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ぷの
2025-01-01 12:04:28
7802文字
Public
レイチュリ🍰
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年末年始を一緒に過ごす🛁🦚の話
あるいは、加工されてる途中の🦚の話
P1 - 皆様良いお年を
P2 - あけましておめでとうございます
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【皆様良いお年を】
レイシオが呆れている。もしかしたら怒っているかもしれない。でもまあそれは完全にアベンチュリンが悪いので仕方ない。
今年は仕事納めが早いんだよ!と自信満々で宣言したくせに、蓋を開けてみれば三徹めの大晦日。家に帰れないまま一日一日と逃げていく休暇に必死に手を伸ばしているものの届かない。さっきまた諦めて、レイシオにごめんなさいと平謝りのメッセージとスタンプを送ったところだ。返事はない。
年内に一緒にやろうと計画していたことは全部一人で片付けさせてしまった。年明けでよいものは全部繰り延べに。創造物たちと雪で遊びたいと希望したのはアベンチュリンで、食べたい手料理をリクエストしたのもアベンチュリンで、それならと素晴らしいキッチンと露天風呂がついた雪国のコテージを押さえ、滞在に必要なものを用意してくれたのはレイシオだ。予定通り一昨日から創造物たちを連れて先に現地入りして、泣きながら仕事をするアベンチュリンを励ますようにメッセージを送ってくれていた。
一昨日は、コテージのあちこちを探検する創造物たちの写真だった。最初は警戒して探り探り、時間が経つにつれだんだん慣れて好奇心が勝っていく表情の変化が可愛いかった。たくさん持ち込んだクッションの小山は居心地の良い場所に散らされて、数時間後には仮の荷物置き場からすっかり消えた。リビングの一番大きなソファの上と足元、涼しい窓辺、ほかほかの暖炉の前。キッチンにも持ち込んだらしいけど、レイシオに撤去されていた。暖炉の前でかたまって眠る姿なんて、ダイブして混ざりたくてたまらなかった。行ったら絶対する。
昨日の写真は、アベンチュリンがリクエストした料理の数々。朝一番の一枚は勝手口の外に作られた小さな雪室だった。中にずらりと食材と飲み物が陳列されて冷えている。天然の冷蔵庫最高。午前中から一品また一品と仕込んだ料理の写真が送られてきた。具だくさんのクラムチャウダー、色とりどりの野菜と白身魚のゼリー寄せ、お腹に味付けしたご飯が詰まってる丸鶏の香草焼きの下拵え、自家製の果実ジャムを添えると絶品な口当たりなめらかパンナコッタ、外で同じ味に出会ったことがないホットワイン。他にもいろいろ、いつこっちに着くんだと催促するように追撃がきていたのに、良い返事はできなかった。最後の一枚に写りこんでいたのは、瓶のクラフトビールとお気に入りのレバーペーストを塗ったバゲットだった。一方こちらは水筒から水を飲んでシリアルバーを齧りながら図面とにらめっこである。天国と地獄。約束を破り続けているアベンチュリンには、先に休暇を満喫するレイシオに文句を言う資格なんてない。
そして深夜のごめんなさいを経て今は未明。向こうとの時差は一システム時間ほど、こちらが先行している。レイシオたちはぐっすり寝ているだろう。仕事なんてぶん投げて早くあっちに行きたい。
「総監、準備できました」
端末の中の幸せを煮詰めた写真たちから現実に引き戻された。街灯が少なくて暗い静かな倉庫街の片隅、ボソボソと言葉少なに会話するむさ苦しい人間と機械たちの中にアベンチュリンはいる。キンと冷えた星空の下、あちこちでほわほわと湯気が立ち上る。低いエンジンの唸りとオイルの匂いの中、くたびれた部下たちの殺伐とした空気ったらない。
「それじゃ、今度こそ仕事納めといこうか」
「ハイ!」
常になく低く鋭いアベンチュリンの声に、部下たちは短く返事をしてきびきびと動き出した。その声は下手な式典のときよりピシッと揃っていて小気味よかった。
三度目の正直はなんとか叶った。連日追いかけてやっと確保した往生際の悪い品物を「納品」した際、作った笑顔の出来はだいぶ悪かったらしい。逃げ続けて煩わせた張本人だけでなく、取引先の皆様、さらには部下たちまで顔がひきつっていた。ごめんね、誰しも寛大になれる限界ってあるよね。
