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ぬこ尻ryo
2024-12-27 00:36:57
5123文字
Public
ワンドロ企画など
聖剣ワンドロワンライお題13回
聖剣ワンドロワンライお題13回
『逃げる』
から妄想捏造したなにこれ紅蓮&デュの邂逅@竜穴小話
※紅デュエロに手直ししたかったくらいには紅デュ脳フル回転させていました。
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「逃げる」
あの日。
たった一人の紅い魔導師の魔法によって、フォルテナ城は崩壊した。
たった一人、生き残った少年兵を残して、城内の守りを担っていた衛兵も、駆け付けた鋭兵もみな、あの強力な魔術の前に、一矢報いることすらできず、蠟燭の灯を一瞬で吹き消すかのように命を奪われていった。
床に崩れ落ちて呻き声をあげる者も、喉をならす苦しそうな呼吸の音も、残らず奪われていた。
踏みつぶされた熟れたトマトのように、城内には赤黒い染みだけがそこかしこに残っていた。
わずかに残る呻き声すらも、ごうごうと燃え上がる赤黒い煉獄の炎の笑い声が飲み込んでいた。
デュランは、苦しそうに肩で息をしながらも、満身創痍の肉体に鞭打ち、完膚なきまでに壊された精神を奮い立たせた。
しかしどれだけ歯を食いしばっても、すでに地に付いてしまった片膝が再び立ち上がることはなく、自慢の大剣を杖のように床に突き立てて体を支えるのが精いっぱいだった。
そんなデュランに対して、紅蓮の魔導師は上空から憐れむような視線を送った。
その瞳は力なきものを見下す侮蔑の色でどす黒く濁り、口角はいやらしく歪んでいた。
『敵わない』
デュランは、生まれて初めての敗北を感じた。
今まで自分が信じてきた「剣」が、「魔法」に負ける。
信じられなかった。
剣士としての矜持を持って生きてきたデュランにとって、「剣」という「力」がすべてだったのだから。
信じていたものが、こうもあっけなく覆されてあとかたもなく壊されるなんて。
『くそ、、、。』
デュランは口惜しさと、次の一手が出せない不甲斐なさでぎりぎりと奥歯をかみしめる。
その間にも、紅蓮の魔導師の背後からは、彼を擁護するかのように昏いオレンジ色の炎の壁が立ちのぼる。
亜麻色の髪が炎に照らされて、プラチナブロンドに煌めいていた。
男の長い腕がデュランに差し向けられる。
彼は、ニヤリと笑いながらデュランの額を乱暴につかんだ。
伸びた爪がデュランの額に傷をつける。
鈍い痛みを感じると同時に、温かい体液がつつ、と流れてくるのをデュランは感じた。
一瞬のことだった。
デュランの額をつかんだ男の手のひらからビリビリと電流のようなどす黒いエネルギーの塊が発生すると、男の形の良い唇から、呪うような魔法の言葉が紡がれた。
詠唱が終わる瞬間、デュランの体はびくりと跳ね上がり、瞳孔は強制的に見開かれた。
その姿を眺める紅蓮の魔導師の唇の端からは、真赤な舌が覗き見えた。
「ゔあぁっ、はっ、あァ、、、、!!!」
自分自身の叫び声で飛び起きる。
激しく上下する両肩と荒い呼吸。
冷静さを取り戻すために何度か深呼吸を繰り返すと、デュランは全身びっしょりと汗をかいていることに気が付いた。
『きもちわりい。』
感情のままに、ぐっしょりと汗を吸ったインナーを脱ぎ捨てた。
鞄の奥からけっして清潔とはいえない布切れをひっぱりだすと、それで体を拭った。
寝汗が体温を奪って肌寒さを感じたのか、デュランはぶるるっ、と身震いした。
ようやく覚醒してきた意識で、現状を確認する。
まず、ぱちぱちと薪の燃える穏やかな音が聞こえてきた。
次に、ぐるりと周囲に目をやると、ごつごつとした岩石に囲まれた、薄暗い洞窟の壁や天井が視界に入った。
『ドラゴンズホールに来てたんだ。』
デュランは、ようやく現状を把握した。
くしゅんとくしゃみが出た。
いつのまにかぼうっとしていたのだろう、汗を拭きとる手が止まっていて、拭い取り損ねた汗がデュランの体温を容赦なく奪っていた。
