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桜霞
2022-10-01 16:48:37
9457文字
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【twst夢】フライパンは無敵
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無題
#twst #twst夢 #not監督生 #女監督生 #オリ女主 2020/07/23にpixivに投稿したものの再掲です。
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3
自然であれ、創作物であれ、美しいものはおそろしい。
美しいものをこそ、おそれなくてはならないのだ。世界はそう出来ている。
そう授業したのはトレインだったか、クルーウェルだったか、少年たちは思い出せなかった。
「素股とか結構イけるらしいぜ」
「は? キモ」
「最悪しゃぶらせるだけでもいいだろ」
「録画とかしといたらバカみてえに脅せるってよ」
「つーかフツーにサンドバックでよくね?」
思い出せなかったが、話半分に聞いていたそれが本当だったんだなと、彼らは身をもって知ることになる。
「男だろ? 勃つか?」
「顔が女っぽいし、いけるだろ」
「場所どうする?」
「森が一番」
「やだよ、汚ねえし」
「校舎内はバレるだろ」
「魔法使えばいーべ」
「じゃ、ウチの裏にでも来るか?」
「は? ウチって寮か、よ
……
」
木の葉を隠すなら森、内緒話を隠すならざわめきの中。
不良共は、真昼間の大食堂で、堂々と猥談に興じていた。男子校であるからして、珍しくもない光景だ。ちょっとばかし内容が過激だろうが、敢えて咎めようものなら面倒事になるに決まっている。放ったらかしにされることが分かっていた上で、彼らはあけすけにいじめのターゲットをどうするか相談していたのだ。
「学園の校舎からはちょうど死角だぞ。まぁ多少、ゴーストはいるけれども」
木の葉を隠すなら森、内緒話を隠すならざわめきの中。
そして、気配を隠すなら、人混みの中。
または、噂をすれば、影とも言う。
不良共は、血の流れが止まったように錯覚した。心臓が耳元にあるかのようにけたたましく音を立てる。
「さて、どうする?」
うっそりと、そのひとが微笑む。
整った中性的な顔は、質の良い化粧品に美しく彩られていた。細い手首には品の良い時計が嵌められ、着ているものには張りがある。
弱々しい、吹けば倒れてしまいそうなリンは、文字通り面影しか残っていない。
その場の空気だけが凝った。周囲のざわめきはひとつとして澱むことはなく、いつも通りに大勢の生徒が行ったり来たりを繰り返している。
かちこちに表情を強ばらせた生徒達の中で、リンだけが異質だ。ただひとり、にこにこと微笑んでいる。
誰も何も言わなかった。いや、言えなかった。
今から陵辱しようとしていた相手に、どうして朗らかな挨拶が出来ようか。
いや、今までのリンならば、いつものように絡めていたかもしれない。馴れ馴れしくパーソナルスペースを無視して、ぐいぐい迫れていたかもしれない。
───聞いてない、
見目をきちんと整えるだけで、そのひとへの印象はがらりと変わる。己の力でねじ伏せられそうな見目のリンしか知らなかった不良共にとって、これは正しく衝撃だった。
───聞いてない!!
弱々しい、今にも死んでしまいそうな小動物が、その実太刀打ちできそうにもない強者だったなどと、一体どうやって想像できただろう。彼らはリンの為人を知らなかったので、余計に衝撃を受けていた。
「ハッ、」
それまで、ただ黙って微笑んでいるだけだったリンが、唐突に口端を吊り上げた。
全ての視線がその
顏
かんばせ
に吸い寄せられる。その悉くを受け止め、全てをいなし、リンはすとんと感情を消した。
「口ほどにもねえ」
ガン、とナイフがテーブルに突き刺さる。不良共の肩が一様にびくりと跳ねた。
ナイフから手を離したリンはあっさりその場を後にした。まるでその場には目もくれなかったかのような様子で、颯爽と立ち去ったのだ。
長テーブルの、数席ぶん、間を空けただけの距離を置いて座っていたサバナクローの寮生達、そして情報を集めようと敢えて彼らの近くに座っていたトレイとケイトは、ぽかんとしてリンを見送り、
───ク、クソクソクソカッケェ
……
!!
……
この瞬間に、リンのために身を砕くことを良しとした。
だって年頃の男の子なのだ。カッケェものには準じたいし、その礎になれるのならば本望だ。少年たちは本気でそう思っていた。
腕力にも、知略にも、権威にすらおもねることなく。
リンは、ただリンであるという、たったそれだけで、己に害をなそうとするものを跳ね除けるどころか、容易く細い踵で穿ち潰した。
「リンには逆らわない方がいい」
「リンの庇護下にあるオンボロ寮の監督生達にも、変に絡まない方がいい」
この出来事は、抑止力として十二分に効果を発揮した。
案外、人は見ているもんである。娯楽の少ない学園という箱庭故に、噂はすぐに広まったのだった。
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