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ぬこ尻ryo
2024-12-27 23:09:57
7285文字
Public
ワンドロ企画など
聖剣ワンドロワンライ企画23回 ※紅デュ&ヒース紅蓮
聖剣ワンドロワンライ企画
お題23回
『ヒース』
紅デュベースに、紅蓮魔をいじるヒースさんとか、シャルとヒースとか、書きたい組み合わせを詰め込んだ妄想捏造小話。
※紅蓮がツンデレ崩壊しました
※ヒース→紅蓮魔、の気持ち
※シャル→ヒース、の気持ち
※紅デュはバカップルだけど紅のツンデレがひどすぎた。
※なんでも許せる方向けほのぼのの皮をかぶったツンデレ紅蓮がたくさんいます
1
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ウェンデルでの公務を終えたデュランの足が向かった先は、マナの女神を祭る聖堂だった。
静謐と安寧の空気に満ちた空間で、デュランは膝を折り、手を重ね、静かに頭を垂れていた。
どのくらいの間、そのように祈りを捧げていたのだろうか。
東南の位置にあった太陽が南中を過ぎて傾きかけてきた頃、聖堂の入り口の方に何者かの気配を察した。意識だけは逸らさぬように、デュランは頭をあげて徐に立ち上がった。
振り返るとそこには、にこやかな笑みを浮かべて穏やかな春の日差しのような眼差しをデュランに送る一人の青年が立っていた。
「デュラン君、お久しぶりですね」
「ヒースさん!」
デュランが彼の名の呼ぶより早く、ヒースと呼ばれた青年が口を開いた。
デュランは驚きと喜びのないまぜになった表情で、駆け足ぎみにヒースの元に歩み寄った。
「ご無沙汰しています。お元気でしたか?」
ウェンデルの司祭と相対する公務の席では、堅苦しく仰々しい言動をとるデュランも、彼のまえでは年相応の一人の少年に戻ってしまう。
ヒースはにこにこと穏やかな笑みを浮かべながら、きらきらと両目を輝かせるデュランの頭を優しく撫でた。
いつもシャルロットにしているときと同じように、慈しみに満ちた眼差しとともに。
デュランを撫でるヒースの目がすうっと細められた。
「シャルは先の旅で成長しちゃったみたいで昔みたいにあんまりなでなでさせてくれないんですよ」
ヒースは声に少し寂しそうな色を滲ませてデュランに手短に近況を話した。
嘆きの言葉とは裏腹に、その声には歓喜の色も見え隠れしていた。
この青年は、シャルロットの成長を喜ばしく思う半面、彼女の成長するとともに彼の傍から離れてしまうことを少し寂しくも感じてもいた。
「これが親心というものなんでしょうね」
鈴を転がしたようにふふふ、と楽しそうに笑うヒース。
「もしお時間があるなら、場所を変えてお茶でもいかがですか?」
ヒースからの思いがけない提案にデュランはすぐさま首を縦にふりたかった。
ヒースの言葉に瞳を輝かせるものの、喉元まで出かかる言葉をぐっと飲み込んだ。
デュランもフォルセナ国王の側近となって外交業務を担うようになっていた。
そんなことはヒースのような高位の神官ではなくとも、一般のウェンデル市民であっても周知のことだった。
だからこれは社交辞令みたいなあいさつ、なのだろう。
たとえそれが本心ではない世辞だとしても、デュランは心から嬉しいと思う。
とはいえこの高位神官殿がそんな社交辞令をデュランに投げかけるとは思いたくはない。
だからデュランは心からの返事を言葉にのせた。
「はい、ぜひ!、、、っていいたいところですけれど、実は俺もあんまり時間に余裕ないんですよね、あはははは。」
申し訳なさそうにデュランは笑った。
「そっか、それは残念だね」
「ええ、、、ヒースさんには、聞いてほしい話がいっぱいありますから。」
「ふふふ、私の前だとデュラン君はまだまだ、小さな弟みたいですね」
「ヒースさんだけなんですよ、いろいろと、その、、、相談っていうか、まあ、あの、ええと」
目を逸らしてあらぬ方向に視線をやり口ごもるデュランの様子を、ヒースは目を細めて慈愛に満ちた眼差しで見つめた。
デュランのどこかバツの悪そうな、居心地の悪そうな素振りの理由を、この高位神官は知っていた。
「大丈夫ですよ、僕はこれからは、、、、多分、、、ずっとウェンデルにいます。だから君が悩んだときはいつでも話を伺いますよ。」