ずるずると鼻をすすりながら、着替えがないかと探してみるが、丁度昨日替えたばかりだったことに気が付く。
まいったな、と頭をかきむしりながらも、デュランは脱いだインナーを焚火のそばに並べた。
何もしないよりは多少はマシだろう。
焚火の炎は穏やかで柔らかくて、あの夜のような激しさや厳しさは感じられなかった。
憎悪と侮蔑、悪意に満ちた、地獄の業火。
それは、あの紅蓮の魔導師自身から生じていた執念のようなものだったのではないか、今のデュランにはそんなふうに感じることができた。
あの敗北の日から、どれだけの時間が過ぎたのだろう。
今のデュランは、「剣」が奪うための「力」だけではないことが理解できていた。
力とは同時に「守る」ものでもあるのだ。
それでもいまだに、デュランはあの夜の夢を見て、うなされる。
初めての敗北と、逃走。
それは、しこりのようにデュランの中に残っていて、いまだに昇華できていない感情となって苛んでいた。
デュランは焚火の炎の奥を何かを探すように見つめながら、自分自身を鼓舞するかのように、自らの両肩をぐっと抱いた。
心の奥底で淀む滓のような感情に飲み込まれまいとするかのように。
※※※
静寂が支配するドラゴンズホールの一角で、パチパチという焚火の音が静かに反響していた。
「ついにここまできたのか」
豪奢な金髪を隠すように目深にローブのフードを被り、紅蓮の魔導師は岩場の影からデュラン一行の様子を伺っていた。
幸い向こうはまだこちらに気づいていないようだが、紅蓮の魔導師はさらに気配を押し殺した。
デュラン以外の仲間の姿は、一見したところ見当たらない。
だが、油断は禁物だ。
少し離れた場所で休んでいるのかもしれない。
一時的に別行動をとっているのかもしれない。
紅蓮の魔導師は、よりいっそう神経を研ぎ澄ませ、デュラン一行の居場所を探った。
しかし、どういうことなのか、焚火のそばにいるデュラン以外の気配は感じ取れなかった。
一体どういうことだ。
夜の見張り番をしているようでもなく、一見したところ深手を負っているわけでもないようである。
まだ、その時ではない、用心にこしたことはない。
それは重々承知していた。
けれど、ヤツと対峙する回数を重ねるたびに、あの小僧から感じられる力の波動に変化を感じずにはいられなかった。
最初は、同じだった。
むしろ格下ですらあった。
ただ「力」を欲していただけだった。
この自分をこえるためだけの「力」を。
それがどういうことなのか。
次第にその「力」に何か、別の要素が加わってきているのがわかった。
純粋に、それが何かを知りたかった。
知を追い求める魔術師としての本能のような性だとわかっていた。
その知の欲求の芽は、次第に大きく育っていって、今では紅蓮の魔導師の精神を蝕むほどに成長していた。
だから、というのは言い訳にしかすぎない。
ふん、と鼻先で自嘲するように笑う。
これはただの気まぐれだ。
自分自身に言い聞かせながら、紅蓮の魔導師はスゥっとその場から姿を消した。
※※※
いつの間にか転寝をしてしまったのだろう、背中に走った悪寒にびくりと体がはねて、デュランは目を覚ました。
目の前の焚火の炎は、ぱちぱちと心地よい音を立てながら、ゆらゆらとゆらめきつつデュランの冷えた体に熱を与えてくれた。
それなのに寒気を感じるなんて、やはりせめて上着だけでも着ておくべきだったかな。
デュランはぶるると身震いをして乾かしていたインナーに手を伸ばした。
そのさきに網膜に焼き付いた薄紫色の二つの瞳があった。
まったく気配に気が付かなかった自分にいら立つと同時に、至近距離に現れた宿敵に対する警戒心が一気に湧きあがる。
「テメエ、いつの間にッ。」
鋭くにらみつけるデュランの視線を、紅蓮の魔導師はふん、と鼻先を鳴らして一瞥で返しただけだった。
「なにしにきやがったッ」
デュランの疑問はもっともだ。
紅蓮の魔導師自身、宿敵の前に姿を現した理由に見当がつかなかった。
いや、それは、嘘だ。
実際には、理由など初めての邂逅の時からすでに抱えていた。
