ぎん
2025-01-23 20:22:51
4264文字
Public うちよそ話
 

冒険者は孤独を愛す




 男は軽い足取りでウルダハの路地を抜けていく。ウルダハではあまり見ない種族の男。無骨なガンブレードを抱え、少し人目を引く銀髪を靡かせ煙草をふかしながら向かう先は、大通りから少し外れた所にある親友が経営しているBARだった。closeとかかげられた看板を横目に扉を開けると、そこには今も変わらない親友がバーカウンターにおり、柔らかい笑みを浮かべ歓迎していた。

「アオ、よく来たね」
「アレンお前に呼ばれると大概めんどな依頼だと思ってるぜ俺は」
「まぁそう言わないでよ、そんな親友にとっておきの依頼さ」

 そう言ってバーカウンターを挟んでアレンは微笑みながら話す。椅子に腰掛ければ、アオにとって馴染み深いお酒が目の前に出され、それをあおりながら話を聞くことにした。

実は知り合いの情報筋から聞いたんだけどウルダハからグリダニアまでの護衛の依頼があってさ。ちょっときな臭いんだよね」

 アレンはそう言ってアオのグラスにお酒を注ぐ。目の前に資料を並べる。嫌だと言えば簡単だが、アレンは笑みを浮かべながらアオの返事を待っている。

お前の所の奴らで出来るんじゃねぇの?」
「大事な息子や恋人達をそんなところに送れるわけがないだろ?あと俺はアオの実力を信用してる。表立って動けない依頼だから、アオに頼んでるんだ」
「お前なぁ……

 表立って動けないならお前の仕事だろうがと文句を言う。目の前の男は暗殺ギルドの手練れで、対人相手に特化しているというのに。アオがそう言えば、アレンはクスクスと笑いながら、情報屋としてココを離れることは出来ないのだと告げた。全く、人使いが荒いやつだ。目の前の資料を手に取り、アオはパラパラとめくりながらアレンの次の言葉を待つ。

「それで、俺の親友は受けてくれるかな?」

 アレンはニコリと笑みを浮かべ、アオは深いため息をついた。

*****

 翌日、アレンから依頼を受けたアオは中央ザナラーンにあるナル大門前にて依頼主との待ち合わせだった。問題はこの依頼主、依頼をブッキングさせたという事だった。

「いやぁ、すまない。そんなことをするつもりはなかったんだが」

 依頼主のあからさまな態度に、アオは苛立ちを隠せない。自身の煙草に火をつけ、ため息と共に煙を吐き出す。依頼主の元に集まった目の前の男と女を交互に見比た。どちらも種族はエレゼンで、女の方は麗しく、女性受けするような顔立ちに女性にしては短めの髪。溌剌とした目をしている。こちらは冒険慣れしている冒険者だろう。男の方に目を向ければ、少し色白だが服で隠れているが筋肉質な体系をしているのは目にとれる。サングラスをし何処か柄が悪そうにも見えるが、身なりでそこそこいい所で働いているであろう別職の男だと言うのがわかる。そんな自分を見て、目の前の男は少し躊躇うように話をする。

「まァ、こうなっちまったなら仕方ねェよ」

 男はかけているサングラスを外し、軽く頭を下げる。

「俺はレジナルド。好きに呼んでくれて構わねェよ」

 そう言って軽い挨拶を済ませる。それを聞き、エレゼンの女の方も口を開いた。

「ぼくはロゼル。君達と同じ依頼を受けてブッキングしてしまったと聞いているよ、こんな形でも一緒に仕事が出来て光栄だ」

 そう言って差し伸ばされた手をアオは見つめ、「握手はしねぇから横の男としろ」と告げると、「キミは気難しそうだ」と笑いつつレジナルドと握手を交わしている。

「そして、キミの名前は?」
……アオだ。お前らと馴れ合う気はない。仕事をとっとと片付けるぞ」

 ロゼルがそう聞くと、アオはぶっきらぼうに答える。ウルダハからグリダニアまでの護衛とはいえ、他人と行動するのを嫌がるアオはそう冷たく返し依頼主の元に文句を言いに去っていく。その場に残されたロゼルとレジナルドはお互い顔を見合わせ、軽く肩をすくめて依頼主の所に行った。

*****

 キャリッジをゆっくり走らせ、ザナラーンから黒衣森に向かう。南部森林からロウアーパスの下を通り、キャンプ・トランキルを抜けていく。キャリッジ内にはロゼルを乗せ、男二人は徒歩で着いていく。キャリッジを走らせていた雇い主がポツリと口を開く。

「急いでいるので蛇殻林の方に抜けて行きますね」

 その発言にレジナルドは少し引っかかりを覚えたのか、依頼主に軽く問いかけた。

「オイオイ、そっちの道は普通に危ねェんじゃねぇか?あそこは危険な生物も多いじゃないか」
「冒険者が3人もついてきてくれてるから大丈夫でしょう。それより早くクォーリーミルに着いて一泊した方がいいでしょう?」

 レジナルドの問いに依頼主は答えるも、顔つきが少しだけ強張る。

どうでもいい、近道するならしろ」

 アオはそう言うとガンブレードを抜いてキャリッジの横を歩く。依頼主の不穏な動きに警戒をしつつ辺りを見渡す。何も変わりはない道のりではあるが、きな臭いと言われた事が頭から離れない。
 蛇殻林に入りかかったその時だった。キャリッジに乗っていたロゼルが口を開く。