ヒースの言葉はこと翳ることをしらない穏やかな春の日差しのようだ。
デュランの心の中などお見通しであるかのように、やさしく照らして手を差し伸べてくれる。
彼の笑顔にはけっして敵うことがないな、とデュランは思った。
「、、、はい、ありがとうございます、ヒースさん」
「よしよし、いいこだね、デュラン君は」
デュランの返事に満足したようにほほ笑むと、ヒースは再びデュランの頭を撫でた。
幼子をあやすような仕草で、優しく、絆すように。
「そ、それはやめてほしい、、、ん、ですが、、、」
「ふふふ、反応がかわいいですねえ、誰かさんと違って」
ヒースのたおやかな指が、モールベアのようなデュランの髪を梳くように撫でる。
見た目よりも柔らかな質感の髪の毛が、するすると梳けてヒースの指の間を流れ落ちていく。
ひとしきりヒースに髪の毛を自由にさせると、彼も満足したのか、最後にぽんぽん、とデュランの頭を軽くたたいた。
それが合図であるかのように、デュランが口を開いた。
「じゃあ、俺、行きますね。」
「はい。またいつでも遊びに来てくださいね」
「別に今回は遊びに来たわけではなくて一応外交仕事の一環なんですけどね」
はははと、デュランから乾いた笑い声が漏れる。
「ふふふ、もちろん、わかっていますよ。んー、、、そうですね、そのくらい気軽に、ということです。あまり深く考えすぎないように、ね?」
ヒースの形のよい瞳がすうっと細くなる。
小首をかしげて、にっこりと悪戯っぽく笑う。
デュランは、参ったな、というように照れくさそうに頭をかいた。
「はい、今度はちゃんと、遊びにきますね」
「はい、約束ですよ」
そういって、ヒースが右手の小指をデュランに差し出した。
デュランも同じように小指を差し出して、二本の指を絡ませた。
※※※
ついでだからと、ヒースはデュランに付き添って一緒に聖堂から出ると、ウェンデルの入口までデュランを見送った。
ヒースはデュランの背中がみえなくなるのを確かめると、誰もいないはずの虚空に声をかけた。
「デュラン君、立派になりましたね。今やフォルセナの外交を担う、国王陛下の側近、片腕、二代目黄金の騎士さま、ですよ?」
「、、、、、、知っている」
みなまで言うな、と言わんばかりの苛立たし気な返事が、ヒースの傍らから返ってきた。
わざとらしく大仰な物言いのヒースに対して、いら立ちを隠そうともしない忌々しげな声音だった。
けれど、その声はヒースにしか聞こえなかった。
空気を通さずヒースの魂に、直接語りかけてくるような、声だった。
他の生きとし生けるものには受信することができない、マナの女神の奇跡を受けたものだけが聴くことを許された、声。
「聖剣の勇者さまに、黄金の騎士様さま、、、。さぞかしモテちゃうんでしょうね、デュランくん。」
うんうん、とあごに手を当てて含みのある言葉で、楽しそうに見えない誰かに語りかけるヒース。
はたからみれば独り言をぶつぶつとつぶやいているようにしか見えなかっただろう。
ヒースのとなりに存在する男は、ますます苛立たしそうに、つまらなさそうに、ぶすっと端正な顔を歪めた。
「ふん。そんな肩書だけにくいつく愚民どもにアイツの本質を完全に理解できるとは思えないがな。」
その言葉には、自分だけがデュランを理解できるのだ、という傲慢さがありありと現れていた。
当の本人は自覚しているのかいないのか、そのかくそうともしない男の惚気にヒースはひどく楽しそうに笑った。
「あの野生のイノシシみたいなお子様だった彼が、すっかり大人の男性に成長して、男前度が格段にあがっちゃいましたもんね。 フォルセナの女の子だけでなく、今ではウェンデルの女の子の間でも話題になってますよ、世界を救った聖剣の勇者さまの一人だって」
※注)
ヒースがいう『女の子』とはつまりデュランの妹と同じ年頃かそれよりも幼い子供のことを指す。つまりは、小さい子どもからの受けがよい面倒見の良いお兄ちゃん、としての株が格段に上がっている、ということ。
※注2)
ちなみにご年配型からの評判も上々である
ヒースは終始ニコニコと笑顔を絶やすことなく昨今の世情を楽しそうに男に伝えると、となりの男の影が一層濃くなるのを感じ取った。
同時に、彼の不満不平指数が格段に上昇していることも。
意識しようとしなかろうと、男の言葉にどんどんとトゲが増えていく。
