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桜霞
2024-04-24 16:30:56
8851文字
Public
【大量クロスオーバー】なにもない清涼学園
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【なに清】十一月
※大量クロスオーバー現パロ
※なんでも許せる人向け
【登場人物】
片岡桜:可哀想だと思われることが地雷
藤井冴美:運動神経は悪くない。体力もある。
藤丸立香:善・中庸
久我深琴(ノルンノネット):由緒正しいお嬢様。桜に嫌われている。
山崎烝:制服の方が違和感あるなどと。
黄瀬涼太(黒バス):モデルもやってるバスケ部員。
乙丸平士(ノルンノネット):気配り上手なお調子者。
門脇歩(プリスト):負けず嫌い。
遠山和葉:平次のことを冴美に相談し困らせている。
服部平次:心が狭い。
沖田総司:アドリブ大好き。
斎藤一:演劇部のファンになった。
毛利蘭(名探偵コナン):めちゃくちゃつよい。
江戸川コナン(工藤新一):小さくなっても頭脳は同じ、迷宮なしの名(?)探偵。
1
2
スピーカーから放たれる爆音が内臓を叩き、肌を震わせる。鋭いピンライトが視界を焼く。
玉鋼同士がぶつかりあう金属音が煩わしく感じるほどに、このひととき演者となっている人間の動きが美しい。無駄なものが削ぎ落とされた剣の構えは真冬の裸木のようだと例えた小説家がいるらしいが、確かにそのしなやかさはいっそ植物のようで、見るものの心を奪って行った。
銀の光が一閃する。四肢の動きに着物の袖と羽織が一枚の絵を描く。これが一枚の写真になればきっと美しいだろうという確信が持てる。己は写真家などでは無いのにも関わらず、だ。
演者の一人が雄叫びをあげた。鼓膜に、心臓に直接叩きつけられるような気合と闘気が膨れ上がる。
だん、と地を蹴った音が重たく響いた。瞬間、世界は無音に支配され、そして───一閃。
舞台には男が一人。ふらり、よろめく男の視界のように、世界は暗がりが覆い、狭まっていく。
最後の抗いか、剣が地に突き立てられ、それを支えにしようとして、男は事切れた。包帯によって柄に固定されていた手が、ずるりと宙を這った。
暗闇に、ぼんやりと、一振りの刀が浮かび上がる。
ホルンとトロンボーン、チェロの低音が徐々に大きくなり、さざ波のようだった観客の拍手が、やがて爆発した。
工藤新一───故あって江戸川コナンと名乗っている東の高校生探偵は、ぽつり、「すっげー
……
」こぼすことしか、できなかった。
舞台が明るくなる。そこには一本の刀が突き立てられており、ひらひらと薄紅の花弁が舞っていた。
調子のいいアップテンポなジャズミュージックを背景に、カーテンコールが始まった。誰かが何かのアニメのオープニングだと興奮した様子で声を上げていた。観客の歓声は最高潮に達している。拍手が手拍子になるのに、そう時間はかからなかった。
二度目のカーテンコールは、流石に演者も照れているようだった。最後のシーンでいつの間にか袖に消えていた演者が一番最後に出てきたと思いきや、突き立てられていた抜き身を手にとって、舞台に残っていた演者達に斬りかかる。観客達はどよめいたが、どこかコメディチックな動きに、結局はどっと沸いて、そうしてようやく幕が降りた。
『以上をもちまして、剣道部による、清涼学園祭特別公演を終了いたします。ご鑑賞頂きまして、まことにありがとうございました』
『本会場は舞台転換のため、もう間も無くすべての出入り口を関係者専用とさせていただきます。お忘れ物のないようにご注意ください』
「お出口こちらでーす!!」
「お忘れ物にご注意くださーい!!」
揃いのスタッフジャンパーを着た学生達がトランシーバーで連絡を取り合いながら客を出口に誘導し、次々とパイプ椅子を片付けていく。
走らないで、押さないで、とスタッフ達が声を張り上げるのを聞き流しながら、観客達は急ぎ足で大体育館と呼ばれる会場を後にした。
◆ ◆ ◆
清涼学園高等部のカフェテリアは、昼食のために利用する客でごった返す、ということもなく、ほどほどの空き具合で賑わっていた。
「あ、おーい!」
目当ての人物を見つけた冴美は、立ち上がって手を振った。入り口付近できょろきょろと辺りを見回していた複数人が、一斉にこちらを向く。知らない顔が二つあることに、冴美は内心で首を傾げた。
冴美がとっていた席に向かってきたのは四人だ。うち二人は夏休みに知り合った服部平次と遠山和葉で、もう二人は黒髪ですらりとした身のこなしの女性と、小学生と見られる、眼鏡をかけた男子だった。
「冴美ちゃん、久しぶり!」
「久し振り、和葉。服部も」
「おう、元気しとったか」
「まあな。それで、そっちの二人は
……
?」
席ならあるけど、と話を振ると、「はじめまして」女性の方が一歩前に進み出た。
「私は毛利蘭です。今日は和葉ちゃんに誘ってもらったの」
「江戸川コナンです!」
「藤井冴美です。はじめまして」
「蘭ちゃんはおないで、コナン君は
