Dr.ギャップ
2025-02-01 11:19:04
5393文字
Public 企画案内
 

短詩の闇鍋会

短詩の闇鍋会(2025年冬開催)企画用ページです。
たくさんのご参加ありがとうございました!
(2025.3.10最終更新)

1ページ――持ち寄りの部(作品まとめ)
2ページ――テイスティングの部(感想まとめ)
3ページ――企画案内


テイスティングの部


冬の市 驢馬に負わせた買物は屠るに易い贄を盛る皿   さと八
ぱっと読んだときに浮かんだ「驢馬ごといこうとしてる?」という発想がなかなか抜けず
買ったもの=皿を驢馬が背負っているのだろうと思いつつ、語彙や表記からやはり不穏な気配を覚えます。その驢馬、その皿に載ることになりませんか?
また「闇鍋」の題を思って読むと、買物で調達しているのが食材ではなく皿というところに強者の余裕めいたものを感じました。まずは外堀を埋める、本命に迫るのはそれからで十分、というような。あれ、その〈贄〉って、一緒に闇鍋を囲むはずの私のことではないですか? 〈屠るに易い〉んですか?   ――Dr.ギャップ


マンドラゴラ一つ携え闇鍋に   Dr.ギャップ
中の句が軽やかで、悪事に手慣れていそうです。引き抜いた者に呪いをかける毒草マンドラゴラを手にしているとことは主体は既に心身を蝕まれている?と読むこともできますが、この軽やかさなら金で買った毒だろうと少し安心する程には主体に肩入れしてしまっている
本懐を遂げられるといいなと思ってしまうのです。   ――さと八

どことなく不穏どことなくファニーな句ですね!浮かんだ景としては足早(スキップしつつ)な人物のBGMとしてマンドラゴラの叫び声が聞こえてきました。怖可愛い🪴   ――山と森と街


「それ、人魚。大丈夫、俺も食べたから」   Seira Manabe🕊️🇵🇸🏳️‍🌈🏳️‍⚧️
事もなげに言うではありませんか
壮大な物語が始まってしまうというのに!   ――さと八

“私”がそれを食べた(戸惑っている)ところへの声かけと読んだのですが、どうして人魚だと分かる/知っているのか、いつ〈俺も食べた〉のか、この人魚は〈俺〉が持ってきたのか、冗談なのか本気なのかと疑問が渦巻きます。なにも大丈夫じゃないよ。
闇鍋の具材に人魚(食べると不老不死になるという伝説がある)を入れるというのは、不気味さや不意打ちの気配が馴染む一方で、すぐネタばらししてるっぽいし、二人きりじゃなくて他の参加者もいるかもしれないし、どこか典型的なイメージからはみ出す印象もあり、その手触りを愉快に感じました。   ――Dr.ギャップ

……ってこちらを揺さぶってくる句でドキドキします。大丈夫じゃない!仄暗いイメージなのに「」での発話が日常(光)と地続きを強く感じて好きです   ――山と森と街

暗がりの中で人魚だと分かるということは、人魚の肉には独特のにおいがあるのでしょうか。あるいは、食べると不老不死になるという伝説を踏まえたいつまでも一緒にいようというさりげない告白なのかもしれません。   ――宮本隆邦


風下や蘭方書生の囲む鍋   さと八
江戸時代くらいのオランダからの医学を学んでいる仲間との鍋かなと思うと、今はまだ未知である「何か」が入っている不思議な香りのする湯気がもあもあと立ち込めてきました。未知で少し怖くて好奇心を刺激されそう💭   ――山と森と街

風下という位置取りは鍋の湯気や匂いをまともに食らいそうですが、蘭方書生の囲む鍋ともなれば外つ国の文物が学生の好奇心に任せてあれこれ入れられていそうで、その匂いもいかほどかと想像が膨らみます。〈蘭方書生〉でぐっと風景の奥行きが感じられて素敵でした。   ――Dr.ギャップ


「ちゃんと野菜も食えよ」だなんて闇鍋で   Dr.ギャップ
座興とも言える闇鍋の席でこの発言、暖かくも野暮ですね〜
野暮を承知で言わずにおれない間柄なのでしょうか……言われた方の照れを感じてしまいます。   ――さと八

闇鍋で「野菜も食えよ」なんて言うのは馬鹿らしいといえばそうなのですが、言った側からの優しさというか、言われた側への幼児にいいふくめるような甘やかしが垣間見えて、そして受け手も「だなんて」とそれを認識しているようで、思わず照れてしまいました。好きです!   ――Seira Manabe🕊️🇵🇸🏳️‍🌈🏳️‍⚧️


闇鍋の闇担当!と揺らしてるペンラみたいにボストンバッグ   山と森と街
も~可愛くて可愛くて! 〈闇担当〉に〈!〉をつける無邪気さ元気さにこちらも笑顔になってしまいます。
闇鍋の具材がぎっしり詰まっているだろうボストンバッグの揺れがペンライトにたとえられていることで、みんなで楽しむタイプの闇鍋なんだろうなと想像しました。   ――Dr.ギャップ