芽生えて成長しきった理由の種。
それに、取り付かれて飲み込まれてしまいそうにまではなっていた。
紅蓮の魔導師の体内で育った、デュランへの好奇心の種。
その種が、芽を出してツタを這わして、紅蓮の魔導師をがんじがらめにしている。
なんて、煩わしい。
今、この場でこの小僧の首を刎ねてしまうことなど、たやすいこと、
赤子の首をうちとるようなもの。
紅蓮の魔導師は、デュランの言葉に返事をすることなく、焚火越しにデュランへ向けて腕を伸ばすと、手のひらを彼の額に向けた。
その瞬間、デュランの脳裏に何千回何万回と繰り返されてきた悪夢がよみがえった。
紅蓮の魔導師の唇が、呪詛を紡ぎ始めるよりはやく、デュランは男の腕をつかむと、天に向けてねじりあげ、その体を地面にたたきつけた。
そして素早く男の背中に馬乗りになると、身動きを封じた。
しかしこれでは完全には詠呪を止めることはできない。
デュランは、ちィっ、と舌打ちをすると、後ろ手に回した男の腕に力をかけた。
「魔法など使わん」
嘲笑うように、紅蓮の魔導師がつぶやいた。
うつぶせの体勢のため声がくぐもって聞こえたが、はっきりとした意志のある声だった。
「本当かよ。」
信じられないな、という念を込めて、デュランはとらえた男の腕にいっそうの力を込めた。
「こんなところで腕一本失うなんて、愚か者のすることだ」
デュランは黙っていたが、それをやりそうになってきたのはテメエの方だろうが、という喉元までこみあげてきた反論をぐっと飲み込んだ。
「で、なんなんだよテメエ、急襲か?」
デュランは警戒を解くことなく、男を押さえつける力をさらに強くした。
紅蓮の魔導師は、苦し気に、ぐっ、と小さく呻いたが、デュランの力が緩められることはなかった。
もちろん、そんなことは想定内だった。
渾身の力を振り絞って、デュランの方へ顔を向けると、その薄紫色の宝石のような双眸で太々しく睨み上げてきた。
「ただの、気まぐれだ」
その言葉に不意を突かれてデュランの力が一瞬弱くなる。
その隙を、男は見逃さなかった。
素早く短い呪文の詠唱を終わらせると、手のひらに黒い電流を纏った小さなエネルギーの塊を発生させて、それをデュランに向けて放った。
男の背にまたがっていたデュランは、小さな魔力のエネルギー弾とはいえ至近距離でそれをくらい、爆発音とともに弾き飛ばされた。
不意を突かれた男の魔法に対してデュランはとっさの受け身が取れず、背中から思い切り岩壁に打ち付けられた。
脊髄に重い一撃が入る。
かはッ、と開いたのどから体液が飛び出した。
ぐいと口元を拭いながら、岩壁に背中を預けつつ立ち上がろうとするが、今更ながら手元に得物が無いことに気が付いた。
もちろん、ないならないで、かわりに体術を駆使すればいいのだが、相手は敵との距離をものともしない魔法を繰り出してくる魔術師だ。
一方のデュランは愛剣がその手にあればなんということもなく応戦できるのだが、体術だけでは相手の懐にまで潜り込むしか方法がない。
『ここは一旦退くしかないか、、、』
脳裏をよぎる唯一の選択肢に対して、悔し気に歯を食いしばる。
せめて一瞥だけでもくれてやる、とデュランが鋭くにらみつけると、紅蓮の魔導師は、ククッと笑いながら口角を上げた。
そして、冷めた目線をデュランに寄越した。
「撤退、を覚えたか」
英断だな。
紅蓮の魔導師は再び、くくく、と笑うと顎に手をやった。
「変わったな」
ぼそり、とつぶやいた自分の言葉に一抹の寂寞を感じて、紅蓮の魔導師は頭をふった。
そして生じてしまった感情を焼き殺すように、呪文の詠唱を始めた。
自分自身を蝕むデュランの存在を焼き尽くすように、憎悪を込めて。
もはやそれが手遅れであると理解しつつも、自身の矜持が最後まで抵抗をあきらめることは許さなかった。
詠唱の言葉を紡ぎながら、紅蓮の魔導師は自分の存在意義を根底から狂わす、目の前の忌々しい小僧を眼光で射抜くことをやめなかった。
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