Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ぬこ尻ryo
2024-12-28 00:11:23
5068文字
Public
ワンドロ企画など
聖剣ワンドロワンライお題14回
聖剣ワンドロワンライお題14回
【紅蓮の魔導師】「おかえり」
※みにぐれ初出小話。
デュランの家族とみにぐれの絵本みたいなほのぼの物語にしたかった努力が垣間見えます。
1
2
聖剣の勇者たちの活躍により、マナの女神さまもマナの樹も蘇り、世界は平和を取り戻しました。
幾人かの犠牲者たちは、マナの女神さまの深いご慈悲により、闇の力から救い出され、命をつなぐことができました。
マナの樹の下で、大樹を囲う水面に映る人々の笑顔を見て、女神さまは柔らかな笑顔を浮かべました。
ところが、みなもに浮かんだあるひとりの青年の姿を目にすると、女神さまの美しい顔に陰りがさしました。
女神さまは、彼の不幸すぎる生い立ちとその人生を嘆き悲しみ、彼にもう一度救いの手を差し伸べることを決めました。
こうして、マナの女神さまのご慈悲によって、紅蓮の魔導師はもう一度、現世に生を与えられることになったのです。
マナの女神さまはマナの樹から、瑞々しくつややかな青々とした一枚の葉っぱに触れました。
すると葉っぱは、ふわりと女神さまの手のひらに落ちました。
女神さまは、その葉にむけて、ふうっと、優しく息を吹きかけました。
するとたちまち、葉っぱは光の粒子に姿を変え、どこからか流れてきた優しい風に包まれて、マナの聖域から旅立ちました。
海を越えて山を越えて、いくつものシェイドの刻とウィスプの刻を繰り返したところで、光の粒子は一羽のコウノトリさんと出会いました。
コウノトリさんは、大きな布にくるまれた赤ん坊を大事そうに運んでいる途中でした。
光の粒子が布にくるまれた赤ん坊をのぞき込むと、赤ん坊と目があいました。
すると、赤ん坊は嬉しそうに、きゃっきゃと笑いました。小さな手のひらを握ったり開いたりして、まるで光の粒子を誘っているように見えました。
光の粒子は、くるくると何度か赤ん坊の周りを飛び回ると、しゅるん、と赤ん坊の体の中に飛び込みました。
赤ん坊の体はしばらくきらきらと輝くと、光が消えていくのと一緒に、ゆっくりと姿が消えてしまいました。
コウノトリさんは、急に軽くなった荷物に気づくと不思議そうに首をかしげましたが、その場でゆっくりと旋回し、行き先を変えて再び羽ばたいていきました。
※※※
満月が夜空にピカピカとかがやく明るい夜、フォルセナにある一軒の居酒屋の裏口で、がさがさと何かの生き物が動く気配がしました。
お酒の入っていた木箱や、食品の入っていた木箱など、空になった容器が積み上げられたゴミ置き場の隙間から、するりと一匹の猫が姿を現しました。
燃える夕焼けのようなオレンジ色のふわふわした体毛とつややかな毛並みをもつその猫は、口元に何かをくわえていました。
人形のようにもみえましたが、それにしては丸みを帯びていて、人型のぬいぐるみかなにかのようでした。
どこかに落ちていたのでしょうか、その人形はうっすらと砂ぼこりで汚れていました。
それをくわえたまま、猫はまっすぐに居酒屋の裏口に向かいました。裏口の木戸の前までくると、かりかりと、前足で扉をひっかきました。
猫はとても賢い猫でした。
鳴き声をあげると、運んでいるその生き物が落ちてしまうことがわかっていました。
落としたら、地面との衝撃で壊れてバラバラになってしまうかもしれません。
猫はそんな事態を避けたかったのです。
だからいつもは、にゃあん、と甲高く鳴いてニンゲンが裏口の戸を開けるように意識を仕向けるのですが、そのときはただひたすらに、かりかり、かりかり、爪を研ぐみたいに木戸をひっかいて、中にいるはずのニンゲンに自らの存在を訴えました。
どのくらいたったころでしょうか。
猫からしたか半刻は過ぎたように感じた頃、ようやっと木戸が開いてニンゲンが姿を現しました。
それはいつも猫にご飯をくれるニンゲンでした。
猫はピンと尻尾を立てて、ニンゲンの足元に嬉しそうに体をこすりつけました。