カンパニーの艦船が停泊しているターミナルに向かう移動中、部下たちは手際よく報告書と休暇申請を出してくれた。アベンチュリンもほとんど作ってあった報告書を埋めて投げ、全員分の休暇をスケジュールを見もせずに片っ端から承認した。大丈夫、優秀な彼らのやることだからシフトは考えられているし、問題があれば自分達で調整して連絡を寄越す。
そしてターミナルに着くなり、今年の仕事納めと現地解散を宣言した。乗ってきたカンパニーの艦船でピアポイントに戻る者、途中下車して移動する者、ここで別れてターミナル直結のホテルで寝てから移動する者。行き先はそれぞれだが、みんな一様に解放感に包まれてぐったりとしている。
「本当にお疲れさま、来年もよろしくね!」
いい大人を相手に、長々と休暇中の注意をするなんてナンセンスだ。バカをやったら首が飛びます。そんなことはみんなわかってる、言うまでもない。
アベンチュリンが簡単な挨拶だけで済ませて心からウキウキと満面の笑みで手を振ったので、部下たちもみんな和やかな笑顔で手を振り返してきた。足取り軽く手配しておいた雪国行きのシャトルに向かう。移動中にシャワーを浴びて一眠りして、着いたらレイシオにコーヒーを淹れてもらうのだ。
そろそろ起きる頃かなとメッセージをチェックすると、朝のルーチンを終わらせたレイシオから朝ごはんの便りが届いていた。コーヒー豆が入ったキャニスター、これから焼かれるまあるいパン生地、つやつやの殻をした生卵、瑞々しいレタスと昨夜仕込まれていた野菜たっぷりのマリネ。やめて、胃が動く。
『今向かってる!』
『ふん』
到着予定時刻とともに良い子の返事を送ると、遅いと非難する短い返事。それから、夜中に降ったサラサラの雪の中をぴょんぴょんと跳ねる三匹の動画が返ってきた。ずぼっと深く埋もれてみゃうみゃう鳴いてレイシオに助けを求めたのに、すぐまた飛び込んで埋もれる。案外寒さに強いんだな。可愛いな。
着いたらやりたいことが山盛りで気は逸っていたけど、徹夜でへたった体はまるで追いつかなかった。シャトルの個室でシャワーを浴びてベッドに倒れこんだら意識が飛んだ。アラームでなんとか目を覚まして下船したものの、現地のターミナルまで迎えに来てくれたレイシオにバキバキの体を預けた途端うっかり寝てしまった。気がついたら暖炉の前で創造物たちに囲まれていた。外は真っ暗、すでに夕方だ。
「コーヒーとパンとオムレツとサラダ!」
起き抜けに悲痛な叫びをあげたアベンチュリンを見て、ソファにいるレイシオは呆れ顔で読んでいた本を閉じた。
「わかった、用意するから歯を磨け」
「待って、違う、鶏がいい!」
だって、良い香りが漂ってきているのに気づいたのだ。アベンチュリンが起きる時間を見計らって焼かれている肉の香ばしさが心をさらう。レイシオは合格と言うように満足げに微笑んだ。
アベンチュリンに巻き込まれて目を覚ました創造物たちは、もにゃもにゃと開かない口で「おかえり」と言い、くわっとあくびをしてまた眠りに落ちた。昼間に雪の中ではしゃぎにはしゃいで、すっかりエネルギー切れらしい。頭を撫でて「ただいま」を言いたかったけど、起こしたくなくて我慢した。
「おかえり」
「ただいま」
レイシオとも後回しになっていた挨拶を交わす。ソファから立ち上がったレイシオはアベンチュリンにゆったりしたカーディガンを着せて、両脇に手を入れて立ち上がらせた。本を読んでいたせいか少し冷えた手で、アベンチュリンのくしゃくしゃになった髪を撫でつけ、目の下のクマをなぞる。仕上げに額に口づけが落ちてきて、一連のあまやかさにへにゃっとだらしなく笑ってしまった。
「きっちり埋め合わせをしてもらうぞ」
「なんでも言うことをきくよ」
賛同するようにアベンチュリンの腹の虫が鳴いた。
「歯を磨いたら、雪室から飲み物を持ってこい」
「はーい!」
何を要求されるかとドキドキしていたのに、最初の指令からあまりにもアベンチュリンに都合が良くて、先が思いやられた。
この調子で甘やかされ続け、年が明け休みが終わる頃には一人では生きていけない動物になっているかもしれない。
社会復帰できなくなったらどうしよう。好都合だとアベンチュリンを囲いこむ堅牢な腕があまりに簡単に想像できて、いろんな意味でゾッとする。そんな恐ろしさが、レイシオにはある。
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