かいえ
2025-01-25 02:17:34
4910文字
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【タケミチ愛され】東京卍會の不文律 ②

本誌第277話を見て堪らなくなり書いたお話
総長代理だから相談役な代理みっちを書こうと思ったのに、出来上がりは全然違うものに…
幹部からのみっちへの愛が重過ぎて、モブが近寄れず相談役にするのを断念しましたやつです
モブ視点
4,907文字

「オマエだな。花垣に金を貸した奴は」
 東京卍會漆番隊所属の九井さんが、不敵な笑みを浮かべながら俺にポチ袋を渡してきた。その背後には東京卍會の幹部が何人も立っていて、ぎょっとしながらも、そういえば、花垣さんは「後から返すから」と言っていたことを思い出していた。
 けれども、たかが十円の為に、沢山の幹部が下校時間に合わせて校門前まで来なくても良いのにと思う。貸したお金など集会の時にでも返して貰えれば良かったし、そもそも十円なんて返ってこなくても良かったのだ。というのも、幹部は全員特服を着ていたし、全員顔面偏差値が高くて、俺の日常風景では目立ち過ぎていた。さっきから、校門から下校している生徒たちが、好奇の目で遠巻きにこちらをちらちら見ているのだ。
「あ、はい。わざわざすみません
 俺は恐縮しながらポチ袋を受け取ると、制服の上着のポケットにそそくさとしまった。
 それで終わりの筈なのに、九井さんは俺の前から去ろうとしないので、俺もその場から動けない。花垣さんに貸したお金は、しっかり返してくれた訳なので、俺への用事は終わったのに、何だろうと思った。すると、九井さんが「それにしても失敗したわ。いつも誰かが一緒にいるから、花垣に金を持たせていなくてさ」と、唐突に語り出した。独り言のような言葉で、俺はどう答えて良いか分からず黙っているしかない。それなのに、九井さんの視線は俺をまっすぐ見ているのだから反応に困る。しかも、九井さんは笑みを浮かべているけれど、猫のようにつり上がった目は笑っていなかった。
 九井さんに何か粗相をしただろうかと考えたが、特に何も浮かんでこない。俺が九井さんのことで知っている事があるとすれば、金を作る名人で、いつも財布の中に札束が入っているらしいという事だけだ。
 すると突然「オマエなのか?」と、九井さんの少し後ろに立っていた、同じく漆番隊所属の乾さんが俺に向かって口を開いた。その声は低く怒っていて、犬に唸られている時の感じに似ていた。何かを確認しているようだが、俺には何のことか分からない。答えられずにいると、俺のことを殴り殺しそうな目で、じっと見てくるから身の危険を感じた。何しろ、手には愛用の鉄パイプを持っているのだ。いつそれが俺の顔面にヒットするか分かったものではない。
 顔だけ見ればめちゃくちゃ整っているモデルのようなのに、どうしてこんなに喧嘩っ早くて凶暴なのだろうかと思ってしまう。
「タケミチの傷に触れたんかよ? オマエごときが一億年早いんだよ! マイキーが呼んでるぞ、クソがっ!」
 伍番隊隊長の春千夜さんが、俺のシャツの襟元を掴んで恫喝してきた。春千代さんは黙っているとクールビューティーなのだけれど、口を開くと東京卍會一口が悪い。
 至近距離で初めて見た春千夜さんの顔は女性みたいに綺麗でドキリとする。ピンク色に染めた胸元まである長い髪は、さらさらのストレートで春千代さんの顔の周囲でシャンプーのCMみたいに揺れていた。長くばさばさとしている睫毛が目の下に影を作るほっているのは、同じ伍番隊副隊長の千壽さんと一緒で、兄弟である二人はほぼ同じ顔をしていた。だから、女性みたいというより、ほぼ女性と言っても過言では無い。しかも、特別綺麗なアイドルみたいな派手な顔だ。そんな顔がすぐ目の前にあるのだけれど、嬉しいという気持ちより先に、死にたくないという気持ちが残念ながら先に来る。 何故なら、春千代さんは常に日本刀を持ち歩いているヤバい人で、今も首のすぐ傍に鞘から抜かれた刃があった。鉄のひんやりとした冷たさと重さにゾクリとさせられる。切っ先に陽に当たって輝き、目の端でその存在を訴えてきている。少しでも動けば、俺は一瞬であの世行きだ。マイキーさんが俺を呼んでいなかったら、きっとこの場で切り殺されていただろう。
 察しの悪い俺は、ここにきてようやく、どうして幹部たちがわざわざ校門前まで足を運んで、俺なんかみたいな下っ端を待っているのかを知った。俺花垣さんに貸した金を返しに来る事がメインではなく、マイキー君の指示で俺を連行する事が真の目的だったのだ。
「春千代、間違っている。こいつは、花垣の手の甲の傷に触れたんじゃない。キスしたんだ」
 捌番隊の六本木のカリスマと呼ばれる灰谷兄弟の弟の方、灰谷竜胆が冷たい目で俺を見て付け加えれば、捌番隊の灰谷兄弟のヤバい方、兄の灰谷蘭が「もう、このままバラしても良いかもね♡」と、亜熱帯でも凍りつきそうな冷酷な笑みを浮かべて、俺を東京湾のお魚の餌にしようとしていた。
 この兄弟は別注で白い特服を作って来ていたので、黒い特服ばかりの集会において、とても目立つ存在だった。そして、灰谷兄弟のコンビネーションは最強で、竜胆さんが関節技で相手を締め上げた後、何本か骨を折り動けなくしていうところを、蘭さんが警棒でボコボコに殴りまくるというものだ。二人とも終始ニヤニヤして暴力を楽しむタイプだ。出来たらお近づきになりたくない相手である。
 どのみち、マイキーさんのところに連れて行かれたら死ぬような気がしてきた。一人で二万人の相手が出来ると豪語する無敵のマイキーさんの前で、俺が一体何が出来ると言うのだろうかと思うのだ。幹部がここまで怒っているのなら、花垣さんを「ダチ」と呼びいつも自分の近くに置いているマイキーさんがどれくらい怒っているのだろうかと考えて、もう明日は訪れないのかもしれないと、絶望的な気持ちで連行されたのだった。