しなやかな体とふわふわの体毛をぐいぐいと押し付けて、全身を使って、ニンゲンに甘えました。
するとニンゲンは嬉しそうに何かを言いました。
猫にはニンゲンが何を言っているのかはわかりませんでした。
けれど、ニンゲンが手のひらを伸ばしてきたので、そこに鼻先をぐりぐりと押し付けました。
猫は、自分の口にくわえている何かに、ニンゲンの注意を向けさせようとしました。
それに気が付いたニンゲンは、驚いたような悲鳴の声をあげました。
猫は一瞬、ニンゲンの悲鳴にびくりと驚きましたが、逃げるでもなくただ耳をピンを立てただけでした。
そして、ご飯をねだるときのように、前足でちょいちょいとニンゲンの手の甲を叩きました。
ニンゲンが、何かに気が付いたように両の手のひらを差し出すと、
「にゃあん」
と、猫は嬉しそうに、ようやっと、鳴き声をあげました。
その瞬間、猫の口元から放たれたその何かは、ニンゲンの少女の手のひらの上に、ぽとりとおちました。
それは、丸みを帯びた人型の、ちいさくてかわいいなにか、でした。
、、長いのでいったん「ちいかわ」と呼びましょう。
そのちいかわは人間の姿をしていました。
全体的にまるっこくてまるでぬいぐるみのようです。
ですが少女の手のひらに伝わる熱は、命あるものの体温と同じように温かくて、まるで生きている人間のようでした。
そのちいかわの顔を見た途端、少女はびっくりして目を見開いてしまいました。
つぶさないようにそっとエプロンのポケットにしまうと、急いで店内に戻り、カウンターにいる店主に仕事を早上がりさせてもらえないかと頼み込みました。
珍しく早上がりを申し出てきた少女に店主は何事かと心配しました。
ですが少女の普段の仕事ぶりを評価していたので、店主は気をもみながらも彼女の要望を快く受け入れました。
店主の承諾に対して、少女はヒマワリのような笑顔を浮かべ、店主になんどもなんども頭をさげてお礼を伝えました。
そして急いでおうちに向かいました。
実は、少女はこのちいかわを以前どこかで見たことがあるような気がしていたのです。
はっきりとは覚えていません。
そもそも「ちいかわ」という生き物の存在すら、ついさっき初めて知ったのです。
けれどそれは、少女のすこし年の離れたお兄さんにかかわる、とても大事なことだったような気がしたのです。
だから少女は駆け足で自宅へ戻ると、勢いよく居間に飛び込んで、夜食の準備をしていた母親代わりの伯母に兄が帰宅しているかを尋ねました。
息をきらせて帰ってきた姪っ子に驚きながらも、まずは落ち着きなさいな、と伯母さんは少女にいっぱいのお水を差し出しました。
少女はコップを受け取ると、ぐいっと一気に飲み干しました。
はあはあと、まだ肩で息をしていましたが、叔母さんのくれたお水のおかげでカラカラに干上がっていた喉がうるおい、少女は少しばかり落ち着きを取り戻しました。
そこでようやく、ポケットにしのばせた「ちいかわ」に意識が戻りました。
全力で走ってきたために、ポケットのなかのちいかわが目をまわしていないか心配になりました。
おそるおそるポケットの中を確かめると、なんとちいかわはぷうと鼻ちょうちんをふくらませてぐうぐう寝息を立てていました。
少女のポケットの中で、ぐわんぐわん揺らされただろうに、たいそう肝の座ったちいかわだなあと、少女は笑ってしまいました。
少女がふふふと楽しそうに笑うので、伯母さんが、ポケットになにがはいっているんだい?と尋ねてきました。
少女はにっこりと笑うと、ポケットのなかのちいかわを、そうっと両手で優しく包み込むように取り出して伯母さんに見せました。
そのちいかわをみた叔母さんの顔も、ほころぶように笑顔になりました。
それから伯母さんは、エプロンの裾で目尻を拭いました。
「あの子はきっと、びっくりするだろうね」
ふふふと伯母さんも嬉しそうに笑いました。
少女は、「うん、だからお給仕のお仕事早上がりしてきちゃった!」と嬉しそうに言いました。
少女の手のひらの上で、ちいかわはだらしなくよだれを垂らして幸せそうに眠り続けていました。