「はッ、笑わせてくれることをいう、片腹痛いわ。アイツは初めて出逢ったときから何もまったくこれっぽっちも一ミリたりとも変わってなどいない粗暴で自分勝手で猪突猛進で周囲が見えていなくてすぐに全身ケガだらけになって剣の扱いには長けているくせに包丁もまともに握ることすらできない料理をさせればまな板の上が殺人事件でもあったかのような凄惨な惨劇と化すとても女子供に媚びを売るなどという頭を使った計略に脳細胞のメモリを割くことなど到底できやしない剣だけがすべての脳筋バカだ」
呼吸を挟むことなくひと息で言い切ると、男は自慢げに、ふん、と鼻で笑った。
その様子をみたヒースは、ふふっと心から楽しそうに笑った。
「大好きなんですね、デュラン君が」
「そんなことは一言も言ってない」
すかさず男が否定の言葉を返す。
「うーん、誰がどう考えても今のセリフは好きじゃなきゃ出てこないような、、、、ま、いいですけれどね。
貴方、あんまり素直じゃないこといっていると、デュラン君、『あの子』に盗られちゃいますよ?」
「それは断じてありえない」
どこから湧いてくるのかその確固たる自信は。とヒースは半ばあきれながら苦笑した。
男は自分の感情が高ぶっていたことにようやく気が付いたのか、わざとらしく「ゴホン」とひとつ咳ばらいをした。
「デュランはあんな不細工な『人形』なんぞにうつつをぬかさん」
「とはいえあのコのオリジナルは、アナタ、なんですよね?」
ヒースがにっこりと笑顔で尋ねる。男は形の良い眉を顰め、再び咳ばらいをした。
「ええい、うるさい」
どうやら、その事実はこの男も理解しているようだった。
「いつか愛想つかされちゃったりして」
「そんなことは、ない。ありえない、断じてありえない、ありえないありえ」
「さっきから湧てくるその自信はどこから出てくるのですかねえ」
男がふふん、と自慢げに胸をはる。
「アイツは、私にベタぼれだからな、くっくっく、、、」
「そうですか、すっごい根拠のない自信ですね」
ヒースとの言葉の応酬が続くにつれて、男の『デレ』がぼろぼろと溢れてくる。
それがおかしくて、楽しくて、ヒースはさらに意地悪をしかけたくなった。
ヒースは、にこりと形のよい唇を開いた。
「あのコ、えーっとたしか、『みにぐれちゃん』でしたよね?
デュラン君といっしょにご飯食べたりお風呂入ったり、夜はいっしょのベッドで眠ったりしているわけですよね? あ、フォルセナ外交業務のときには出先にも一緒についていっているらしいですね、デュラン君の首元にすっぽりと収まったりして。
ということは、もう何かの間違い?がおきちゃってるかもしれませんよね、十分あり得ますよ」
「、、、な、ん、だ、とっ!?」
ヒースの罠にあまりにも容易に引っかかって、すとんと落ちてくれるその男。
わなわなと全身を震わせて今にも掴みかからんばかりの勢いだ。
あ、呪文の詠唱始めちゃってる。
あまりにもちょろすぎてちょっとつまらないなあ、もっとイジメても良かったかなあなんて不穏なことを考えたことはヒースだけが知る事実。
ヒースが意地悪な微笑みを満面にたたえながら他方、頭の中では別のことに脳の作業領域のほとんどを当てていると、ついに男が爆発した。
「あの不細工な『人形』はなあ、私の一部なんだぞ!」
それをみて
『あ、ついにみとめた』
とヒースは思った。
怒りの感情に身を任せて怒涛の勢いでさらなるデュランの惚気をこれでもかというくらいに男から聞かされたあと、ようやく気分が落ち着いてきたのか、男は冷静さを欠いていたことをごまかすように、ぜいぜいと肩で荒く呼吸をしたのち、改めて咳ばらいをした。
そして憑き物が落ちたかのようにふっと寂しそうな顔をした。
「私自身が転生を願うことは叶わなかった。だがマナの女神はそれでも温情をかけてくれたのだ。竜帝さまの片腕として、この世界を破滅に誘おうとした私のような存在に対しても、だ。
それはアイツが、、、デュランが、それを願って望んでくれたから、私が蘇ることを。マナの女神に愛されたアイツの願いだからだ。今、私がこうして精神体だとしても意識を持つことができるのは、アイツのためだから、なんだ。」
振り絞る様に紡がれる紅蓮の魔導師の告解を、ヒースはただ静かに耳を傾けて聴いていた。
男の独白の真偽を、ヒースは知っている。
デュランが、どれくらいウェンデルの聖堂に足を運んでいたか。女神像の前で祈りを捧げ続けていたのか。それがどれだけ真摯な様であったのか。
