ぎんちき
2025-02-10 21:51:57
6129文字
Public ブン木手
 

過去作まとめ③

年齢操作(未来設定)のものをまとめました。

1.羽目は外すもの(成人)
2.素直になること(高3/「ラブコール」以前に書いたものなので今見ると違和感のある部分があります)

羽目は外すもの

 玄関の鍵が開く音。キテレツが帰ってきたらしい。今日はゼミでの飲み会があるとかだったけど思ってたよりは早かった。朝の時点で「行きたくない」って言ってたし、早めに上がってきたのかな。
 廊下を歩く足音が心なしかいつもより大きい気がする。こりゃあもしかしたら愚痴が始まるかもしれないし、どれ。ひとつ俺のハグでも……
……ただ〜いまっ」

 ん?

「丸井くん、聞いてください。今日さー、ふん。うちなーのさー、ふん、料理を出してくれるところでよー、ふん」
 えっと、えっと。今、俺の目の前にいるキテレツそっくりな容姿のこの男は一体、誰ですか?
「ブーンー、聞いてるば? 俺ねー、ふん、丸井くんにサーターアンダギー作ってほしいさーねー」
「わ、わかった。わかったからちょっと落ち着こうな!?」
 俺が、だ。どうか俺に落ち着く時間をくれ。なんか今しれっと下の名前で呼ばれたような気もするし、普段言ってこないようなお願いもされたし何より最近抑えられてきていた訛がめちゃくちゃ出てて、こんなの……
「俺は冷静やっしー」
 いや、大丈夫。どうか安心してくれ。もうその語尾が出てる時点で冷静じゃないはずだから。

……ふぁ……
「あ、コラ。そのまま寝んなよ。せめて着替えろって」
 ふらふらとした足取りでベッドに向かって、うつ伏せに寝転ぶもんだから思わずそう言ってしまった。……明日目が覚めてから「シャツに皺が!」とか言い出すのは目に見えてるもんな。
「んー……
 あまりに無防備。付き合い始めてから――いや、付き合う前。中三のときに出逢ってから今日まで、こんなにふわふわのキテレツは見たことがない。一緒に飲んだときなんか大抵俺が先に潰れて、キテレツはケロッとしてるくらいなのに。一体どんだけ飲んだんだ……と、心配になると共になんか、その。

「ゆくみそーれー…………ちょっと」
 さっきまで目を閉じていたのに、急にこっちを睨んできた。今日のそれはちっとも怖くないけど。
「丸井くんも、こっち来なさいよ」
「えっ」
「一緒に、寝ます」
 これでさぁ、我慢しろって方が酷だろ。俺だってまだまだ若いんだぜ? いやでも、ベロベロに酔ってるときに、なんてなんか騙してる? みたいだし。
 と、俺が葛藤しているのをわかっていてやっているのかどうかはわからないが、キテレツがベッドの空きスペースをポンポンと叩いた。来いという催促のようだ。とりあえず、そこに腰掛ける。
「な、なぁ。キテレツ」
 こうなったら、聞いてしまえ。
……する?」
 そう問えば、キテレツはぽけーっとした目のまま俺の顔を数秒見つめてから、くつくつと笑い始めた。
「ふふっ。やですよ。もう、寝るだけ」
「うん、うん。そうだよな」
 大丈夫。分かってたから。よかった。明日のキテレツに怒られないぜ! ……そう、ポジティブに捉えることにしておく。ちょっと期待した俺の熱は、あとでどうにかしておくし。

「んー、でも、丸井くんがスッキリしてから、俺は寝ましょうね」
 はい? 何ですって? そう、聞き返すより早く、キテレツが俺を引っ張った。不意打ちだったから見事にバランスを崩してしまう。
 そんな俺に、身を起こしたキテレツが馬乗りになってきた――?!

「丸井くんのー、かわいいところ……丸井…………まる……い、く」
 ふにゃふにゃしていたキテレツの顔が、突然青ざめる。どうしたんだろう? ……って、おいおいまさかお前そんな!
「う……っぷ」
「待て待て待て! まだ大丈夫平気間に合う気をしっかり持て頼むからお互いの為に! な!?」

 なんとか脱出して、ごみ箱を取ってくることに成功したので、事なきを得た。瞬間、俺の心の中に爽やかな風が吹き抜けた気がする。これってひとつの山を越えたっていう達成感、なのかな――

「ずいません……
 ある程度酔いが覚めたのであろうキテレツが、鼻をすすりながら俺に謝罪してくる。
「みっともない姿を、お見せして……ましてや、より悲惨な事態にしてしまうところで……
 さっきまでとは一変、すっかり標準語だ。元に戻った、ってだけなんだけど、ちょっと寂しい。
「いいっていいって。だって大丈夫だったんだから。な? ほら、もうちょっと落ち着いたらシャワーだけでも浴びてこいよ」
「はい……

「さて、と」
 一気に疲れが押し寄せてきた。俺も、キテレツのあとにシャワーだけ浴びて寝るか。……にしても、今日のキテレツはなんというか、面白いし、かわいかった。
 そりゃあもう、いつも通りでいてくれるのが一番、なんだけど――
「また見てぇな……
 俺としても今日みたいなことはしばらくは勘弁願いたい。でも、またいつか……なんて。思うだけならいいよな!