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花筵シヂマ
2025-01-15 11:54:23
11231文字
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旺惑4
四十路父×十代前半の水(ショタ)の背徳的な話
年齢操作×転生父水
父はずっと前世から水を待っていた
親愛から恋愛に変わる話
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修学旅行を終えてしばらく経過してから、父は宣言通り出て行ってしまった。
とはいえ、荷物はほとんどあり、家に帰らないだけで、学費もしっかり振りこまれている。水木はゲゲ郎の屋敷に通うのを止め、髪を短く切りそろえた。短髪にした水木を見るなり、クラスメイトは何やらひそひそと話していたが声をかけてくることはなかった。
やがて秋が深まりだし、紅葉の赤色が濃く染まり始め、水木も長袖を着るようになった。ゲゲ郎の屋敷の前を通ることはあったが、足早に去ることが増え、同じ頃に水木は喉を傷めてしまっていた。マスクをつけた水木を周囲はやっかいな風邪だと思ったようで余計にクラスでは浮いてしまっていた。やがて咽頭通は少しずつ楽になり、その代わりに声が明らかに変わったことに気付いた。
深みを増した声で出席確認の折に返事をすると、教師もクラスメイトも顔を見合わせていた。人より早く、大人になった気分は思いのほか悪くはなかった。
肌寒くなってきたので上着を一枚重ねて登下校するようになった水木は、いつも通り、足早にゲゲ郎の屋敷を通り過ぎようとした。
手首にひやりとした冷たい掌の感触があり、思わず勢いよく振り向いた。
「水木、どうして来ぬ?」
寂しそうに眉を下げたゲゲ郎は、以前より少し痩せたようだ。眼鏡をかけて髪を束ね、羽織を着ているものの素足に高下駄を履いていると目立ってしまう。通り過ぎる学生がちらちらとゲゲ郎を見ている。騒ぐのは得策ではないと、俯いて沈黙を貫いた。
「話がしたい、頼む」
短く切った髪型なのに、よく水木だと分かったなとマスクの中でせせら笑った。
ゲゲ郎に招かれて屋敷に足を踏み入れ、はっとした。
あの見事なイチョウの木が青々としているのだ。蝉がどこかで鳴く声が聞こえる。
カンカン照りの太陽が水木を照らし、汗が皮膚の上にぶわりと噴き出す。
「なんで、秋だったのに」
上着を脱いで長袖をめくっても暑い。マスクを外せば、ゲゲ郎が訝しげに水木を凝視している。
「
……
話はすぐ終わらせてくれよな」
むくれてそう言えば、ゲゲ郎はなおも険しい顔をしている。
「なんだよゲゲ郎」
やがてゲゲ郎は震える手で眼鏡を外し、その赤い右目から涙を零した。
「その声、水木
……
同じ声じゃ」
柔らかに、だが確実にその言葉は水木の胸を抉る。
比べられるのはもう御免だった。
踵を返して帰ろうとするが、水木の腕をゲゲ郎が引いて離さない。
「すまぬ、また昔の話を出してしもうた。じゃが、儂にはもう過去しかないのじゃ。未来がない。今のお主のことは、夏の時のことしかわからぬ
……
」
「だから夏になってるのか?」
「そうかもしれぬ。さ、中に入っておくれ」
弱弱しく頼まれると断れない。
水木は仕方なく、玄関を潜って家に足を踏み入れた。居間をみると布団は敷きっぱなしで、普段からゲゲ郎が寝て過ごしていると分かる。やはり具合は良くないのだろう。
「お主が来てくれて毎日楽しくて、自分のことしか考えておらんかった。すまぬ、お主を沢山傷つけたな」
せき込むゲゲ郎が布団に膝をついて座る。頭を下げようとするので、慌てて止めた。
「そんなことしなくていい。
……
いいんだ、もう、俺はお前を忘れて生きようと思った」
「そうか」
残念そうに眉を下げるゲゲ郎が儚くて胸が締め付けられていく。
「でも、できなくて
……
お前のことが忘れられなくて」
話しているうち、水木はゲゲ郎にしがみついていた。細く見えて思いのほか筋肉質なからだに喉が鳴る。
「父さんは出ていってしまった、もう俺、ひとりぼっちになっちゃったんだ」
敷布団の上でゲゲ郎が握り拳を作っている。怒りが滲んだ様子に、とことん、水木には甘いのだと感じた。水木が蔑ろにされたことを水木以上に怒っているのだ。
「ゲゲ郎」
それだけ言った。名前を呼んだ、それだけだ。
いつもと違うのはその声が、このおとこの過去に爪を立てるということだけ。
「口づけてくれ」
古い昭和のドラマで聞いたセリフだった。
思いついて流れるように言っていた。挑むような水木の眼差しに、圧倒されたようにゲゲ郎は唇を重ねてきた。その首に、自ら腕を絡めた。
離れようと思った、忘れようとした。
しかし、できないのだ。
このおとこは幼い水木を過去のおとこに重ねている。重ねられるのが厭で髪を切ったのに、それでもこの声が男の影を背負わせる。
そして絶望させ、同時に幸福も与えるのだ。
重ねるだけの口づけに焦れ、自ら舌を出してゲゲ郎の口腔に忍ばせた。長い舌に驚いたが、ゆっくりと舌の側面を舐め上げていく。じゅっと先端を吸えば、ゲゲ郎の眉が顰められていく。
顔を反らしたゲゲ郎を見、水木は小さく呟いた。
「からだ、弱っているんだろ。もっとしてくれよ、なぁ」
「お主はまだ、子供じゃ
……
子供にはそんな真似はできぬ」
「じゃあ子供じゃなくなったら、もっとしてくれるか?」
動揺で揺れるゲゲ郎の眸に、隙があると思った。
「守ってくれるんだろう俺のこと。ならちゃんと、首輪をつけてくれ」
濡れた唇に吸い付けば、ゲゲ郎は拒まない。シーツの上で広がったゲゲ郎の掌が、布地を手繰り寄せるほどに握りしめていたことに水木は気づかなかった。
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