それをずっと、ヒース自身がマナの女神の恩寵で蘇ったときから、見ていたから、知っていた。
デュランの、その様子を見る者の心臓が握りつぶされるように痛む気持ちも、この世界を滅びに誘った愚かな男に対する想いも、光の届かない深海の奥底より深い愛情も。
彼が祈りを捧げる姿を瞼の裏に思い出すと、心臓が鷲掴みにされたような気持ちになる。
「デュラン君は、ほんとうにいい子ですよ。」
ヒースは万感の思いを込めて、改めて声にした。
切ないくらいのため息とともに。
「アナタには、もったいないくらいです。」
その次の言葉は、自身の内にだけ秘めて声にはしなかった。
『ちょっと妬けちゃいますね』
※※※
「そうはいうがな、お前、、、」
男が呆れた顔でひょいとヒースの後方を示す。
ヒースがその先に視線をやると、そこにはきょろきょろと忙しそうに首をまわしながら何かを探しているシャルロットの姿があった。
男の視線が「お前を探しているんだろう」と黙して語っていた。
シャルロットは、裏庭でひとり佇むヒースの姿をみとめると、ぱっと顔を輝かせてうれしそうに駆け寄ってきた。
「ヒース!! こんなところにいたんでちか!!」
全身全霊でシャルロットがヒースに飛びついた。
突然のできごとにすっかりと油断していたヒースは慌ててシャルロットの体を受け止めるが、勢いあまって押し倒されるようにしりもちをついた。
けれどヒースは、あははは、と声を上げて笑った。
ひどく楽しそうに笑いながら、ヒースの指先がシャルロットの綿毛みたいな金糸を優しく撫でた。
「どうしたんですか?シャル?」
「んーん、なんでもないでち。」
シャルロットはヒースの胸に強く顔を押し付けて首を振った。
そしていくばくかの間を空けてから、
「ヒースがここにいることが、嬉しいんでち」
顔を上げて、照れたように破顔した。
大輪の花が咲き誇るようなシャルロットの笑顔。
「、、、大丈夫、ボクはもう、どこにもいきませんよ」
そういってヒースはシャルロットの目元を優しく拭った。
金糸の綿毛に指先を絡ませて優しくシャルロットを抱き寄せると、ヒースは彼女の額に唇を寄せた。
それはまるで、誓いを立てる儀式のようだった。
そんな二人を横目に、男は青年に別れの言葉をかけることはせず、ひっそりと意識を消した。
もとより、今の紅蓮の魔導師は魂だけの存在。
同じようにマナの女神の祝福を受けて蘇ったヒースにしか、男の姿を認めることはできない。
だから男の気配がシャルロットに気づかれる恐れはないのだが、彼女もまだ幼いとはいえエルフの血を引く娘であり、このウェンデルを統べる大司祭の孫。
マナの女神に近しい存在として、存在を感知される可能性がないとはいいきれない。
という建前を使って、男はいつも一人で勝手に一方的にひっそりと姿を消す。
この男の本心は、ヒースであっても気が付かないだろう。
男自身にしか知る術はない。
※※※
「あの人も、ずいぶんと変わりましたねえ。」
ヒースがシャルロットに聞こえないくらいの声でぽつりとつぶやく。
デュランという純真な太陽の光をいっぱいに浴びて、長い時間じっくりとゆっくりと温められ続けた古い種から、ようやく新しい命が芽吹いた。
不意にヒースの顔を不思議そうにのぞきこんでくる大きなふたつの瞳。
サファイアのような深い深い青がヒースの姿を鏡のように映し出す。
心の奥まで見透かされそうなその色に誘われるように、ヒースはにっこりと笑うと胸中を明け渡した。
「ボクは、もうどこにもいきませんよ、シャルがとっても大事だから。」
それから、慈しむようにやわらかくやさしく、もう一度シャルロットを抱きしめた。
ヒースもまた、彼女の太陽みたいな笑顔に照らされ続けていた。
いまだに心の奥底にうずいている澱、完全には払いきれなかった心の闇の残滓。
そういった燻りを、春の日差しのような夏のひまわりのような笑顔が、きらきらと照らして、ゆっくりとゆっくりと時間をかけて解かして浄化してくれる。
ヒースの心に呪いのように燻る闇の残滓も、紅蓮の魔導師の囚われたままの魂魄も、それぞれの太陽が今もゆっくりとゆっくりと溶かして解いていた。
その証拠に、いまこの瞬間も、なんの躊躇いもないまっすぐな視線が自分たちに向けられていた。
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