闇担当を高らかに名乗って登場、眩しすぎる!何の具材を入れたかすぐ種明かししてしまいそうな憎めなさを感じます。   ――さと八


「問題無い、蛋白質だ」が口癖の九回生へ見舞いを選ぶ   さと八
堂々たる〈九回生〉の姿よ!
一般に言われる「大学は八年まで」をはみ出しての在りように、ある種の偉大さすら感じます。見舞いを選ばれているということは〈問題ない〉では済まなかったようですが、果たして何を食べたのか〈蛋白質〉からあれこれ想像が広がります。   ――Dr.ギャップ


盛んなる湯気もろともに海原へ こたつ完備の方舟の夜   さと八
こたつの置かれた部屋(ワンルーム!と思っています)を方舟に見立てていると読みました。
気の合う友人同士で盛り上がるうちに外界が意識から消え、この部屋で過ごす今がすべてになるような。一方で〈海原へ〉ともあることで、内に閉じこもるのではなくワンダーあふれる広がりを感じていっそうワクワクします。こたつの鍋からもわもわと立ち上がる湯気が方舟の推進力になっているよう。
楽しい夜の様子に羨ましくなりました。   ――Dr.ギャップ


戦友と具材持ち寄る鍋の夜「これも入れよか!」「駄目なやつだろ」   海月 雪夜
〈戦友〉の〈戦〉が実際にそうなのか、比喩(スポーツなど)なのか、今も戦っているのか、過去になっているのかで微妙に読み味が変わるなぁと思いながら読みました。ただいずれにせよ、会話の様子からすると〈戦〉の緊張から離れてリラックスしたひと時のよう。
「これも入れよか!」「駄目なやつだろ」に続いて「ほなこっちを」なんて声まで聞こえてきそうで、気心の知れた友との楽しい時間にこちらまで嬉しい気持ちになりました。   ――Dr.ギャップ

戦友とのひとときがとても素敵な景だなと感じました。発話のチョイスもそれぞれのキャラクター性がとても見えて好きです。たぶん入れちゃうんだろうな。   ――山と森と街


水底に眠る不発弾みたいに渡せなかったチョコを沈める   詩野刃
〈みたいに〉はチョコレートと同時、チョコレートに託すつもりだった想いにもかかっているのかなと思いました。水底の不発弾と違って鍋に沈めたチョコレートはすぐに溶けてしまうけれど、そこにこめた思いは消えることなく眠っているということ。
チョコも消えるわけではなく、確かに味や風味としてあることや、食べることでまた自分のもとへ帰ってくることを思います。   ――Dr.ギャップ


短冊の散らばつてゐる闇鍋会   宮本隆邦
この闇鍋会のことだ! と嬉しくなりました。
また、実際に鍋を囲んで短冊を散らばせている(めいめいに短歌や俳句などを作っている)シーンを想像しても楽しいです。鍋の中も外も混沌としていそう。そしてその混沌こそが怪しい魅力の光を放っているように思うのです。   ――Dr.ギャップ


闇鍋にわたぐわし入れて白くする   宮本隆邦
煙に巻かれる印象の句でした。〈わたぐわし〉=綿菓子は水と熱で溶けるので鍋が白くなるのは一瞬なのですが、その一瞬の〈白くする〉を経ることで闇鍋の闇が塗り替えられてしまったような。綿菓子を入れたのだと分かっていても「え? 何したの?」と聞きたくなります。   ――Dr.ギャップ

わたぐわしは綿菓子なんですね!はじめて知りました。暗闇の中で見えないながらにボチャンでもドサッでもなく何やら入れられた雰囲気のみ入れた人物のみ知る真っ白さというのが不思議で面白いです。   ――山と森と街


闇鍋か創世中かわからない   山と森と街
〈創世中〉から天沼矛伝説を思い出しました。闇鍋という混沌をぐるぐるかき混ぜたら果たして何が生まれるのか混沌と未知、そして裏返せば「何が起こるか分からない」というワクワクを感じます。ちょっとスープをもらってみたい気も……とっても素敵で好きな句です。   ――Dr.ギャップ


もうこれは宝石箱の溶けたやつ   山と森と街
〈宝石箱〉の言葉に、あのグルメリポーターさんの顔がよぎり〈宝石箱〉ってことは美味しいってことで合ってますか!? 〈溶け〉てますけど大丈夫ですか!? 宝石箱が溶けるってよっぽどですよ!! とそわそわしました。
各参加者の持ち込んだ具材が一つに溶け合った、闇鍋終盤の様子と読みます。   ――Dr.ギャップ


「毒なわけないだろ、お前に食わすのに」小鉢を差し出しながらあなたは   Seira Manabe🕊️🇵🇸🏳️‍🌈🏳️‍⚧️
〈あなた〉はどんな表情で、態度で、小鉢を差し出してきたんだろうなあと思います。歌にあるのは〈あなた〉の言葉と動作だけで感情は読めないのが、闇の奥にいて表情の見えないあなたの姿と重なるよう。はっきり分かるのは差し出された言葉と小鉢だけ。信じていいの?   ――Dr.ギャップ


こんとんと煮崩れ先にある銀河   山と森と街
オノマトペ的「こんとんと」が良いです。混沌の意味が崩れる程に煮込まれた闇鍋は、人々を魅了する銀河となるのでしょう。   ――宮本隆邦