・
・
・
「
――つまり、契約違反か」
「
……おれが聞いてなかっただけだから、ただの伝達ミスだとおもう」
「十中八九、確信犯だろ。君が現場にきて緊迫した状況で断れないと踏んだんだ」
実際に、そうじゃないか。
ぽつぽつ零される説明をまとめると、『打ち合わせの段階で連絡ミスがあった』ということらしい。
――あくまでメフィストによると、だが。
衣裳の内容を明確に伝えていないのは、致命的だろう。向こうに悪意があるとしか思えない。
そおっと持ちあがる瞼が、なんだかキラキラしていて落ちつかない。
透きとおるおおきな瞳が、一郎をうつしてわずかに揺れている。
この格好のまま、スタジオ内で行われる簡単な打ち上げに誘われ、人を待たせているからと逃げるようにエレベーターに乗り込んだらしい。
それだけは大正解だ。
「まえに、ゴシック系の雑誌でパパと撮影したの、見たって
……だから今回も、」
「あれはそういう芸術作品だろ。服にうとい僕でも分かる。こんなのと同列にするな」
打ち合わせでは、以前特集を組まれたファッション誌のゴス企画を例に出されたのだろう。
――実際の衣装は見せずに。
でなければ、メフィストだって承諾しなかったはずだ。
この格好で撮影されることを、スタジオ入りしてから知らせるのも悪質だ。
そもそもひと言でも今回のことを、この子の父親が知っていたら絶対に通さない。
完全に、隙をつかれたとしか思えない。
「
……ごめん」
「
――君が悪いわけじゃない」
言い方がよくない。
どういう風に、口に出していいか分からない。
すなおに謝罪をくちにした子は、じぶんが悪いのだと思っている。
僕が
……一郎が、どんなに言ってもだめだろう。
ふせた睫毛にくっつく、ちいさなラメがまるで涙のようで腹の底がザラついた。
先ほど連絡のあった内線では、
復旧のめどが立ったと言っていた
――ただし、今から三十分程度はかかるらしい。
まじまじと、レースまみれの格好を眺めてしまう。
非常に腹が立っているし、機嫌もすこぶる悪いが、それを抜きにしたらかわいい格好だと思う。
似合うか似合わないかでいえば『すごく、かわいい』
――それに尽きた。
――すでに誰かに見られたものだと、思わなければ、だ。
「??? あくまくん?」
「
……、
……」
ぐしゃぐしゃの黒髪をまぜてやって、手に馴染む感触に落ちつきをとり戻そうと、一郎なりに努力してみる。
ぽすっとつむじに顎をのせ、ようやく深く息を吐き出したが、ダメだ。
白いウィッグは簡単に取ることができた。
撮影中はしっかりと固定されていたらしいが、着脱したあとエレベーターに乗り込むのに誰にも見つかりたくなくて、取りあえずかぶったらしい。
膝のあいだに収まったまま、抵抗をまったくしないメフィストは、まだ混乱中なのだと思う。
「
……パパに、いう?」
「は?」
「あくまくん、パパにいう
……?」
なんの話かと思えば。
こんな格好のきみが世間に出回ってしまうまで、黙っているつもりなのか。
こんな撮影、無効に決まってる。正式にこちらから苦情をいれて、今後一切つきあいたくないぐらいだ。
……それは大人たちが決めることだが。
交渉においても、息子関係においても、火力が強すぎるあの悪魔がでてくればたやすい。
一郎個人の感情としても、ぜったいに嫌だった。
「
……おれが、打ち合わせした。だからこれはおれの責任だ」
「悪意があってもか」
「
――これはしごとだ。おれたち仕事してんだよ。おれが責任取らないとだろ」
「話にならない」
まるでじぶんに言い聞かせるように呟く子は、かたくなだ。
こうなってしまうと拗れるのを一郎はよく知っている。
「
……!!?? あくまくん?」
「黙ってろ
――」
「な、にっ、」
ここ、カメラあるぞ。
とっさに低い声を耳に零してやる。
