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紫輝
2024-04-27 08:47:41
2418文字
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リオヌヴィ
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【リオヌヴィ】口を滑らせた話【原神】
茶席で口を滑らせた公爵と最高審判官の話です。それぞれのお話は繋がっていません。折本として配布していたものの再録です。折り紙して下さった方ありがとうございました!
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*茶席で口を滑らせた公爵の話
愛するメリュジーヌ達の話題に綻ぶ雰囲気が、
新しく手に入れた水が眼鏡に適ったのだと弾む声音が、
自分の淹れた紅茶でゆるりとやわらぐその表情が、
「好きだな
…
」
落ちた言葉は無意識で。
「そうか。ここのムースは私も気に入っているのだ。君の口に合ったなら嬉しい」
「いやあんたが」
「は
…
?」
「
………
あ」
弁解、或いは誤魔化しの機会という名の棒を思い切りよく振り抜いたことに気づいたのは、目の前の美しいひとの口から史上最大の疑問符が発された直後だった。
しまった、と。
やってしまった、と、背筋をヒヤリとしたものが流れ落ちる。墓まで持っていくつもりの想いだった。この立ち位置で満足していた。嘘はない。好きだな、なんて、それこそ顔を合わせるたびに思っている。のに、何故今日に限ってそれは音となって外へ出てしまったのか。
後に悔いると書いて後悔と読む。この言葉にこの文字を当てた先人は偉大だ。お互い予想外で思わずフリーズを起こした脳の再起動に、先に成功したのはどうやら自分だった。場に漂うなんとも言えない空気を散らすべく静かに息を吸う。
「すまない、口が滑った。もう二度と口にしないから忘れてくれると嬉しい」
聞かなかったことにしてこれまで通りでいてください、などという虫のよすぎる希望は通るだろうか。
「
………
いやだ」
そのひとが口を開くまでの静寂は、最初のそれより張り詰めていたように思う。冗談ではなく、これまで生きてきた中で一番
慄然
りつぜん
とした時間だった。沈黙を破ったそのひとのよく通るうつくしい声が紡いだのは、その意味も言葉選びも俄かには信じ難い答えで。
そのひとの名を呼びかけた舌は、目の前でじわり染まっていく白皙と下がった眉に音を紡げずにその動きを止める。
「君の言葉に浮き立った気持ちを
…
嬉しいと叫ぶこの心を、無かったことにはしない。したくない。私は忘れない。この生ある限り」
もしかして白昼夢でも見ているのかもしれない。そうでなければこんな都合のいい展開など、舞台の上でもないのに起こるはずがない。
忘れていた瞬きをひとつ。その一瞬で、そのひととの距離は伸ばした腕の一本ほどまで縮まっていた。机の上に乗るのは行儀が悪い、なんて口を叩けるキャパシティは既にない。
「リオセスリ殿」
革手袋に守られた指が頬に触れる。
「もう一度口を滑らせてほしい」
お願いだ、なんて。
この状況で、このタイミングでそれを口にするのは狡い。他意などないのがわかってしまうから、駆け引きなんて入る余地もない。
融け落ちそうな熱をはらんだ階調の瞳に魅入られて、指は勝手に頬に触れるそのひとのそれに添う。
二度と言うまいとしていた三文字を空気へ放った瞬間、腕の中に細い身体が飛び込んできた。
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