。
左手にミトンを付けて、右手に竹串を持ってオーブンの前に立つ。じっとオーブンの中を見ながら、ドゥリーヨダナは頬を緩めた。「昔」はこの手で棍棒を取り敵を倒していたというのに、今や竹串を持って焼き菓子を刺すようになるとは。連れ合いを笑えないほど、のん気な姿である。
でも、これは円満な恋人関係を築くために必要な技である。いつの世でも、ハッピードゥリーヨダナタイムを過ごすための努力は欠かせないのだ。ハッピードゥリーヨダナ&ビーマタイムだって作り続けてみせようと、ささいで大きな目標を掲げている。
「昔」は必要なかった料理を、一人暮らしを始めるにあたってちゃんと人並みに習得した。恋人同士になってからは料理が上手なビーマに任せることがほとんどだが、今日は違う。
だってバレンタインだ。
さすがに本格的なものは無理だけど、「メレンゲ不要」「混ぜて焼くだけ」というガトーショコラのレシピを今年のチョコに選んだ。成功の予感はビシビシしている。
溶かした板チョコを小さなアルミカップに流し込んでカラースプレーをまぶしただけのものから、今日のガトーショコラまで。ふたりは一緒に過ごしてきた。「昔」のように豪勢な宴なんて開けなくとも、人並みに過ごす記念日はいつもふたりにとって特別だった。
「ふふっ」
今日もきっと特別だ。これからのビーマとの時間を思い描いて自然と笑みがこぼれる。
今のビーマは狼腹ほどじゃないから、ふたりで1つずつ食べて、おかわりって言って。そして、もう1つずつは明日食べるのだ。この前ビーマがミルクパンで作ってくれたココアもおいしかった。チョコだらけになるけれど、一緒に飲むのもいいかもしれない。
ほら、もう明日まで楽しみだ。
口もとに笑みを浮かべたまま、オーブンのドアを開ける。ふわりと漂うのは平穏と幸福の香りだった。
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