……
いくつやったっけ?」
「一ねんせい!」
にぱっ、とコナンは可愛らしい笑顔を作った。へえ、小学一年生か、と冴美は頰を緩める。
「ほんなら、席取っといたるさかい、なんぞ飯買うて来てくれ。藤井、案内頼めるか」
「いいぜ! 任せろ」
冴美は快く引き受けた。その内情は、初対面の人と一体何をどう話せばいいのかという不安でいっぱいだったけれど。
「コナン君、食べたいものとかある?」
「うーん、蘭姉ちゃんにまかせる!」
「わかった。じゃあ服部君、よろしくね」
「おう」
「後で総司達来るって!」
先導しようとしていた冴美が慌てて言い置いたのに手を振って、服部とコナンは腰を降ろした。
「総司って?」
コナンの声がワントーン低くなる。気にした風もなく、服部はコナンの疑問に答えた。
「沖田総司や。去年高校剣道で全国一位になった男で、藤井の彼氏」
「そうなのか」
「工藤、リュック貸せ。二つ分席取らな」
自分の小さなリュックを手渡しながら、二つ?とコナンは首を傾げた。
「たぶん、片岡も来る。最後のカーテンコールで暴れとった奴」
「あぁ、あの人」
舞台の最後で男を斬り捨てた演者だ。
「お前らを誘ったんも、沖田に来おへんか言われたからやってん。どうせなら顔見たろ思てな。和葉も喜ぶし」
「そうだったのか
……
」
清涼学園は、学生が主役となって作り上げる祭り、所謂文化祭を、大学、高等部、中等部で同日に開催している。自然と規模は大きいものになり、高校生にしては、中学生にしてはクオリティの高いエンターテイメントが提供されていた。
きっと楽しめるし、会えるならまた会いたいし、おいでよ。冴美ちゃんも和葉ちゃんに会いたがってたし、と総司は服部を誘ったのだった。
「片岡は来るな言うとったけどな。散々人のこと小馬鹿にしよって、誰が事件吸引率99%のダイソン(ブラック)やねん」
コナンはうっかり吹き出した。服部は額に青筋を浮かべてコナンの頭をわし掴んで力を入れた。
「いでででで」
「笑たのはこの口か? お? お前も似たようなもんやろうが」
「いひゃいよはっほいひーひゃん!!」
「おっまえ、こんな時ばっかりそういだっ!!」
すぱあん、と小気味良い音を響かせて、コナンの頰を引っ張っていた服部の頭がはたかれた。
思わず突っ伏した服部の背後に立っていたのは、先程舞台で観た演者のうちの一人である。彼は目を据わらせて服部を叱責した。
「貴様、このような場で幼子に対しそのような悪逆を働くとは、見損なったぞ」
「斎藤!? いやこいつの中身はそんな可愛いもんや」
「問答無用!!」
「まぁまぁ落ち着いて、一君」
振り下ろされようとした斎藤の手刀をがしりと止めたのは、これまた演者のうちの一人であった。
「沖田!」
碧色の猫目が服部とコナンを見やる。そうして彼は人好きのする笑顔を見せて、「気をつけてね」とからかうような声音で言った。
「一君は、ここらじゃ知る人ぞ知る風紀委員副委員長だから」
「せやったんか
……
」
服部は恐ろしいものを見るような目で斎藤を見やった。斎藤の手刀はまだ勢いがあるのか、総司の腕には血管の筋が浮かんでいた。力を入れている証拠だ。
「あんた、頰は大丈夫か。見たところ腫れてはいないようだが」
「うん、もう大じょうぶだよ!」
「そうか、なら良いが」
総司が斎藤の腕を解放する。斎藤は荷物で塞がれていた席の一つに腰を降ろすと「俺の目の前で風紀を乱すことは許さん」狼のような眼光で以て服部を射抜いた。
「へぇ、気をつけますゥ
……
」
「ところで、冴美ちゃん達は?」
「あぁ、好きなもん買うて来てもうてる。お前ら、昼はどないするん」
「買ってきた。先に食べようか」
総司がテーブルにビニール袋から取り出した唐揚げの串刺しや焼きおにぎり、焼きそばやたこ焼きを並べていく。飲み物は各自でね、の言葉に、コナンは水筒を取り出した。
「片岡は? どないしてん」
「さぁ? あ、ライン来てるよ、服部君」
「お? ほんまや」
スマホをテーブルの上に放り出していた服部は、片岡が写真を送信しましたという通知に首を傾げた。
滑らかな動作でラインが起動する。
「っ、!?」
トーク画面には、少しだけ頰を赤らめて慌てた風情の和葉の肩を抱き寄せ、いつもの無表情鉄面皮でこちらを見遣る桜が写っていた。
直後、ぽこんと緑色の吹き出しが増える。
『デート』
「許さん」
服部は反射的にそう返信していた。
「あ、合流できたんだ」
横からスマホ画面を覗き込んだ総司が「じゃあ、もう少しかかるね」と椅子に座り直す。
「
……
平次兄ちゃん、おかおがすごいことになってるよ?」
「俺、迎えに行ってくるわ。テーブル保守は任せたで」
こちらの返事を聞かないでテーブルを離れる服部に、「早めに戻ってこい」斎藤が声をかけた。
「心が狭いねえ」
総司が頬杖をつきながら言った一言に、コナンは心の底から「ほんとにな」と同意した。
もちろん、その普段よりワントーン低い声は、声には出さなかったけれど。
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