呼吸をするたびにぷうぷうと鼻ちょうちんが膨らむちいかわの寝顔を眺めて、二人はもう一度、にっこりと笑いあいました。
※※※
そこへちょうど、玄関の扉が開く音が聞こえてきました。
ただいまー、という声と、がちゃがちゃと金具を外す音が聞こえます。
そして一人の青年が、二人のいる居間に入ってきました。
「おかえりなさい、お兄ちゃん」
少女が嬉しそうに声をかけると、兄と呼ばれた青年が、にやっと笑いました。
「ただいま、ウェンディ。今日は早いんだな」
青年は少女のそばに近づくと、亜麻色の柔らかな頭を撫でました。
ウェンディと呼ばれた少女は大好きな兄に頭を撫でられて嬉しくなりました。
えへへへ、と少し照れくさそうに笑いました。
だから今度はその兄にも嬉しくなってほしいと思いました。
ウェンディは、ちいかわを乗せた両手を兄に差し出しました。
「うん、そうなんだ。 お兄ちゃんに早く見てもらいたいことがあってね」
青年も、なんだなんだ、と妹の笑顔につられて楽しそうに笑いながら、彼女が差し出した手のひらの上を見ました。
そのとたん、青年の両目はぱっと見開かれ、驚きと歓喜の色でないまぜになりました。
それからじわじわと、乾いた砂漠に水が染み込むようにうるんでいきました。
ははは、と青年が掠れた声で小さく笑いました。
いつの間にか青年の両眼には、こらえ切れないほどの涙がいっぱい溢れていました。
あふれ出た涙は、見る間に決壊したダムのように頬を伝ってぼたりぼたり、と床に落ちて弾けました。
信じられないと言わんばかりの表情のまま固まってしまった兄に対して、ウェンディは
「はい、お兄ちゃん」
と、ちいかわを受け取るように声を掛けました。
青年は止まっていた時が急に動き出したかのように、びくりとしました。
一度だけ、ウェンディに視線を向けました。
少女はにっこりと笑ってうなづきました。
青年は、ぐいっと腕で涙を拭うと、妹のてのひらからその「ちいかわ」を受け取りました。
少女の手の上から、青年のごつごつと骨ばった手のひらの上に移された、
その瞬間、
ぱちん、と「ちいかわ」の鼻ちょうちんがはじけて、ちいかわがびっくりしたように目を開けました。
ちいかわは大きなあくびをすると、ううーん、と一度大きく伸びをしました。
それからきょろきょろとあたりを見回しました。
すると自分の目の前にいる、大きな山脈のようにそびえ立つ青年と視線が合いました。
ちいかわは腰に手をあてると、ふふん、と胸をはり、にんまりとふてぶてしく笑いました。
「遅かったではないか、小僧。私は待ちくたびれてしまったぞ」
ちいかわは、生意気そうに、ふふん、と鼻をならしました。
青年は、垂れ落ちそうな鼻水をすすり、照れたようにへへへと笑いました。
「ああ、、、オレもお前を待っていたぜ」
そこへ、ウェンディが嬉しそうに笑いながら、青年に抱き着いてきました。
「おかえりなさい。
お兄ちゃん、
紅蓮の魔導師さん」
ウェンディに抱き着かれた青年は、慌ててちいかわを守る様に両腕をあげました。
妹の、愛情がいっぱい込められた抱擁に、ちいかわがつぶされてしまわないように。
ちいかわは、ふふん、と尊大に鼻で笑うと、するすると器用に青年の腕を伝って彼の肩の上に立ちました。
「なかなかいい眺めだぞ、デュラン」
ちいかわは満足そうにうむうむとうなづき、青年の名前を呼びました。
まるで、以前からその名前を知っていたかのように。
当たり前のように名前を呼ばれた青年は、また、目の奥がじんわりと熱くなりました。
照れ隠しのように鼻をこすり、青年は
「そりゃあ、よかったな!」
と返事をしました。
それから、この奇跡を届けてくれた最愛の妹を、力強く抱きしめ返しました。
兄妹の抱擁を、伯母さんは側で優しく見守っていました。
慈しむようにその様子を眺める伯母さんの両目からも、溢れる涙が止まることがありませんでした。
ちいかわも、デュランの肩の上で仁王立ちになって腕を組み、うむうむと、満足そうに家族の様子を眺めていました。
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内