かわいそうなくらい、身体がいっしゅんで強張った。
死角になる場所は計算済みだ。万が一があるので、コートは着せたまま。
際どいレースまみれの衣裳をまとった太ももに、ぐっと腕をつっこんでやる。
やわい肌とつるりとしたナイロンの生地がなんともいえない。
内ももの震えが、ダイレクトに伝わって
……ごくっと喉の奥が無意識に鳴った。
「ゆ、ゆび
……っや、だぁっ、」
「
――しゃべるな、」
心もとないレースの隙間から、かわいいアソコに指を挿入しようとしたところで、ささやかな抵抗があった。
こんなところでナニすんだって、尖らせた目許に口づけてやる。
「こういう格好させるって、こういう意図に使われるってことだろ」
――おまえは、分かっているのか? って。
「なに、ゆって」
「撮影は? ベッド? ソファ? 君のマニアックなファンのために台所か?」
「
……っ!」
どれが当たったのだろう。
まだ睨んでくる目許がじわっとかわいい色になってしまってる。
――僕のことなど、殴ればいいのに。
父親に黙っていけないことをしてしまった罪悪感がそうさせるのか。
抵抗すらできない、かわいそうな身体だ。
「あくま、くんっ」
「
――脚をとじるな。ほら、ここ触られるのすきだろ」
黒いコートのなかで、くにくにと白いショーパンの上から性器を弄れば、すぐにそこはいやらしい反応を返してくる。
一郎の手で男を知った身体だ。何度くりかえしても、ちっとも慣れてくれない。
かわいい。
かわいくて、かわいそうなからだ。
こんな君を知るのは、ぼくひとりでいい。
ぼくだからいいと言ったのは、きみなのに。
「
……すごいな
……もう、指が這入る」
「っ!」
くにゅぅっと、骨ばった指を挿入すれば、あつくてやわらかいアソコがきゅうっと締め付けてきた。
半分でもじゅうぶん『誘惑のあくま』である子は、もの欲しそうに男に使われる場所を、くちゅんっと濡らしている。
じたばたとゆれる小さなひざが、どうしようもなくかわいい。下着とかわらない衣装越しに、ピンク色の性器が滲んでしまってる。
「あー
……くそ、
……っ」
角度によっては少しでもずれたら恥ずかしいところが見えてしまいそうな衣裳のしたに、メフィストは何も付けていなかった。
まさか、このまま撮影したのか。
「ぅ、ぁんっ!」
ぐにぐにと、擦り付けるように性器を悪戯すると、仔猫のような鳴き声とともに、透明な汁が染み出して
……ますますそこを濡らしていく。
いじわるをしている一郎のうでに、まるいおでこをぐりぐりと寄せているのも、かわいくかわいくて仕方なかった。
黒いコートのなか、レースまみれの格好で、ピンクの性器を悪戯されている光景は酷く卑猥だ。
「だから脚、とじるな、って
――」
どうしても閉じようとする膝裏を掴んで、ぐっと大きく開かせる。
ぴっちりとしたレースが、かわいい性器に、ぎちっとまとわり付いていてこれでもかと言うくらい、いやらしい。
ぢゅぶぅっ
ぐちゅっ、ぐちゅうぅうっ
「~~~~っ、
…ぅっ」
ずらした股布の横から、やわらかなアソコを指で弄りまわす。
男を知っているぴんくのそこが、もっと硬くて大きなものを欲しがるように、きゅうっと収縮した。
「なぁ、ここ、いたずらされて
……っなんども、なんども捻じ込むの想像されるんだぞ、おまえ」
「!!」
のどがやけに乾く。
かすれた声だがこの子には充分伝わったようで、ぎゅっと目をとじてすっかり固まってしまっている。
「っ、ないっ、」
しない。
おれのファン、そんなことしない、って。
この子の中では、想像もつかないことらしい。
ひっしに声を尖らせている。ふるふる首をふっているが興奮を煽るだけだ。
「
――僕だって、きみのファンだ」
しってるだろ。
ぼくがいちばんのファンだ。