……何でこのあたりに居るはずの生き物が居ないんだ?」

 ロゼルの疑問は正しく、レジナルドもアオも生物が一切いないことに違和感を覚える。

!!レジナルド避けろ!!」

 ロゼルが上を指差し声を張り詰め、レジナルドに避けるように指示を出す。レジナルドが回避行動を取れば、元いた場所には矢が数本地面に刺さる。咄嗟の事に少し唖然とするレジナルドにアオは構えたガンブレードを矢が飛んできた方向に向けソルトを撃つ。うめき声と共に人が瓦礫の影から倒れる音がする。
 ロゼルもキャリッジから降り、剣を構え、辺りを見渡す。

どうやら俺達はハメられた見たいだなァ」

 レジナルドが髪をかしかしとかいて依頼主の方を見る。キャリッジから降りたロゼルを見た依頼主はチョコボを走らせ去っていく。

……今いる人数は6人程度弓が残り2、ローブの擦れる音がするから魔術師が1、ホラ剣やら近接武器を持った奴らがゾロゾロお出ましだぜ」

 アオは耳を澄ませ、的確に敵の人数を当てていく。3人は武器を構え、戦闘体制に入る。

一応聞いておくが、殺すか?」
「いや、こういう時は吐かせたいから捕縛しよう。双蛇党に突き出すんだ」

 ロゼルがアオの返答に答える。レジナルドが「流石に全員を捕まえるとなると骨が折れそうだ」と呟きながら斧を構え、アオは面倒だなと言わんばかりにガンブレードを構え直す。欲している情報があるなら全て吐かせるまで。3人は背中を合わせ、飛びかかってくる奴らを徹底的に捌きコテンパンにする事にした。
 戦闘慣れしているであろうロゼルを筆頭に相手に斬りかかっていく。峰打ちは慣れたものと言わんばかりに2、3人軽くのしていく。レジナルドも小言をいいつつ隠れている弓術士をホルムギャングを使い捕獲していく。アオは詠唱している魔術師にトラジェクトリーを使い、相手へ一瞬に近寄り、インタージェクトを使い詠唱を止めさせそのまま拳でぶん殴って気絶させる。

「そんなのアリかよ

 アオの行動にレジナルドが苦笑いをうかべ、ロゼルはふふっと笑みを浮かべる。

「気絶させればなんでもいいだろうが」

 気絶させた魔術師を蹴飛ばして確認するアオに「おっかねェ人だ」とレジナルドは肩をすくめた。

*****

 クォーリーミルで捕縛した連中を双蛇党に引き渡す。ロゼルが双蛇党の一人に話を聞いてる間、レジナルドはその様子を見守り、アオは煙草を吸いながら話が終わるのを待っている。二人の間に会話は無いが一仕事を終え、一息ついた雰囲気を漂わせる。

「双蛇党に引渡しが終わったよ、どうやら最後の群民の残党が血の生贄のために冒険者を片っ端から襲ってるみたいだ」
あー、あのダラガブを崇めるカルト教団の……
「あぁなるほどな、きな臭かったワケだ」

 話を終えたロゼルが、二人の元に戻ってくる。俺たちを誘き出し、襲ったのはかの有名なカルトの集まりだったワケだ。二人がこの状況を知ってか知らずかどちらにせよ巻き込まれたとこに変わりはない。アオは少し気まずそうにタバコを蒸して報酬の話になる。

「アー依頼主はとんずらして、俺たちは金を手に入れる方法を失ったワケだ」

 アオはそういうと、少しだけ目を下に向け、少し不服そうに唸る。

「この情報、俺に譲ってくれないか。この情報を欲しがってる奴が居るんだ。俺の雇い主だけどな。多分そこからお前たちに金も出せる、どうだ?」

 アオの提案に二人は顔を見合わせる。二人とも無報酬、もしくはこの情報を売ってどうにか金にしたであろう。しかし金にならない可能性もある。ロゼルもレジナルドも少し考え、まあ無報酬よりはマシだろうと頷いた。
 
「じゃあ後はモモディから受け取ってくれ、話は通しておく。じゃあな、2度と会う事はねぇだろうけど」

 アオはそう言って二人と別れる。ニコニコ顔で情報を待っているであろう親友を思い浮かべて、若干の苛立ちを覚えて舌打ちをする。これだから人使いが荒い奴は嫌いなんだとぼやき、またタバコに火をつけて憎めない男が待つウルダハに帰っていく。

 後日モモディから、二人にちゃんと報酬金が渡され、「巻き込んだお詫びだそうよ」と色がついた金額を提示したよとBARを訪れた時にアレンから聞いた。

「そうか、ならいい」
「自分の財布からも出すなんて律儀なやつ」
「巻き込んじまったからな。どうあれやっぱ俺は一人行動が性に合うわ」

グラスを回し、氷とガラスが軽く当たる音がする。やれやれとアレンは肩をすくめるが、アオはそんな親友を横目に、久々に人と行動したなと思いを馳せつつ酒を楽しむのだった。