みたむら
2025-01-09 22:55:08
4870文字
Public 同人誌発行物まとめ
 

「出会いは偶然か、必然か。」サンプル

呪術廻戦・五条×女夢主本3冊目です。


「出会いは偶然か、必然か。」本文サンプル

※Web用に読みやすく若干修正しています。
※製本版は体裁サンプルにてご確認ください。

……ここ、どこ?」

 私は目の前に広がる景色に驚いて周囲を見渡す。
 目の前にはビルがずらりと並んでいる。その時点でいろいろとおかしい。
 私は確か、仕事から帰ってきてベッドに入って、大好きな呪術廻戦の漫画を読んで寝た――はずだ。だから目を覚ましたら私の部屋のはずなのに、何故か都会のど真ん中のような場所にたたずんでいた。しかも、パジャマを着て寝ていたはずなのに外に出かける格好になっている。

「そりゃあパジャマ姿で外にいるよりはいいけどさ――

 これは夢の中? それとも現実世界?
 首をかしげつつ地面を見ていたが、顔を上げた。
 その時、何かが横切った気がした。

(あれは――
「伏黒、そのまま追いかけてくれ! 俺は先回りする!」
「ああ! あの呪霊、すばしっこいな!」

 そして、二人の男の子――男子高校生二人がさらに私の横を通り過ぎる。
 が、虎杖悠仁に似た人物が、こちらに気づくと尋ねてきた。

「お姉さん! さっき何か変なもの見なかった? こう何というか、犬……みたいな猫、みたいな――
(犬? 猫? さっきのは確か)

 あれは間違ってなければ呪術廻戦に出てくる毛むくじゃら呪霊だった気がする。あれはどう見ても犬や猫ではない生き物だけど……もし彼があの虎杖悠仁君なら、毛むくじゃらとは言えないから毛の生えた生き物、として説明をしているのだろう。
 そして、私はふと気配を感じた。何者かがこちらを見ているような。
 それは先ほど横切った毛むくじゃら呪霊だった。
 私は奴がいる方を指さして言う。

「あそこ」
「あっ、本当だ! ありがと、お姉さん!」

 虎杖君は笑顔で手を振って走って行く。そして毛むくじゃら呪霊はスッと消えて彼から逃げているようだ。
 そして、伏黒恵君によく似た男の子も、玉犬の似た犬を連れてやってくる。

(コスプレ? にしては完成度高すぎない?)

 コスプレとかには正直疎いので詳しくは分からないが、割と再現度高いのではないだろうか。もう本人じゃないかっていうくらい。

(まるで、ここは『呪術廻戦』の世界みたい……

 私はもっと証拠がほしいと思い、ビルの隙間から離れて繁華街のような大通りに出ることにした。
 少し離れたところで「黒閃!」という声が聞こえた。呪霊の声だろうか、聞きづらい音が響き渡る。

……討祓完了したのかな」

 よくある異世界トリップなのかもしれない。さっきまで呪術廻戦の漫画を読んでいたので、夢の続きだとしても驚きはなかった。
 薄暗い敷地内が、少しだけ明るくなった。おそらく、帳による結界が解けたのだろう。どうやらまだ昼間だったらしい。
 そう思いながらあと一歩で繁華街、というところで私は何かに止められた。
 目の前には先ほど通り過ぎていた虎杖君。後ろに振り返れば伏黒君がいつの間に来たのか、私を挟む形で立っていた。

「あの、何か?」
「すみません、さっき呪霊が見えましたか?」
「呪霊?」
「あの、変な毛が生えた化け物みたいなやつ。さっきお姉さんが教えてくれたおかげで祓えたんだ。教えてくれてありがとう」

 警戒心丸出しの伏黒君とは真逆に虎杖君はにっこりとお礼を言ってくれる。

「呪霊が見えるというなら、少し話を聞きたいことがあって」
……他言無用、というヤツですか?」
「ええ。それだけじゃありませんけど」
「そう言われてもなぁ……

 事情聴取みたいなのをしたいのだろうけど、むしろこっちが知りたいくらいだ。
 この〝世界〟に来て数分だ。何がきっかけでどうやってここに来たのかもまったく分からない状態だ。そして元の世界か、夢から覚める方法が分からない。そんな状態で彼らに説明しても困惑するだけだろう。

「悠仁、恵。そろそろ終わったー?」
「五条先生! うん、このお姉さんのおかげで終わったよ!」
「おい馬鹿、虎杖!」
「え?」

 突然ビルのてっぺんから声が聞こえ、見上げてみると長身の男がこちらを見下ろして、スッとこちらに降りてきた。
 内心驚きつつも、成り行きを見守る。
 虎杖君と伏黒君は祓い終わったことなど報告するものの、三人の視線はこちらに向けられる。

……え? その〝お姉さん〟っているの?」
「え?」

 五条先生はキョロキョロと見るけれど、私が見えていないらしい。それに驚く虎杖君と伏黒君。

「そこにいるじゃん」
「え? ……いない。うーん……?」
「五条先生、こんな時に冗談言ってる場合じゃないですよ!」
「いや、冗談じゃなくてさ。むしろ悠仁たちこそ冗談を言ってるわけじゃないよねぇ?」
「えっ、五条先生が見えないことってあんの?!」

 そんな話をしつつ、長身の男――五条先生は黒いアイマスクを外して蒼い眼――六眼を見せる。

(間違いない。その六眼……あの呪術師最強の、五条悟?!)

