810suzukaze
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とある海水浴の話


※長編番外編。本編把握してなくても平気です。



じりじりと太陽の光が砂浜を照らしている。
その光が反射して、白い砂浜はきらきらと光って見える。しかし、その分、たっぷりと熱を含んでおり、裸足ではとても歩けそうもない。
反射光と一緒に熱まで地面から跳ね返ってくるので、日なたに立っているだけでも頭がぐらぐらとしてしまい、私は早々にギブアップしてしまった。

今は、海辺の隅に立てたパラソルの下で大人しくぼんやりと眺めている次第だ。日差しの遮られたパラソルの下は少し風が通るお陰もあるだろうが、涼しく感じられる。
そんな日影に座っている私の隣にははしゃぎすぎて目を回したフクロウの侶珂(ろか)がすうすうと寝息を立てている。

私の視線の先には、弟子である流珂(りゅうか)と私の一つ上の環(たまき)先輩がビーチボールを投げ合って騒いでいる。流珂が跳ねる度に、今日は暑いからと結われた少し短めのポニーテールがふわりと揺れていた。
先ほどまで暑いと喚いていた竜の怜(れい)までちゃっかり混ざっている。

「後でアイスか何か奢らされそうだ」
そう考えると、思わずため息が出てきてしまう。
ぽつりと呟いた私の声は流珂たちには届くはずもなく、何だかあちら側とこちら側は別世界のようにも感じられてしまう。


そんな別世界をふいに破るかのように、ころころとビーチボールがパラソルの近くへ転がってきた。
すると、ぱたぱたとサンダルを鳴らしながら、流珂が駆け寄ってくるのが見えた。
半袖のTシャツと短パンから伸びる手足は細いながらも健康的な肌色をしている。そんな流珂がふいに眩しく見え、私は少し視線を外した。

「怜亜(りょうあ)さん、気分はどうですか?」
ボールを両手で抱えたまま、流珂がとことこと近付いてきた。
私はまともに視線を合わせることができず、視線を彷徨わせる。しかし、彷徨わせた視線はやたらと手足にいってしまう。
「あ、ああ。だいぶマシになった」
冷静を装いながらそう答えると、流珂はぱあっと笑顔を綻ばせた。
「わあ、良かったです!」
その心底嬉しそうな表情に、少し照れくさくなる。すっかりひねくれてしまった私にはできない感情表現なので、羨ましくも思う。

私と流珂が話していると待ちきれなくなったのか、環先輩と怜がずんずんと近付いてきた。
「おい、流珂、まだかー? 環がかき氷食おうって言ってるぜ!」
「それは怜が食いたいだけだろ。お、怜亜、もう平気なのか?」
環先輩は少しだけ私を気遣うそぶりを見せはしたものの、私の顔色が良いことを確認すると、にやりと笑った。その笑顔に私の背中を嫌な汗がつうと流れる。

「よっし、ここは怜亜の奢りってとこで!」
「おう!」
環先輩が高らかに宣言すると、怜もすかさず同意する。そして、返事も聞かずに、私を日差しの下へと引っ張り出した。
パラソルの下から出た途端、ぎらぎらと照りつける日光に晒されることになるが、先ほどまでの体調不良はいつの間にかどこかへ吹き飛んでしまっていた。
そんな私たちの上には青の絵の具をぶちまけたような空が広がっていた。