そう言ってやったら、まるっこい目をぱちりと瞬かせたりする。
とまどう眼差しが、ゆっくりと一郎にあずけられた。
「そう、なの?」なんて、ゆるんだ口をぽかんと開いたりするものだから、こっちがびっくりしてしまった。
「きみが出るっていうから
……水ようび早起きしてるだろ」
朝の情報番組。
リアタイしたいから起きるようになった。
――この僕が、だ。
「あの雑誌。2世と特集組まれたっていうから、初回限定盤を逃さないように予約サイトに待機してF5押しまくった」
出回りが少ないから大変だったし、クソ転売野郎を見つけては呪った。
今回とは逆に、真っ黒なレースがあしらわれたブラウスも、
ぴったりした革の短いパンツも。小さな手で抱えた膝のしろさも。
真っ赤なソファのうえで笑みもこぼさず、じっとこちらを見上げてくるめずらしく生意気そうな顔も、ぜんぶ、ぜんぶかわいかった。
「
……本棚にあるなぁ、とはおもった」
まっすぐな双眸が一瞬、うろ
…っと彷徨うものだから、ほんとうに動揺しているらしい。
あどけなく首をかたむける子に、今さらのように一郎は告白をしている。
なんどもいうが、この世でぼくがいちばんだ。
それはきみのパパにだって誰にだって譲れない
――、
「
――パパもね、なかなかのモンだよ?」
「ハ?」
「
…ぱぱ
…っ」
ゆるゆると、ようやく動いたエレベータの扉が、ガコンっと勢いよく開く。
悪魔って地獄耳だったか?
聞こえていないはずの会話のつづきを繋げながら、やたら笑顔のお迎えがそこにあった。
『ああ、エッちゃんと真吾君は生涯殿堂入りだから
――』
などと聞いてもない追記をしながら
――。
・
・
・
「エレベーター、調整中だって言い張るから待たせてもらったよ。
壊すとうるせぇし余計に面倒だしね、こういう公共の場所は。ところで3世はうちに連れ帰るけど異論は?」
「
……、
……」
口早に詰められ、一郎はいっしゅん答えにつまる。
立てない状態の子は、しっかりと腕におさまったままだ。
いやだ。帰したくない。
きょうはぜったいにいやだ。
子どもじみたことを、みっともなく喚いてしまいそうだった。
それでこの腕のなかの子を離さなくてすむなら、何でもするのに。
「
……おれ、あくまくんとかえる」
「3世???」
「メフィスト
……?」
ぽつん、と。
でもはっきりと、レースまみれのあくまの子が父親に宣言している。
――ぱぱ。
きょう、おれしっぱいした。
ちゃんとはなす。
だめなこと、するとこだった。
「3世
……」
そう、ひっしに伝える子にさっきまで仁王立ちしていた悪魔が思案の顔になっている。
なによりこの格好だ。色々と思う所もあるのだろう。
――結局。
そもそも研究所の冷蔵庫、無事じゃないだろう? と痛いところを突かれ、
最終的に『一郎くんもいっしょに』埋れ木家に帰ることになってしまった。
2世が運転する帰りの車内は気まずかったが、一郎は大事なことをすべて伝えきれていないし、
この子に伝えるべきことが、まだまだいっぱいある。
「
……あくまくん」
なんのナイショばなしだろうか。
一郎の耳元に手をそろえた子が、こしょこしょと何か伝えようとしてくる。
そうして本日いちばんの衝撃を、一郎はくらうハメになるのだ。
「
―――あのさ、」
おれもあくまくんの
いちばんのファンだよ。
・
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(いちろうくん、事件です!)
・ ・ ・
ドルパロ🥞🎩3️⃣まとめ
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22117540
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