 最近のコスプレ界隈はここまで本物に進化してるのか。しかも声もまんまだ。まるで本物みたいだ。

「じゃあ、悠仁か恵、その〝お姉さん〟にどこかしら触ってみてくれない? ああ、ちゃんと断り入れてね」
「ええ……
「すみません、何かあの人に声をかけてもらっていいですか?」
「え、えーっと……

 伏黒君が申し訳なさそうに、五条先生に声をかけてみてほしいと頼まれる。触らずとも私が話しかければ、声くらいは彼に届くだろうと思ってのことだろう。

(そんなこと言われても何言えばいいの? 挨拶?)
……えっと、は、初めまして――

 私の名前を言えば虎杖君と伏黒君は私の名前を言って彼らも自己紹介をしてくれる。それをじーっと五条先生が見ているが、見えていないらしくまるで視界が悪いように凝視しながら私たち(彼からすれば二人)を見ている。

……どうですか? 声なら聞こえるでしょう?」
…………え? 今なに言ったの?」
「ええ?! 今、自己紹介をしてくれたんだよ――さんって言うんだって」
「五条先生、さすがに殴りますよ? 寝ぼけてます?」
「ちょっと恵! 寝ぼけてないよ……んじゃあ、代わりに通訳になって。僕のことは見えてる? 聞こえてる?」

 伏黒君が通訳になってくれているが、こちら側は姿も見えているし、声も聞こえている。つまり、五条先生だけが異常らしい。
 それを私は言うけれど五条先生には届かないようで、代わりに虎杖君が通訳してくれる。

……へぇ、じゃあどんな姿をしてる? 悠仁」
「ごく普通の人間だよ。大人の女性、でいいのかな?」

 そうだと伝えると、彼がまた五条先生に伝える。

「いやー、この僕が六眼を通して姿形・声も聞こえない人間がいるなんてびっくりだね。これまでいろんな人間を見てきたけど、君が初めてだよ。中々ウケる」

 五条先生は面白いものを見つけたようにニヤニヤと笑っている。そして最後に確認される。私は死人じゃないか、と。しかしそれは虎杖君と伏黒君の手を触れて確信している。生身の人間だ。彼らも私の手の感触を感じているし、私も二人の手の感触が分かる。
 しかし、試しに五条先生に触れてみても、不思議なことに彼の手に触れず私が透明人間のようにすり抜けてしまったのだ。

「えっ?!」
「そんなことあるのかよ……
「え? 何々?」
「今、五条先生の手に触れようとして、彼女の手が透明のようにかすったんです」
……悠仁や恵は触れられて、僕には触れられない……幽霊というわけではないみたいだね」

 幽霊なら二人の生徒にも触れられないはずだからだ。

……ごめんなさい」

 私はこれ以上怖くなってその場から走って繁華街の通りへと走って行った。
 背後から「あっ」と声がかかるけれど、気にしないで走りきる。
 繁華街に出て人混みの中に紛れ込む。時々肩がぶつかり私の姿を見ては会釈をしてまた歩き出していく。この人たちも私の姿は見えているらしかった。そして、ぶつかった人の感触も肩の痛みと共に残っている。

(私は死んでない。生きてる)

 これは夢だ。だけど、肩の痛みや二人に触れた手の温もりは記憶に残っている。なのに、五条先生――私の推し・・には姿も声も彼の前には見えていないことがショックだった。
 あの感じでは冗談ではないんだろう。本当に、何かのせいで彼だけが私が見えないのだと思う。なぜなら、呪術師最強よりまだ未熟である男子高校生の方が見えていて、呪術師最強が見えていないって力関係が逆転してしまっているからだ。そんなの、漫画の展開であっただろうか。いや、そんなはずはない。そんな大富豪の革命・・・・・・みたいな展開。
 それとも、私が何かしたのだろうか。
 ……過去に何かあったか記憶を辿ってみる。
 
 私は呪術廻戦の漫画が好きで、特に五条先生が好きで二次創作でたくさん見るくらいには好きだ。一目惚れなのかもしれない。

(もし、呪術廻戦の世界に行けるなら五条先生に会いたいな。〝たとえ姿見えなくても〟)

 遠くで見守るだけならいいよ、って仮に神様が言ってくれるならそれでもいいから生の五条先生に会わせて! と思うくらいには大好きだ。
 まぁ、もちろん大人なのでそんなこと起こるはずないことは分かっている。けど、それくらい推しなのだということは理解してくれたと思う。

……もしかして、〝そのせい〟で?」

 たとえ姿が見えなくても、彼に会えるのなら会いたい、と願ってしまったからこうなってしまったのだろうか。

(どうせならそんなところを汲み取らなくて、〝会いたい〟のところだけ叶えてくれればよかったのに!)

 とは言っても、もう後の祭りだ。実際そんな条件下で叶ってしまったわけだ。

(そりゃあの大物呪術師様に会うなんて大恐れたこと出来るわけないじゃん。例えばたかがアルバイターが大企業の社長に会えると思えるかっての!)

 だから、こう影からそっとでもいいので数分だけでもいいから見えたらいいな、会えたらいいなっていうのは誰しも思ったことはあるはずだ。学生時代の人気者のあの子に自分なんかが近づいてはいけないだろう、ならせめて影で姿を拝める許可くらいはほしい、みたいな。それくらい願望〝は〟持ってもいいはずだ。実行に移す移さないは別として。
 そんなニュアンスで願ったと思う。ガチでそういう設定で会いたかったわけじゃない――はずだ。

「っていうか、これから私どうしたらいいの?」

 ショックのせいで繁華街通りに出てしまったけど、頼れそうな人と離れてしまったばかりに私は通り過ぎていく人を見届けつつ、立ち止まった。



*製本版を購入の上、お楽しみください。*